表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
249/251

248 少しの休息1

宜しければ、評価、ブックマークをして頂けると嬉しいです。


 本部テントでの報告を終えたナイン達は、防衛線の三層目にある城壁の上に来ていた。


 一応救護所には行ったのだが、メイ達に怪我は無く、ナインも再生によって無傷だったためいる理由はなかった。全員走って疲れてるくらいだ。


 唯一救護所でした事といえば、ボロボロになったナインの服を着替えたことくらいだ。また着替えが減ってしまった・・・


 「おー。よく見えるな」


 「防衛のためってのもあるけど、弓とかの遠距離職や魔法使いのための場所でもあるからね」


 「なるほどー」


 その場に座って休息しながら、ナイン達は上からの景色を眺める。かなり距離はあるが、しっかりと前線が見えた。


 「・・・でも、この距離で届くのか?」


 最前線まで200メートルくらいあるけど。


 三層目から見えるとはいえ、人は石ころ程のサイズにしか見えない。


 門から三層目の城壁までは、100メートルほど。そこから100メートル毎に二層目、一層目といった感じで防衛線が作られている。


 「最低でもCランク中位以上の強さは必要ですが、届きますよ。もちろん簡単にはいきませんが」


 「弓士ならそんくれぇ届くな。魔法使いは・・・、Bランクくれぇは必要か?」


 「うーん、Cランク上位くらいでしょうか?中位くらいの私だと、ギリギリ届くか届かないかといった感じですね」


 「そんなもんなのか」


 ルチルが僕のだけでなく、グレンの疑問にも答えてくれた。


 そうか、魔法特化のルチルでも届かないのか。


 「そんなに必要なの?上に登る人少なくならない?」


 強さの必要最低値が高過ぎる。王都なうえにダンジョンが近くにあるから、普通よりはいないこともないだろう。だが、それでもかなりの数の冒険者は、上に登っても届かないという事態になるのではないだろうか。


 そう思って口にしたが、僕が阿呆だった。


 「そりゃ一層目の一番前の話だろ?本格的に戦闘が始まったら戦場は、一層目と二層目辺りになる。そうなりゃDやEでも届くさ」


 「・・・そうですね」


 よく考えれば。いや、よく考えなくてもわかる話だ。スタンピードという大量の魔物が襲ってくる事態なのだから、本格的に戦闘が始まれば最前線は後退する。そうなれば、城壁から魔物までの距離は短くなる。低いランクの者でも、問題無く攻撃が届くだろう。


 あ、そうだ。


 「そういえば気になったんだけどさ、王族の人がギルマスやることって結構あるの?」


 馬鹿を晒した恥ずかしさを隠すついでに、気になっていた事を聞いてみる。


 これには、この国出身であるためエレオノーラについてもそれなりに知っているルチルと、ついでにグレンが答えてくれた。


 「貴族の方がなるのはたまに聞きますが、王族はほとんど聞かないですね」


 「俺もだな。冒険者ギルドは実力主義だからな。権力で役職を取るっつうのは無理だ」


 やはりそうある事では無いらしい。


 「そうなんだ」


 「もし権力でギルマスなんかになったら、その支部の評判はガタ落ちだからな。何年か前にどっかの国であったよな?」


 「緑風皇国ですね。たしか、四年前でしたか」


 「ああそれだ」


 どうやら実際にあったらしい。


 話を聞くに、何でも緑風皇国のとある街で、ある貴族が権力を用いてギルドマスターの地位に納まった。冒険者としての実力も無く知識も無く、そのうえナチュラルに冒険者を見下す。結果、そんな貴族に冒険者は猛反発した。そして波が引くように冒険者は街から離れ、その街から冒険者の姿が消えた。


 その後は、冒険者ギルドの本部から調査が入り、その貴族と周囲の者は解任。この件に関わった全ての者達が罪に問われた。


 ちなみに今は、その街の冒険者ギルドも信用を取り戻してる。後任でやってきた者達がかなり優秀な人達だったのだとか。


 「なるほどねぇ。って事は、エレオノーラ様は、実力でギルマスになったって事か?」


 権力ではなれないなら、実力しかない。まぁ、見てすぐ「あ、すっごい強い」って思ったから、納得するけど。


 「そうです。今はギルマスの地位に就いてますが、エレオノーラ様は、現役の冒険者でもありますよ」


 「マジ?引退してる訳じゃないんだ」


 てっきり引退してギルマスになったんだと思ってた。


 「引退してなる方もいますが、7割くらいの方は、現役らしいですよ」


 世界中で見ると、このくらい。とルチルが捕捉してくれた。結構多いな。


 エレオノーラについての話が続く。


 「エレオノーラ様の冒険者ランクはSです。そういえば、数ヶ月前にレベル100になったらしいです」


 「100!?マジか」


 流石ギルマス、レベル三桁か。


 予想を超えた強さに、ナインの空いた口が塞がらない。


 以前不幸な出会い方をしたギルフォードもそうだが、自身の3倍ほどのレベルである。強すぎるぞ。


 あれ?でも100って事は


 「聖人化してるのか?」


 「していないそうです。エレオノーラ様は、すぐにでも試練を受けに行きたかったそうなのですが、忙しすぎてまだ行けそうにないんだそうです」


 「あー、ギルマスだもんね」


 ルチルの言葉にメイが納得した。隣の僕は、こくこくと頷くのみだ。


 精霊王の試練を受けるには、その名の通り精霊王に会いに行かなければならない。ではその精霊王がどこにいるかと言うと、普通に精霊の棲家である。


 精霊の棲家の場所は、基本的に公開されていない。理由は二つあり、一つは、精霊を守るためだ。彼らは魔物では無いからな。そしてもう一つは、怒りを買わないためだ。


 精霊を傷つけるような行為をした場合、彼らは人と同じように怒る。だがその怒り方が凄まじいのだ。まさに烈火の如く怒る。しかもその棲家の者達全員がだ。


 そうして精霊の怒りに触れた結果何が起こるかと言うと、単純に破滅が待っている。


 街や村が滅ぶならいい方で、最悪国が滅ぶレベルだ。過去に滅んだ国がいくつかあるらしい。


 そういった理由のため、精霊の棲家は秘匿されている。


 じゃあ自力で棲家を見つけなきゃ精霊王に会えないじゃん。そう思うかもしれないが、一つだけ公開されている棲家がある。それが、中央大陸にある世界樹の根本だ。


 ここには世界最大の精霊の棲家があり、たくさんの精霊が住んでいる。


 人との交流も盛んで、ある種の国のような形をしているらしい。そして、もちろん精霊王もいる。


 このように場所も存在もわかっているからか、精霊王の試練を受ける者は、皆ここへ向かう。探す手間がかからないからな。


 ただし、中央大陸のさらに中心なため、かなり遠い。結構な移動時間がかかるため、エレオノーラが中々行けずにいるのも仕方ないのだろう。


 「Sランク冒険者ですから二つ名もありますよ。不退転(ふたいてん)のエレオノーラと呼ばれてますね」


 中々にかっこいい二つ名だ。羨ましい。メイもそう思ったらしい。


 「おー、かっこいいね。絶対に退かぬ者、って感じだね。やっぱり王族だから?」


 「それもありますが王族としての誇りより、『私は、進む者』という、座右の銘の方が強いですね」


 あとは、性格もでしょうか。と小声で続けた。


 なるほど。大変お転婆だったのだろう。失礼だがそんな感じがする。


 うんうん。と、僕とメイとグレン、ルーチェまでが納得したように頷いた。皆同じように感じたのだろう。


 「年明けにお会いした時、『早く20代の姿に戻りたい!』って愚痴ってましたよ」


 そう言ってルチルは、ふふっと笑みを浮かべた。

次回は、明後日の16時です。


それでは~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ