245 帰還
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用事で出かけてました。
「それ!水竜騎士団と私達の仲間だよ!!」
監視員に向けて、誰がやってきたのかを大声で伝えた。
「何っ!?前線組!街道上の魔物を減らせ!!生存者の保護を優先しろ!!」
メイの言葉を聞き、監視員はすぐに櫓の上から指示を出す。魔物の数が少ないとはいえ、安全ではない。撤退行動によって体力の減った冒険者の場合、万が一も有り得る。それ故の優先だった。
ナインを迎えに行こうと、メイは来た道を振り返り走り出そうとした。だがグッと足を止めた。仲間達をそのままにする訳にはいかない。
「私も行く!ルチル達は」
「行きます!」
「俺もだ」
「にゃん!!」
ここで待ってて。そう言おうとしたが、ルチルに止められた。グレンとルーチェも続く。
わかった。と仲間達に答え、前線へと向き直る。そして同時に、一緒に撤退してきた者達の事を思い出す。
「あ、皆さんは救護所で休んでて下さい!それではー!!」
あとはゆっくりしてて。といった感じの言葉を残したメイは、縮地スキルにブーストまで使用した全力で走り始めた。
土煙が巻き起こる中、追って走り出したグレン達の声も続く。
「悪いな」
「すいません」
「んにゃん」
メイ達のいきなりの行動に、一緒に撤退した者達は驚きを隠せずにいたが、仲間が心配な気持ちは理解出来た。
彼らは「あ、ああ」とだけ何とか答えると、走り去る3人と1頭の背を見送り、救護所へと向かっていった。
最前線手前付近まで走ってきたメイは、足を止めるとダンジョンまで続く街道の奥を見る。
「・・・いない。どこ?」
心細そうな声を漏らし、どこだどこだ?とキョロキョロする。
最前線は、今も絶賛戦闘中なためこれ以上前には行くことは出来ない。魔物に襲われる危険があるからではなく、邪魔になるからだ。
それ故、いくら心配であろうと手前までしか行く事は出来なかった。
「おい、速えよ。俺らを置いてくな」
「んにゃっ!」
「あ、ごめん」
追いついてきた仲間の内、グレンとルーチェに文句を言われた。
謝罪の言葉を口にしたが、視線は街道奥に向いたままな上に生返事だった。
メイのそんな態度にグレンは、はぁー、と溜息を吐く。仕方ねぇなとでも思ったのだろう。
「んで、来てるか?」
「まだ。気配感知にも反応無い」
監視員は上から見ていたため視認出来たが、地上からは全く見えない。そして距離もあるのか気配感知にも反応は無い。
まだなの?とヤキモキしていると、横までやってきたルチルが声をかける。
「思念会話で聞いてみたらいいんじゃないですか?」
「あ・・・」
すっかり忘れてた。そうだそれがあった。
「聞いてみる!」
ルチルへと振り返り、元気よく答える。そしてすぐにナインへと思念を飛ばし始めた。
(ナイン?今どこ?大丈夫?)
焦りから強めの思念になってしまった。たぶんだが、ナインにはかなり大きな音量で聞こえている事だろう。戦闘中であれば、確実に集中を見出すような行いだ。
しまった・・・。
やってしまった。そう思ったメイが、迷惑をかけた事に反省していると、ナインから返事が来た。
『あー、今ね、たぶんだけど、東門まで1キロ切ったくらいのとこかな。それと僕は大丈夫だよ』
若干疲れたように感じるが、いつも通りの口調で話すナイン。その様子に、メイはホッと胸を撫で下ろす。
「ならよかった。みんなで前線まで迎えに来たよ」
返事があった事を仲間達に教えるため、声に出して思念会話を続ける。なんだかんだ心配だったのだろう、皆一様にホッとした後、嬉しそうな表情を浮かべていた。
『お、本当?じゃあすぐ行くよー。ちょっと待ってて』
「え?」
戦闘しながら撤退しているはずのナインから軽い様子で言われ、思わず聞き返してしまう。そんな簡単な感じでは無いと思うんだけど・・・。
「何だ?どうした?」
「えっと、すぐ行くからちょっと待っててって」
「ん?」
軽い感じの言葉に、グレンも首を傾げる。
どうやって?と皆で首を傾げていると、最前線で、わぁー!という声が上がった。
ナインか!?と思わず振り返ると、続く言葉で違うとわかった。何故なら「水竜騎士団だ!無事だったぞ!!」と聞こえたからだ。
彼らには悪いが、ガックリと肩を落とす。
だがすぐに落とした肩は上がることになった。
ズドバァッーーーーーーー!!!!!!!ドガガガガガガッ!!!!!
最前線よりもさらに奥。魔物がやってきていた街道側から、とんでもない爆音が響いてきた。
生存者で喜んでいた最前線組が、その音に驚愕していた。だがメイ達は驚いてはいなかった。何せ理由がすぐにわかったからだ。
「あー、ナインだね」
「だな」
「あの自爆技使ったんですね」
「にゃー」
街道奥で物凄い量の土煙が上がったのが見える。まず間違いなく、ルチルからは自爆技としか呼ばれないメガブラスターだ。
おそらくだが技の反動を利用しての強制移動だろう。その証拠に、土煙の中から何かが飛び上がるのが見えた。
「・・・ぁぁぁああああー!」
声まで聞こえてきた。
ナインの声で間違いない。
「アホな声上げてんなぁ」
グレンがボソリと呟くのが聞こえた。まぁ、そう聞こえても仕方ない。
吹っ飛ぶ様子を見る限り、高速で回転しているようだった。たぶん、目が回っているのだろう。
というか・・・、あれ?
放物線を描くナインを眺めていたメイは、ある事に気付いた。
「あの・・・、ナインさんの落ちる場所って・・・」
「あそこだな」
ルチルとグレンも気付いた。目線が斜め後ろへと向く。
斜め後ろにあったのは、前線組が使用する退避用の岩壁だった。
「・・・当たるね。グレン受け止めて」
「無茶言うな」
無理かぁ。
グレンに頼んでみたがダメだった。となれば仕方ない。ナインに注意するしかないだろう。受け身・・・、取れるかなぁ。
「ナイーン。このままだと岩壁にぶつかるよー。防御してー」
『はぁ!?む、無理だってぇー!』
無理かぁ。
悲痛な声が返ってきた。ごめんよぉ・・・。
頂点を過ぎたナインが下降を始めた。改めて見ても落下地点は岩壁だ。
重力に引かれて落下速度が上がる。
「あああぁぁぁーーーッ!!!」
ドゴガァッーーン!!!
砲弾のように飛んできたナインが岩壁に激突した。猛烈な土煙が上がる。
十数秒ほどで土煙がおさまり、目の前の惨状を確認する。
勢いが凄かったからか、壁は無くなっていた。木っ端微塵に砕け散ったようだ。そして地面には小さなクレーターが出来上がり、その中心に人の下半身が見える。
見覚えのあるズボンと靴だ。というかナインのだ。
メイ達は走り寄り、クレーター内に降りるとジタバタともがく足を引っ張る。
「うへぇ、土食った・・・」
ズボッと上半身が抜け、ボロボロになったナインが、ぺっ!ぺっ!としながら悲しそうに呟いた。
服は土と血で汚れ、ところどころ破れている。切り裂かれたような跡があるため、着弾の衝撃だけでは無いだろう。
「大丈夫?」
座り込みながら土をほろうナインに、メイが声をかける。怪我は再生で治っているとはいえ、岩壁と地面に激突までしたのだ。痛いなんてものじゃないだろう。
メイの心配そうな声に気付いたナインが、土埃が付いた顔を上げて小さく微笑む。
「ちょっと痛かったけど大丈夫。ただいま」
絶対にちょっとではないだろうが、心配させまいとそう答えたのがわかった。
「もう・・・。おかえり」
メイは呆れたように呟くと手を伸ばし、帰ってきたナインに答えた。
モンハンを予約しました。
楽しみです。
また次回。