249 少しの休息2
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エレオノーラについての話をしたナイン達は、引き続き休息をしつつ城壁の上から戦場を眺めていた。参戦要請がかかるまでは、ゆっくりさせてもらうつもりだ。
「うーん、戦ってるのはわかるけど、はっきり見えないなぁ」
目を細めて見ていたが、流石に遠過ぎるため最前線で戦う者達の動きがわからない。
色々な戦い方を見て参考にしたかったナインは、顔を顰めて「うむむ・・・」と唸り声のようなものを出す。
「あ、ちょっと待ってて下さいね。えーと・・・」
そんなナインの様子に気付いたルチルは、マジックバッグであるリュックを下ろすと、中に手を入れて何かを探し始めた。
「あ!ありました。はい、どうぞ。皆さんも使って下さい」
人の頭くらいのサイズの箱を取り出すと蓋を開ける。中には、筒が二つくっついた物が4つ入っていた。ルチルはそれを手に取ると、僕達に配りだす。
おや?これって。
「双眼鏡?」
受け取ったナインが物体の名を口にする。
用意がいいな。ていうかいつ買ったんだ?
疑問に思い、聞いてみる。
「今後必要になるかと思って、クリアマリンで買っておいたんです」
どうやらノースト大陸に来た時点で買っていたようだ。
あの自由時間の時かな?それとも護衛依頼を探してた時かな?まぁどっちにしても。
「ありがとうルチル」
「ありがとう!」
「悪いな。高くなかったか?」
礼を言う僕とメイに続き、グレンが少しだけ申し訳なさそうにしながら聞く。そうだ、お金。
全員分のお金をルチルが払ったのだ。仲間だからこそ、しっかりと払わねばならない。
「魔道具ではないですから、そこまでしませんでしたよ」
魔道具を引き合いに出し、値段は高くなかったと口にするルチル。どうやら払わせたくないらしい。
「ダメだよ。こういうのはちゃんとしないと」
キリッとした表情に変わったメイが、ルチルへ注意する。その横で、僕もそう思うとばかりにうんうんと頷く。チラリとグレンの方を見ると、彼も同じように頷いていた。
仲間達からかの注意に、困ったような顔を浮かべるルチルは、渋々頷く。
「・・・わかりました。今は非常時なので、後で受け取りますね」
お金は、スタンピード収束後に返す事に決まった。
・・・ふむ。
「終わった後なら忘れてるだろ?とか思ってる?」
「えっ!?」
図星だったのだろう。ルチルの体がビクッ!と跳ねた。やっぱりか。
「メモしとこっか」
「そうだな」
「俺がしとく。付箋も付けとくか」
「んにゃ」
絶対にお金を返すため、メイの提案通りにメモを残す事にする。
バッグから手帳を取り出し、早速メモをとるグレン。その姿に、ルチルは溜息を吐く。
「・・・普通、返してもらう側がメモをとりません?」
僕もそう思う。
ボソリと溢すルチルに、ナインは心の中で同意した。
お金に関しての話が終わったナイン達は、早速双眼鏡を使っての観戦に移った。
街道、そして周囲の森から絶えず魔物が現れている。現状、王都までやってきている魔物はほぼCランクだ。逃げ遅れたのか、たまにD、Eランクの魔物も混じっている。
迎え討つのは、主にCランクの冒険者達だ。かなりの数がいる。一応BランクとAランクの冒険者もいるが、積極的に参戦してはいない。彼らが参戦するのは、苦戦しているところのフォローに入る時か、Cランク以上の魔物が現れた時だ。
この先、まず間違いなくB、Aランクの魔物が現れる。その時のためにも、余計な疲弊をさせるわけにはいかない。戦力分配は重要なのだ。
そうして双眼鏡で戦場を見続けていると、Cランク魔物の集団に囲まれている冒険者達を見つけた。
「あれ大丈夫かな?20体くらいいるけど」
普通に死にかねないぞと思い、声に出す。だが別の場所を見ていたメイがとある存在に気付いた。
「大丈夫だと思うよ。ほら」
「あ、本当だ」
心配するナインの視界に、長剣を2本持った男性が入る。
緑色の鍔をした長剣を両手に持った男。獣人の特徴でもある耳と尻尾が見える。
「嵐刃のサンズ・ラーバさんだっけ」
男の名を記憶から掘り返し、二つ名とともに口にする。確か、旋風魔法と2本の剣を合わせた、高速戦闘が得意なAランク冒険者だ。
「あ、今からフォローに入るみたいですね。実際にサンズさんの戦闘を見た事はないので楽しみです!」
珍しくルチルのテンション高くなる。とはいえ、かくいう僕も楽しみだ。参考に出来るところはしたいからな。
「私も楽しみだなぁ。戦い方って話だけじゃわかんないし」
「俺もだな。あとは、魔剣の性能も気になるぜ」
メイとグレンも気になるらしく、ワクワクした雰囲気が伝わってくる。
今現在もしっかりと緊急事態ではあるのだが、ナイン達のパーティーには、ゆるい空気が流れていた。
とはいえ油断しているわけでも、気を抜いてるわけでもない。単に、カルヴァースでの事件に関わった影響で肝が太くなっただけだ。よってこうして観戦しながらも、絶賛警戒中である。
サンズの戦闘を見るため、合計8つのレンズが彼の姿を映す。
レンズの向こう側である最前線では、剣を構えたサンズが魔物の集団に突っ込んでいくところだった。
彼の持つ長剣の刀身に、緑色の光が宿る。それを見たメイとルチルが、楽しそうに話し出す。
「おぉー!そういう戦い方なんだ!面白いね!」
「普通より効果が高そうですね!魔剣のアビリティでしょうか!?」
反応からして彼女達は、見ただけでサンズが何をしたかわかったらしい。
色からして旋風魔法、かな?何の魔法かはわかんないけど。
「あれはね、旋風魔法のヴェントゥスソードとヴェントゥスエッジだよ。それを剣に纏わせてる状態だね」
「ほー、なるほど」
わからないだろうなと思ったメイが、何の魔法か説明してくれた。
魔法のソード系は、マジックソードと同じような感じで魔力で剣を作る魔法だ。もう一つのエッジ系は、魔力で刃を作り、武器に纏わせたり飛ばしたりする魔法である。サンズの場合は、どちらの魔法も剣に纏わせている状態だ。
ちなみにヴェントゥスは、風属性系統の上位魔法である。下位がエアー、中位がウインドとなる。上位のヴェントゥスは、旋風魔法スキルをⅡまで進化させ、スキルレベルを30まで上げると使えるようになる。
近接職なのに魔法スキルをそこまで上げてるのは、普通に凄いなぁ。
「あとは、魔力制御力も中々に高いですね。発動した魔法に全然ぶれがありません」
「すげぇな。羨ましいぜ」
続くルチルの言葉に、グレンが羨望の声をあげる。
武器は違えどグレンの戦闘スタイルは、サンズと似ている。魔力制御力の高さは、素直に羨ましいのだろう。
双眼鏡越しの視界の中、魔物の集団の中でサンズが縦横無尽に剣を振るう。とにかく剣速が凄い。剣を振るう度に幾本もの緑色の光が魔物を両断していく。
そういえば、魔剣のアビリティなのか魔法の効果が高いって言ってたな。
「魔剣のアビリティは、どんな感じかわかった?」
その辺の知識が豊富なメイに聞いてみる。
彼女は双眼鏡から目を離さず「たぶんだけど」と言ってから予想を口にした。
モンハンのOBTが終わってしまいましたね。
発売まで楽しみにしておきます。
次回更新ですが、所用のためお休みします。
よろしくおねがいします。