244 王都東門前
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Side メイ
王都東門の防衛線まで撤退してきたメイ達は、疲れた雰囲気の中、皆一様にホッとした表情を浮かべた。
撤退が完了した事は、ナインへと伝えた。代わりに彼からは、生存者がいた事、自身も1分後に撤退を開始すると返ってきた。
「ナインからの報告で、生存者がいたってさ。水竜騎士団の6人だって」
一緒に撤退した冒険者やギルドスタッフ達と共に、防衛線内の後方へと移動しながら、ナインからの報告を口にする。
後方の門付近は、負傷者の救護所や後方支援による物資の保管所、そして作戦司令部になっている。防衛線まで戻ってきた私たちは、前線で戦っていた冒険者に促され、そちらまで移動しているところだ。
「おお!水竜騎士団全員生きてるのか!良かった!」
ナインからの報告に、冒険者達が喜びをあらわにする。
それもそうだろう。気づいた時にはもうダンジョンから大量の魔物が溢れていたのだ。普通に考えても、中にいた冒険者達の生存は絶望的だったと言える。
「ナインは1分後に撤退するって。たぶん今撤退し始めたんじゃないかな」
心配を出来るだけ隠しながら、グレンとルチルに伝える。
隠す理由は、ここが防衛線内だからだ。なぜならこれから戦いが大きく、激しくなるというのに、現場から撤退してきた者が暗い顔をしているのは、周りの者の士気を下げかねないからだ。シンプルに言えば、不安にさせないためである。やる気は重要なのだ。
「大丈夫そうでしたか?」
「疲れてはいるっぽいけど大丈夫みたい」
心配そうに聞いてきたルチルにそう返す。
何か大変なことが起きた。といった事は言ってなかったので大丈夫なはずだ。ただ思念で届いた声が、少しだけ疲れているように感じたので、戻ってきたらまず休ませなければいけないだろう。
「なら、戻ってきたら休ませようぜ。つか俺らも休もう。流石に走りっぱなしは疲れた」
グレンも同じ考えらしく、防衛線の後方を見ながら疲れた声で提案した。
彼が見ていた防衛線後方をメイも見る。
先ほども言ったように、向かっている最後方の東門前には、救護所がある。とりあえずは、そこで休ませてもらう予定だ。王都まで魔物がやってきてはいるが、到達しているのは森の魔物ばかりであり、数も多くない。よって私達が休んでいても、最前線で戦う冒険者達だけで大丈夫なのだ。
門前まで歩くメイは、首を回し防衛線内を眺める。
うん。大丈夫そうだね。
着々と作られていく防衛線に、今のところ問題無さそうだ。と心の中で呟く。
防衛線は、大まかに言って三層の扇状に作られている。
最前線である一層目。ここは、王都から一番離れた場所だ。大体、門から300メートルほど離れた場所にある。
主に近接職の者達が戦う場所のための場所であり、一番範囲が広い。
そして特徴的なのは、所々に地魔法で作られた壁があることだ。
この壁の用途は、遮蔽物としてだ。魔法使いや遠距離攻撃職の者達の場所であり、魔物からの遠距離攻撃や魔法を防ぐために使用する。あとは、回復なんかの時にも使用したりする。咄嗟に退避できる壁があれば、比較的安全に攻撃や回復が出来るという事だ。
これが第一層。
次に二層目。この層は、防衛線の中で一番狭い層だ。大体、一層目の三分の一くらいかな。
この層にも、先ほどの一層目と同じように壁がある。ただし、数は全く違う。パッと見ただけでも、3倍くらいあるだろうか。
二層目は、敵の足止めと遊撃を目的とした層だ。
一層目を抜けてきた魔物を大量の壁で足止めし、遊撃担当の冒険者か、三層目の者達が倒す。といった具合だ。
これが第二層。
では、今言った三層目の者達がいる場所はどんなところなのか。
ちょうど三層目までやってきたメイは、高く聳える創造物を眺める。
「ふむふむ。ちゃんと作ってあるね。強度もバッチリだ」
通り過ぎるタイミングでコンコンと叩き、三層目の完成度に満足そうに頷く。
メイが叩いた創造物とは、城か砦の外壁のように見えるものの事だ。これが王都の街壁に沿うようにズラッと作られている。強度と大きさから見て上級の大地魔法、テラフォートレスで生み出されたものだろう。
高さは大体5メートル。幅は3メートルといった具合だ。王都の街壁が10メートル以上あるので、大きさ的には半分以下であるが、用途としては問題無い。
この城壁の用途は二つ。まずは、見てわかる通り魔物の侵入を防ぐためである。そして二つ目は、遠距離職の攻撃場所としてだ。
最前線である一層目でも遠距離職は戦うがそちらは、魔物の数が少ない時かパーティー単位で戦ったりする時くらいだ。魔物が多くなれば、遠距離職は下がることになる。その下がる場所が、この城壁の上だ。
ここならば、強度も高さもあるため安全性も高く、視野の確保もしやすい。流石に距離があるため最前線までは攻撃が届かないが、一層目の後方くらいまでならなんとか届くだろう。
ちなみにこの城壁には、所々に監視用の櫓が設置されている。王都の街壁よりも高く、20メートル近い高さのものだ。ここには、視覚系や聴覚系、気配察知系のスキルレベルが高い者が配置されている。森や街道を常に監視し、状況の報告をする役目だ。
これらが三層目である。
メイ達は、その三層目の城壁を通り過ぎ、最後方へと足を踏み入れる。
だが、その足はすぐに止まることとなった。
「街道から人の気配と姿を確認!!」
櫓の上から、監視員の鋭い声が降ってきたからだ。
「何人!?」
監視員の言葉に我慢出来ず、メイが確認する。これには監視員も流石に驚いた表情を浮かべた。だがすぐに職務を思い出し、街道奥へと視線を向ける。
「え?あ、数は・・・6!いや、後方にさらに1人!計7人です!!」
「っ!!!」
全力でスキルを使用した監視員が、近づいてくる者達の人数を口にする。
7人。その人数に、メイは喜色を浮かべた。
「それ!水竜騎士団と私達の仲間だよ!!」
また次回。