246 エレオノーラ・カエルラ・アクエリアス
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手を引かれて立ち上がったナインは、落としきれなかった土をほろうと周囲を見回した。
「・・・」
ちょっと言葉が出てこない。
戦場に小さめなクレーターが出来ていた。自分がいるのはその中心だ。完全に僕のせいである。そういえば、たしか岩壁にもぶつかっていたはずだ。どこいった?・・・砕けた?
背中に少しだけ変な汗が流れる。
何かこの場を切り抜ける方法はないかと頭を悩ませていると、遠くから声がかかった。
「おーいッ!ナイン!大丈夫か!?」
聞こえてきた声の方を見ると、先に撤退させていたはずの水竜騎士団がいた。リーダーのカルテインが心配して声をかけてきたようだ。
あれ?何で後から?あ、飛び越したのか。
心配させてしまったと思い、大丈夫だ!と返そうとする。だが別の方向から、これまた聞き覚えのある声が上がった。
「ナイン少年っ!!大丈夫かっ!?」
声のする方を見る。
筋肉が爆走していた。
防護否定のガンドットだ。悪い人ではないのだが、・・・うーん、暑苦しい。
声をかけてきたカルテインと水竜騎士団、それからガンドットがクレーター内に降りてきた。
「大丈夫大丈夫。ちょっと着地に失敗しただけだから」
心配無いよと伝えるため、軽い感じで答えた。
「・・・ちょっと?」
カルテインが片眉を上げる。それから周囲を見回し始めた。
うん、わかるよ。ちょっとじゃないよね。
戦場に穴を作るのは、ちょっとではない。だがちょっとだ。何を言われてもちょっとだ。
「わははははっ!!!そうかそうか失敗か!某は、新しい筋トレかと思ったぞ!」
僕の言い訳に豪快な笑い声を上げるガンドット。
そんな訳ないじゃん。何だよ、飛んできて壁と地面に激突する筋トレって。何が鍛えられるんだよ。根性か?
あまりの脳筋具合に、その場にいた全員が呆れた表情を浮かべた。
とりあえず後方へと行こうとメイに提案され、僕達はクレーターの外へと出る。何でも、後方の救護所まで向かっている途中で僕が戻ってきたのを知り、踵を返して急いで迎えに来たのだとか。ありがたい。1人だったらどこ行けばわかんなかったよ。
ますば、水竜騎士団と一緒に作戦本部へ報告しに行く事になった。水竜騎士団は、ダンジョンの中にいたし、僕は残って足止めしてたからな。色々話すこともある。魔物の種類とか数とか。
ガンドットとはここでお別れだ。彼は、前線に強い魔物が出た時用の戦力らしいからな。離れるわけにはいかない。
「これは、某が直しておこう」
そのガンドットが、クレーターを見てそう言った。
「直せるの?ていうか、大地魔法持ってるの?」
まさかの発言にナインの言葉が崩れる。とはいえ、敬語はいらんぞと言われてるので問題無い。
この人って、物理攻撃メイン。と言うより物理攻撃オンリーの人じゃなかったか?
「何言っとる?持っとるに決まってるだろう」
された質問の意味がわからず、ガンドットが首を傾げる。全身ムキムキの半裸にされても可愛くないぞ。
「戦闘に使うの?」
「使わんぞ」
やっぱり使わないらしい。
「じゃあ何に使ってるの?」
「某が殴る用だ」
「あぁ・・・」
なるほど。サンドバッグ用か。
大地魔法で生み出した岩壁とか石柱なんかを、サンドバッグにしてる。という事だろう。まぁ、魔力があればいくらでも作れるし直せるから合理的・・・かな?戦闘に使われないのはかわいそうだけど。
「わかった。ならお願いするよ。それじゃあ僕達は、本部に行くね」
使い方はどうあれ、直してくれるならお願いしよう。
「おう!またあとでな!」
そう言ってガンドットは、早速クレーターと岩壁の修復を始めた。
ナイン達と水竜騎士団は、東門前にある本部へ向けて移動を始める。
チラリと後ろを振り返ると、意外にも繊細な魔力操作で大地魔法を操る、ガンドットの姿が見えた。たぶん、僕より魔力操作が上手い。
The・筋肉に負けた事に、内心でちょっとガックリときたナインは、もっと頑張らなきゃと決意を新たにする。
修練用にしか魔法を使わない。そんなガンドットに負けるわけにいかないのだ。
作戦司令部である本部のテントに到着したナイン達は、すぐに中へと通された。入り口を警備する冒険者に話が伝わっていたおかげだろう。
中に入ると、3人のお偉いさんらしき人がテーブルを囲んでいた。全員がナイン達の入室に顔を上げると、その内の1人である40代くらいの女性が声をかけてきた。
「報告は聞いていたが、無事でなによりだ」
「ご心配をおかけしてすいません、ギルマス」
ホッとした表情を浮かべる女性に、カルテインが答える。
どうやらこの女性は、冒険者ギルドのギルドマスターのようだ。
「心配するのは当たり前さ」
ギルマスはそう言うとナイン達へ視線を移す。
「君達とは初めて顔を合わせるな。私は、この王都アズールのギルドマスターを勤める、エレオノーラ・カエルラ・アクエリアスだ。よろしく頼む」
「・・・え?」
家名に、アクエリアス・・・?
エレオノーラと名乗った女性の言葉に、ナイン達は驚きで耳を疑った。いや、ルチルは知っていたのだろう。彼女だけはいつも通りの様子だ。もしかしたら会った事があるのかもしれない。
アクエリアスはこの国の名前だ。そして、国の名を家名に持つのは、王族の、しかも直系の王位継承権持ちのみである。降嫁したり別の家を立てたりすれば家名は変わり、継承権も無くなったりするが、そうでない限り変わる事はほぼ無い。つまり、国の名を家名に持つエレオノーラは、完全な王族の一員という事だ。
「ん?どうした?」
僕達の様子に不思議そうな表情をするエレオノーラ。その様子に、彼女と共にテント内にいた男性2人が溜息を吐く。
「はぁ・・・、エレオノーラ殿。家名にアクエリアスが付いていたら誰だって驚きますよ」
「王族だってことをもう少し自覚してください」
呆れた表情を浮かべ、彼女へと小言を口にする。
「むぅ・・・。では家名を名乗らなければいいのか?」
「いや、ダメでしょう。ちゃんと名乗らないと」
「ではどうする事も出来んではないか」
口を尖らせ、エレオノーラは文句を言う。
その様子を、ナイン達は唖然とした表情で見ていた。
気安い。王族相手とは思えないほどだ。大丈夫なのか?と思ってしまう。だが、エレオノーラの様子に、これが普通なのだというのがわかる。だからと言って、自分達も同じように接して良いのかと言われるとわからない。変な対応の仕方をして不敬罪になったらヤバい。
「ああ、失礼。私達の自己紹介がまだでしたね。私は、ライオネル・クルーズ。王都東門の警備隊隊長を務めてます」
「私は、商業ギルドのギルドマスターで、ガトリン・フォン・ラグーンです。よろしくお願いします」
紺色の短髪に、金属製の部分鎧を着けた男性がライオネルと名乗り、長い金髪を後ろで一纏めにし、質の良いローブを着た男性がガトリンと名乗った。どちらもエレオノーラと同じくらいの年代に見える。あの気安さは、昔からの馴染みだからというのもあるかもしれない。
「よ、よろしくお願いします」
ナイン達は、それぞれに頭を下げ、緊張した様子で挨拶を返した。
仕方ないだろう。なにせ、王族のエレオノーラだけだと思ったら、貴族であるガトリンまでいるのだから。いや、王族の時点でおかしいんだけどね。
「うむ。よろしくな。それでは、早速だが報告を聞いてもいいかな?」
挨拶が済んだとわかったエレオノーラが、話を変える。
そうだった。報告で来たんだった。
気持ちを切り替え、ナインとカルテインが代表して報告を始める。
まずは、スタンピード発生時にダンジョンにいたカルテインからだ。
「私達水竜騎士団は、早朝からダンジョンに入り、スタンピード発生時には6階を探索していました」
前話の時は、用事で投稿が遅れて16時にしたのですが
なんかすっごい増えました。
やはり夕方投稿の方が増えるのでしょうか。
そう思ったので今日は、試しに17時投稿をしてみました。
さて・・・、どうなる!?
また次回。