242 合流と報告
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※2025.02.07 ミス修正 西門→東門
「どぉおおけぇえええええ!!!」
気合いを声に出し、ほとんど狙いもつけずに前方へと連射する。正確に狙っていないため外れるものがチラホラ出るが、物量で押し切る。
当たらなかった魔物、当たっても軽傷に終わった魔物が横をすり抜け、王都方面へと走っていったが、無視した。今は生存者の方が優先だ。
前方の魔物がある程度減ったタイミングで、狙いをしっかりとつけるように変える。僕の魔力制御はお粗末だからな。このまま物量メインでやると、生存者に当たりかねない。助けるつもりで殺してしまう。
そうして一体ずつ確実に倒していると、魔物とは違うシルエットが6つ見えた。
「見えた。おい!こっちだ!!」
大きな声を出し、生存者と思しき6人に声をかける。
向こうもナインの姿を視認したのだろう、走る速度を上げると周りの敵を蹴散らしながら真っ直ぐに向かってきた。
「・・・ん?あれ?青いな」
こちらへと向かってくる6人の姿に、ナインは思わず呟いた。
青い人型のシルエットが6つ。気配感知では人の気配なので、人型の魔物ではないし人に擬態した魔物でもない。全身を青い装いで包んだ6人組、という事なのだろう。
あれ?なんか、記憶に引っかかるな。なんだっけ?
近づいてくる6人を援護しつつ、ナインは記憶を探る。戦いながらも思い出そうと頑張っている間に、段々と6人が近づいてくる。
そうして10メートルほどの距離までやってきた、6人の生存者達の姿を見てナインは、その正体をやっと思い出した。
「あ!水竜騎士団か!!」
思い出せたことが嬉しく、声が大きくなる。必死にこちらまでやってきた水竜騎士団の面々も、いきなりの大声に驚いていた。
水竜騎士団。青の戦線という二つ名をパーティーで持つ、Bランクパーティーだ。特徴はとにかく青い。
「ど、どうした?私達のことを知っているのか?」
集団の先頭にいた男が、疲れた雰囲気をしながら困惑した表情を浮かべる。水竜らしき素材で作られた鎧を着ている。多分この人がパーティーリーダーだろう。他のメンバーは、よく見るとアクアリザードの鎧だ。
「あ、いや、話だけ知ってただけだ。それより、とりあえず下がりながら話そう。あなた達はダンジョンの生存者か?」
それどころではない事を思い出し、全員で戦闘をしながら王都方面へ後退しつつ、重要な事を聞く。自己紹介も後だ。そんなものは、生き残ってからすればいい。
「そうだ」
「他に生存者は?」
「おそらくだがいない。6階にいた私達が一番下にいたはずだ。撤退する時に気配感知を使用していたが、感知範囲内に人の気配はなかった。あったのは、何人かの死体の一部だけだ」
「そうか。ダンジョンを出てからも同じか?」
「ああ」
ナインの質問に、リーダーは簡潔に答えてくれた。
生存者はこの6名のみ。ダンジョンまでの道中も、ダンジョン内にもいない。
「それより、君は1人で何してるんだ?まさか足止」
『ナイン!着いたよ!』
1人残って戦うナインのことが気になったリーダーが、青い槍を振りながら聞いてきた。だが最後まで言い切る前に、メイの声が割り込む。
「あ、ちょっと待って!」
「あ、ああ」
リーダーの質問を一旦止め、メイを優先する。
(了解。こっちは今、生存者の水竜騎士団6人と合流した。そっちはどうなってる?)
『全員無事!王都東門の前に防衛線が作られてる!冒険者がいっぱいいて、この後王都の騎士団も来るみたい。ここまで戻れば戦力があるから大丈夫だよ!』
(わかった。それじゃあこっちは、先に水竜騎士団を撤退させてから1分後に撤退するよ)
『わかったよ!頑張ってね!』
メイの応援に(はいよ)と答え、質問を止めていたリーダーに向き直る。いきなり止められたリーダーは、困惑顔のまま槍を振っていた。
「ごめん待たせた。先に撤退した仲間から連絡が来て、王都東門前に防衛線が作られてるらしい。冒険者が沢山いて、この後王都の騎士団も来るって言ってた」
若干早口になりながらも、状況を伝える。
それを聞いたリーダーは、飛びかかってきたブルーゴブリンを弾き飛ばすと、驚いた表情で振り返る。
「な、遠隔で連絡が取れるのか。いや、それは後だな。了解した。王都前まで戻れれば助かるという事だな」
「ああ」
リーダーの言葉にナインは、しっかりと頷く。
少しずつ下がっているので、東門までは凡そ2.5キロ程だ。B、Cランク冒険者の足なら、5分くらいで行けるだろう。メイ達が10分以上かかったのは、ギルドスタッフがいたためだ。彼らは非戦闘員だからな。
ナインは、メイに伝えたこの後のことを、リーダーへと伝える。
「という訳で、水竜騎士団は先に撤退してくれ。王都方面にも魔物はいるけど倒してるからそこまで多くないはずだ。僕はあなた達が撤退した1分後に撤退を始める」
また次回。