033 僕の命、僕と君の人生
「なぁメイ。聞きたい事があるんだ。」
僕は立ち止まると一呼吸置いてメイに話しかける。
目覚めてから半月以上経ったのだ。
覚悟は出来てるさ。
『ん?何?どうしたの?』
僕の雰囲気が変わった事にメイは少し困惑している。
「何となく、たぶんそうなんだろうって思ってるんだけどさ。」
スパッと聞こうと思ったが前置きが長くなりそうになる。
緊張で出た手汗が不快だ。
「僕って・・・、死なないんじゃないか?」
一度深呼吸をし、ゆっくりと言葉にする。
死なないんじゃないか。
最初にそう思ったのは、魔力で肉体を作っていると説明された時だ。
魔力で出来ているなら老化することは無いんじゃないか?
ということは寿命も無いんじゃないか?
何となくそうなんじゃないかと思った。
次にそう思ったのは、オオカミと闘って負った怪我を治した後だった。
魔力を使ってすぐに怪我を治す。
あの時もこれはおかしいと思ったが、すぐ治るのは便利だとも思った。
だが私とナインしか出来ないと言われ、寿命が無いんじゃないかと考えた時のことを思い出した。
寿命が無く、負傷しても魔力があれば幾らでも修復される。
それは死ぬのか?
最後は魔石のランクを聞いた少し後だった。
あの時は最初、魔石がXランクと聞いて困惑し、メイは何者なのか。という思いに気が持っていかれた。
それでもいずれ知る事になるとわかり、それで話は終わっていた。
でも話の後、湖の側を歩きながらふと思った。
最上級であるXランクの魔石。
それは破壊可能なのか?
10段階ある内の一番上。
そんな物が破壊される事などあるのだろうか?
もし無いのであれば、僕は・・・。
『そっか、気付いてたんだね。』
やっぱりそうか。
「ああ。肉体が魔力で出来ていて、負傷しても魔力で治せる。果てはXランクの魔石だからな。」
僕がそう考えたきっかけを挙げていく。
「僕の予想では、ほぼ不死身。かな。どう?」
間違ってないだろう。
『合ってるよ。』
その言葉を聞いて、僕はどこかすっきりしていた。
「そっか。やっぱり寿命も無くて老化しない感じか?」
気持ちが落ち着いたからか、普通に質問をする。
『寿命も無いし老化もしないよ。髪は伸びたりするけど。』
そう言えば湖でそう言ってたな、目覚める数年の間に髪が伸びたって。
「なるほど。僕たちの魔石が壊れる事ってあるのか?」
ほぼ不死身で合ってるということは、たぶんここがその"ほぼ"の部分なのだろう。
『一応あるよ。ただ最低でもSSランクの英雄級かSSSランクの魔王級じゃないと無理だと思うけど。』
「ぶっ!?」
SSの英雄級とSSSの魔王級!?
「そんなのいるのか!?っていうかそのレベルの話なのか!?」
そんなの基本的に壊せるやついないってことじゃん!
『いるよ。だからほぼ不死身で合ってるんだよ。・・・嫌になった?』
ん?嫌になる?
「何で?」
『その、ずっと、生き続ける事になってしまったから・・・。それに黙ってたし。』
あー、なるほど。
「別に嫌になってないよ。黙ってたのも、まだ話すのは早いとか考えたからだろうし。ただ、大事な事だから話してほしかった。とも思ったかな。』
だが正直、自分で気付く前に話されてたらかなり混乱して不安になっていただろう。
どっちがいいかは、今となってはわからない。
結局たらればだな。
『うん。ごめんね・・・。』
「気にするな。嫌になってないって言ったろ。」
これはどうしようもない事だからな。
「それに、1人で生き続けるなら辛いと思っただろうけど、1人じゃないからな。」
君がいるだろ。
自分で言ってたじゃないか。
ずっと一緒だからって。
『うん。自分で言ってたね・・・。』
声が震えていた。
メイに聞こえてしまってたいたようだ。
まぁいいだろう。
「だから一緒にだ。一緒に生きるんだ。」
この先を、どこまでも。
『うん・・・、うん・・・。』
なんか、僕が泣かせた感じだな。
メイが泣き止むまで、今しばらくこの場で黙って待つとしよう。
お休みはしたくないぞぉ・・・。
また明日。