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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
246/251

245 帰還

宜しければ、評価、ブックマークをして頂けると嬉しいです。


用事で出かけてました。


 「それ!水竜騎士団と私達の仲間だよ!!」


 監視員に向けて、誰がやってきたのかを大声で伝えた。


 「何っ!?前線組!街道上の魔物を減らせ!!生存者の保護を優先しろ!!」


 メイの言葉を聞き、監視員はすぐに櫓の上から指示を出す。魔物の数が少ないとはいえ、安全ではない。撤退行動によって体力の減った冒険者の場合、万が一も有り得る。それ故の優先だった。


 ナインを迎えに行こうと、メイは来た道を振り返り走り出そうとした。だがグッと足を止めた。仲間達をそのままにする訳にはいかない。


 「私も行く!ルチル達は」


 「行きます!」


 「俺もだ」


 「にゃん!!」


 ここで待ってて。そう言おうとしたが、ルチルに止められた。グレンとルーチェも続く。


 わかった。と仲間達に答え、前線へと向き直る。そして同時に、一緒に撤退してきた者達の事を思い出す。


 「あ、皆さんは救護所で休んでて下さい!それではー!!」


 あとはゆっくりしてて。といった感じの言葉を残したメイは、縮地スキルにブーストまで使用した全力で走り始めた。


 土煙が巻き起こる中、追って走り出したグレン達の声も続く。


 「悪いな」


 「すいません」


 「んにゃん」


 メイ達のいきなりの行動に、一緒に撤退した者達は驚きを隠せずにいたが、仲間が心配な気持ちは理解出来た。


 彼らは「あ、ああ」とだけ何とか答えると、走り去る3人と1頭の背を見送り、救護所へと向かっていった。







 最前線手前付近まで走ってきたメイは、足を止めるとダンジョンまで続く街道の奥を見る。


 「・・・いない。どこ?」


 心細そうな声を漏らし、どこだどこだ?とキョロキョロする。


 最前線は、今も絶賛戦闘中なためこれ以上前には行くことは出来ない。魔物に襲われる危険があるからではなく、邪魔になるからだ。


 それ故、いくら心配であろうと手前までしか行く事は出来なかった。


 「おい、速えよ。俺らを置いてくな」


 「んにゃっ!」


 「あ、ごめん」


 追いついてきた仲間の内、グレンとルーチェに文句を言われた。


 謝罪の言葉を口にしたが、視線は街道奥に向いたままな上に生返事だった。


 メイのそんな態度にグレンは、はぁー、と溜息を吐く。仕方ねぇなとでも思ったのだろう。


 「んで、来てるか?」


 「まだ。気配感知にも反応無い」


 監視員は上から見ていたため視認出来たが、地上からは全く見えない。そして距離もあるのか気配感知にも反応は無い。


 まだなの?とヤキモキしていると、横までやってきたルチルが声をかける。


 「思念会話で聞いてみたらいいんじゃないですか?」


 「あ・・・」


 すっかり忘れてた。そうだそれがあった。


 「聞いてみる!」


 ルチルへと振り返り、元気よく答える。そしてすぐにナインへと思念を飛ばし始めた。


 (ナイン?今どこ?大丈夫?)


 焦りから強めの思念になってしまった。たぶんだが、ナインにはかなり大きな音量で聞こえている事だろう。戦闘中であれば、確実に集中を見出すような行いだ。


 しまった・・・。


 やってしまった。そう思ったメイが、迷惑をかけた事に反省していると、ナインから返事が来た。


 『あー、今ね、たぶんだけど、東門まで1キロ切ったくらいのとこかな。それと僕は大丈夫だよ』


 若干疲れたように感じるが、いつも通りの口調で話すナイン。その様子に、メイはホッと胸を撫で下ろす。


 「ならよかった。みんなで前線まで迎えに来たよ」


 返事があった事を仲間達に教えるため、声に出して思念会話を続ける。なんだかんだ心配だったのだろう、皆一様にホッとした後、嬉しそうな表情を浮かべていた。


 『お、本当?じゃあすぐ行くよー。ちょっと待ってて』


 「え?」


 戦闘しながら撤退しているはずのナインから軽い様子で言われ、思わず聞き返してしまう。そんな簡単な感じでは無いと思うんだけど・・・。


 「何だ?どうした?」


 「えっと、すぐ行くからちょっと待っててって」


 「ん?」


 軽い感じの言葉に、グレンも首を傾げる。


 どうやって?と皆で首を傾げていると、最前線で、わぁー!という声が上がった。


 ナインか!?と思わず振り返ると、続く言葉で違うとわかった。何故なら「水竜騎士団だ!無事だったぞ!!」と聞こえたからだ。


 彼らには悪いが、ガックリと肩を落とす。


 だがすぐに落とした肩は上がることになった。


 ズドバァッーーーーーーー!!!!!!!ドガガガガガガッ!!!!!


 最前線よりもさらに奥。魔物がやってきていた街道側から、とんでもない爆音が響いてきた。


 生存者で喜んでいた最前線組が、その音に驚愕していた。だがメイ達は驚いてはいなかった。何せ理由がすぐにわかったからだ。


 「あー、ナインだね」


 「だな」


 「あの自爆技使ったんですね」


 「にゃー」


 街道奥で物凄い量の土煙が上がったのが見える。まず間違いなく、ルチルからは自爆技としか呼ばれないメガブラスターだ。


 おそらくだが技の反動を利用しての強制移動だろう。その証拠に、土煙の中から何かが飛び上がるのが見えた。


 「・・・ぁぁぁああああー!」


 声まで聞こえてきた。


 ナインの声で間違いない。


 「アホな声上げてんなぁ」


 グレンがボソリと呟くのが聞こえた。まぁ、そう聞こえても仕方ない。


 吹っ飛ぶ様子を見る限り、高速で回転しているようだった。たぶん、目が回っているのだろう。


 というか・・・、あれ?


 放物線を描くナインを眺めていたメイは、ある事に気付いた。


 「あの・・・、ナインさんの落ちる場所って・・・」


 「あそこだな」


 ルチルとグレンも気付いた。目線が斜め後ろへと向く。


 斜め後ろにあったのは、前線組が使用する退避用の岩壁だった。


 「・・・当たるね。グレン受け止めて」


 「無茶言うな」


 無理かぁ。


 グレンに頼んでみたがダメだった。となれば仕方ない。ナインに注意するしかないだろう。受け身・・・、取れるかなぁ。


 「ナイーン。このままだと岩壁にぶつかるよー。防御してー」


 『はぁ!?む、無理だってぇー!』


 無理かぁ。


 悲痛な声が返ってきた。ごめんよぉ・・・。


 頂点を過ぎたナインが下降を始めた。改めて見ても落下地点は岩壁だ。


 重力に引かれて落下速度が上がる。


 「あああぁぁぁーーーッ!!!」


 ドゴガァッーーン!!!


 砲弾のように飛んできたナインが岩壁に激突した。猛烈な土煙が上がる。


 十数秒ほどで土煙がおさまり、目の前の惨状を確認する。


 勢いが凄かったからか、壁は無くなっていた。木っ端微塵に砕け散ったようだ。そして地面には小さなクレーターが出来上がり、その中心に人の下半身が見える。


 見覚えのあるズボンと靴だ。というかナインのだ。


 メイ達は走り寄り、クレーター内に降りるとジタバタともがく足を引っ張る。


 「うへぇ、土食った・・・」


 ズボッと上半身が抜け、ボロボロになったナインが、ぺっ!ぺっ!としながら悲しそうに呟いた。


 服は土と血で汚れ、ところどころ破れている。切り裂かれたような跡があるため、着弾の衝撃だけでは無いだろう。


 「大丈夫?」


 座り込みながら土をほろうナインに、メイが声をかける。怪我は再生で治っているとはいえ、岩壁と地面に激突までしたのだ。痛いなんてものじゃないだろう。


 メイの心配そうな声に気付いたナインが、土埃が付いた顔を上げて小さく微笑む。


 「ちょっと痛かったけど大丈夫。ただいま」


 絶対にちょっとではないだろうが、心配させまいとそう答えたのがわかった。


 「もう・・・。おかえり」


 メイは呆れたように呟くと手を伸ばし、帰ってきたナインに答えた。

モンハンを予約しました。

楽しみです。


また次回。

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