表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
244/251

243 撤退開始

宜しければ、評価、ブックマークをして頂けると嬉しいです。


※2025.02.08 メガブラスターに使用した魔力量を修正 10万→30万


 「という訳で、水竜騎士団は先に撤退してくれ。王都方面にも魔物はいるけど倒してるからそこまで多くないはずだ。僕はあなた達が撤退した1分後に撤退を始める」


 ナインの言葉にリーダーは、再度困惑の表情を浮かべる。何を言ってるんだ?とでも言いたげだ。まあ、気持ちはわかる。普通なら一緒に撤退したほうがいいからな。


 「どうして君だけ1分後なんだ?」


 ひっきりなしにやってくる魔物を倒しながら、リーダーが聞いてきた。


 「ここに1人でいる事からわかると思うけど、僕は足止めだ。理由は、先に撤退した仲間達と生存者を出来る限り安全に逃すためだ。あ、あと王都での防衛準備の時間を作るためってのもあるね。おっと」


 話の途中で突っ込んできたアクアウルフを斬り倒し、再開する。


 「で、今言ったけど、僕は生存者の安全と撤退時間を作るために残ってるんだよ。だからあなた達には、先に全力で撤退してもらって、その後に僕が撤退。って方法にした。生存者はもういないみたいだからね」


 上手く説明出来ただろうか?戦いながらだから中々難しい。正直、いいから早く逃げてくれと言いたい。


 僕の説明を受けたリーダーは、難しい顔をしながら槍を突き出し、触手をウネウネと動かすグリーンローパーを倒す。なんだあれ、気持ち悪いな。植物系なのか?それとも魔法生物系か?


 べチャリと地面に崩れ落ちたグリーンローパーからナインへと視線を戻すと、リーダーが口を開いた。


 「・・・納得出来ないところはあるが、わかった。言い合いしている時間もないからな」


 渋々といった感じで、リーダーが了承した。


 「無理矢理でごめんね。後で沢山怒っていいから。あ、酒も奢るよ」


 「助けてもらったんだ。私達が奢る側だろう?説教も付けてあげよう」


 「あはは!わかったよ」


 説教付きの奢りか。うん、約束だ。


 乱戦状態には似つかわしくない笑い声を上げ、リーダーとナインは約束を交わす。


 「カルテイン・フォーブス。私の名前だ」


 唐突にリーダー、カルテインが自身の名前のみを口にした。ああ、自己紹介とか省いたからな。僕も名乗ってなかった。時間が勿体無いから名前だけにしたのだろう。


 「ナイン・ウォーカーだよ」


 同じように名前だけをカルテインに告げる。


 「それでは私達は、先に撤退する。ナイン、また後で」


 「ああ、また後で。カルテイン」


 互いに名を呼び合い、王都での再会を約束する。


 「聞いていたな!全員!王都に向けて全力で撤退だ!行くぞ!!」


 「「「「「はいっ!!」」」」」


 カルテインの呼びかけに、水竜騎士団の面々が即座に答える。そしてすぐに動き出し、王都方面へ向けて撤退を開始した。


 離れていく水竜騎士団の姿をチラリとだけ眺めたナインは、視線を魔物達へと戻す。


 「さて、最後の足止めだ」


 そう呟くと、魔物の群れに向かってマジックソードを撃つ。


 今回の戦闘でマジックソードばかり使っているのには、ちゃんと理由がある。


 マジックソードは、一番慣れているが故に精度が高く、数が出せ、殺傷能力が高いからだ。


 マジックソード以外にも、魔力で作った斬撃を飛ばすマジックエッジや、魔力の弾丸を飛ばすマジックショットがあるが、今回には向かない。


 例えばマジックエッジの場合、威力は高いのだがまだ同時に複数出す事が出来ない。そのため、今回のような集団戦には向かないのだ。


 逆にマジックショットは、同時に複数出す事は出来るが威力が低い。集団戦向きではあるが、倒すのに時間がかかってしまう。それ故に今回は使わなかった。


 この辺の問題を全て解決してくれるのがマジックソードだ。威力も有り、数も出せる。完璧と言えるだろう。


 「ま、使える攻撃は、これだけじゃないんだけどな」


 ボソリと呟きながらナインは、マジックソードと魔導銃を撃ち、迫る魔物を剣で斬る。


 今の攻撃方法は、マジックソード、魔導銃、剣だ。だが言葉にしたように、これだけではない。切り札がある。まぁ、この技が生まれた経緯がちょっとアレだけど・・・。


 「・・・よし。そろそろ1分だな」


 正確に計っているわけではないので若干のズレはあるだろうが、自身の撤退時間が来た。


 タタタッと後方へ下がり、魔物と距離を空けると、ナインは両手を前へと突き出した。


 「必殺技を見せてやろう」







ーー王都までの道中ーー


 必殺技は、王都に向かっている途中で出来た技だ。


 思いついた経緯、というかやってみた経緯は、属性変換が全然上手くいかなくて気分転換に試したのが切っ掛けだった。それに、元々イケるのでは?と思っていたのでちょうどよかった。


 まぁ被害は結構出たけど・・・。


 「・・・むむむ、全く変化が無い」


 歩きなながら練習していたナインは、右手に集めた魔力を睨みつける。


 道中ずっと試していたが、全くと言っていいほど変化がなかった。難しいとかいうレベルを超えてないか?


 「普通は、スキルとか魔石を利用して変化させてるんだもん。仕方ないよ」


 横を歩くメイが慰めにもならない言葉をかける。


 はぁー、と溜息を吐き、右手に集めた魔力を散らせる。


 「ダメだ。気分転換する」


 「気分転換?何するの?」


 「思いついてた、技?魔法?を試す」


 唐突に別の事をやろうとし始めたナインに、グレンとルチル、ルーチェも興味津々になる。


 ならちょうどいいから休憩にしよう。とグレンが決め、足を止めると、街道脇でみんなは休憩兼ナインの新技見学に移った。


 「このくらい離れれば大丈夫かな?よーし、いくよー!」


 「いいよー!」


 15メートルほど離れた位置に1人立ち、見学組に声をかける。


 メイからの返事を聞いたナインは、両手を前に突き出す。そして突き出した両手のさらにその前に、自身の魔力を集めた。


 グググッ!と集めていくと、両手の平の前に魔力の塊が生まれる。塊が出来た段階で、魔力は100ほど使用している。大体マジックショット1発分だ。だが今回は、更に込める。


 「ふんッ!!うぐぐぐ」


 腰を落とし、歯を食いしばりながら魔力を制御する。


 無属性魔法なため、イメージと魔力制御が重要になるが、今回のコレはかなりシンプルだ。


 まず、込められるだけ魔力を込める。制御がかなりキツイが、ソードやシールド、アームのような複雑なイメージは必要無いため、それらよりは楽だ。


 「ここが限界だな・・・、よし!」


 イケるとこまで!と魔力を込めていくと、自身の制御力の限界だろうと思われるとこまできた。


 あとはこれを・・・。







ーー王都東の街道ーー


 試した時と同じように、突き出した両手の平の先に魔力を込めていく。


 「よし!準備完了!」


 制御出来る限界値まで込めたのを感覚で把握する。


 大量に魔力を込めた結果、両手の先には、人の胴体くらいのサイズの光り輝く魔力の玉が出来上がっていた。


 込めた魔力は・・・、30万。


 あとはこれを


 「さぁ、存分に食らってくれ。僕からの置き土産だ」


 前へと解放するだけ。


 「メガブラスター!!!」


 ズドバァッーーーーーーー!!!!!!!


 イメージと魔力解放により、込めた魔力が前方へと照射される。


 ズガガガガガガッ!!!!!


 地を削り、空気を押し、射線状の魔物達を弾き飛ばしていく。


 これが思いついた必殺技のメガブラスターだ。


 消費魔力は多く、準備に多少時間が必要となるが、威力は絶大。


 ただし、この技には、致命的な欠陥がある。


 「うおあぁーーーー!!!」


 情けない声を出しながら空中を飛んでいくナイン。


 見ての通り、威力が高過ぎる結果、反動で使用者が吹っ飛ぶのだ。


 だが、大技の使用と同時に、戦線の離脱が出来るので、今回については、これが最善だろう。


 こうしてナインは、スタンピードの足止めを終え、王都までの撤退を開始した。







 実は、王都までの道中でメガブラスターを試した際、この反動をどうにかしようとした。


 やった事は単純だ。背中にシールドを4枚張った。


 まぁ、結果はわかるだろ?


 シールドのおかげで吹っ飛ぶことはなかった。が、技の反動とシールドに挟まれた結果、僕の体中の骨が砕けた。


 正直、過去一の痛みだった。


 ちなみに、このナインの自爆に、メイは半泣きで心配し、グレンは呆れた表情を浮かべ、ルチルはガチめに引いていた。


 ん?ルーチェ?あの子なら飽きたのかずっと寝てたよ。


 うん。大物になるな。

また次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ