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レゾンデートル  作者: 星街海音
第一章 紺碧と炎の剣
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041 最終ラウンド


 意識が戻る。


 僕は薙ぎ倒された大木に背を預けた状態で目覚めた。意識を失っていたのは数秒だったようだ。

胸が抉られ血塗れだ。治療を意識しながら顔を上げる。


 「おい。」


 僕の声にグレンとアクアタイガーが顔を向ける。


 傷が深すぎて治療がすぐに終わらない。それでも血を流しながら立ち上がる。


 「どこ見てんだ?」


 僕は歩き出す。一歩、また一歩と進むたび、まだ治っていない傷から血が吹き出した。

そして数歩進むと足を止め。


 「僕はまだ生きているぞ。」


 アクアタイガーを見据え、血塗れの顔に笑顔を作るとそう言いきった。












 言う事を終えた僕はマジックバッグに手を入れ、予備の長剣を取り出す。最初に使っていた欠けがある拾ったやつだ。


 剣を抜いて鞘をその場に放ると走り出す。

まずはアクアタイガーをグレンから引き離す。


 「はああぁぁ!!」


 グレンは左、アクアタイガーは右にいるのでスラッシュで左からの横薙ぎを放つ。


 「グルアッ!?」


 アクアタイガーは飛び退ったが驚きで回避が遅れたのか左前脚に斬撃を受け、血を流した。


 (さっきまで通らなかったんだけどな。なんでだ?)


 離れたアクアタイガーに剣を向けながらメイに聞いてみる。


 『無茶するね・・・。たぶんだけど今のナイン、ちょっと肉体のリミッターが外れてるんじゃないかな?』


 なんだよそれ。


 (なんでだ?)


 『火事場の馬鹿力みたいなものだよ。』


 馬鹿って・・・。でもまぁ。


 (なるほどね。納得した。)


 助けると決めたからな。


 「グレンさん。大丈夫ですか?」


 彼の方を向かずに声をかける。

今の彼には僕がおかしく見えているだろう。

どう見ても即死しただろう状況で立ち上がった事。

そして重傷過ぎて未だ治療の途中の体で動いている事。


 「お前、何で・・・。いや、後でいい。大丈夫だ。」


 そう言ってグレンは聞きたい事を飲み込み、HPポーションと治癒魔法で治療を始めた。


 「勝つ気か?」


 粗方治療を終えたグレンが僕に聞いてきた。


 「それしかないでしょうね。どうせ逃げれませんし、逃がしてはくれないですよ。あれ。」


 僕たち2人のステータスじゃAGIが足りな過ぎて逃げきれない。戦うしかない。

時間稼ぎも厳しいだろう。

ならば余力など残さぬ全力で挑み、短時間で勝つしかない。


 「だな。はっ!まぁどうせ死ぬ気で戦うつもりだったんだ。構わねぇんだけどよ。」


 やっぱりそうだったか。


 目覚めた時、グレンはアクアタイガーに剣を向けていた。

その時の雰囲気はとても逃げようとしているものには見えなかった。


 「じゃあ2対1でやりましょうか。僕は死なないので前で攻撃を受けながら注意を引きます。」


 気づかれているだろうがあっさりと事実を伝え、役割を決める。


 「やっぱりそうなのか。じゃあ俺は隙を見て攻撃だな。それと、秘密にするから後でちゃんと話せよ。」


 グレンはそう言って大剣を構える。


 (秘密にするから後で、ね。)


 『ふふ。良かったね。』


 メイに笑われてしまった。

だがグレンはちゃんと生き残るつもりのようだ。もう死ぬつもりではない。


 それに秘密にすると言ってくれた。


 それが素直に嬉しかった。


 「それからグレンでいい。あと言葉は崩せ。戦闘中は言葉が長いと伝わりにくくなる。だから冒険者は基本、丁寧に喋らねぇ。」


 なるほど。そうなのか。

メイは特に教えてくれなかったので昔とは違うのだろうか?と思ったが、僕は1人で時間活動していないので教えるタイミングがなかったのかもしれない。


 まぁそれはいいや。


 「わかった。それじゃあグレン。」


 「ああ。始めるか。」


 僕たち2人は紺碧の大虎を見据え、しっかりと武器を構える。


 「いくぞナイン。最終ラウンドだ。」


 そして最後の戦いが始まった。

また明日。

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