241 生存者
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「サンダーファルコンにフレイムホースにロックゴーレム。げっ!スライムまでいる」
嫌そうな表情に変わる。スライムだけじゃなく他も面倒くさいからだ。
サンダーファルコンは、飛ぶスピードが速い。そのうえ、他の鳥型の魔物と同じように空中から魔法を放ってくる。名前にサンダーと付くように雷魔法だ。この雷魔法だが、特徴としてはとにかく速い。撃った瞬間即着弾、といった具合だ。しかも低確率で麻痺が発生する。僕の場合は状態異常になっても即回復するが、それでも一瞬は硬直する。乱戦では食らいたくない属性だ。
次にフレイムホース。こいつは地面を走るスピードが速い。しかも炎を撒き散らしてくる。その結果、戦場が炎まみれになり余計なダメージを食らう。周囲が森なので、早めに倒さねば森林火災になりかねない。
三番目のロックゴーレム。あ、こいつは大丈夫だったわ。
ロックゴーレムは岩でできた体を持つ地属性の魔物だ。体が岩なのでとにかく硬い。が、僕の剣だとあっさり切れるので問題無い。ロックゴーレムの攻撃も近接攻撃ばかりだ。たまに地魔法を使うが、体の形を変えるか、岩とか石を撃ってくるくらいだ。まぁ、しばらくは撃った石とかが戦場に残るので、邪魔と言えば邪魔か。
最後のスライム。やって来ている奴は青色をしているので、水属性のブルースライムだ。6体いる。こいつが一番面倒。強いのではなく面倒。
主な特徴として、スライムの体は溶解液でできている。この溶解液を飛ばしたり、体を触手のように伸ばして掴んできたり、体の中に取り込んで溶かして吸収したりしてくる。
かなり危険な体をしているが、その反面動きは遅い。ぶよぶよした体のためか物理はあまり効かないので、倒すなら魔法か属性攻撃となる。ブルースライムだと水属性はほぼ効かないので、他の属性の魔法で攻撃するのがいいだろう。
一応物理でも倒せるのだが、やるとしても遠距離攻撃の弓とか投げナイフとかになる。何故、近接攻撃で倒さないかと言うと、溶解液で武器が傷むからというのもあるが、一番は違う。その理由をダンジョンの情報を確認していた時にメイが教えてくれた。
『スライムは死ぬと爆発するよ』
凄く嫌そうな表情だったのが思い出された。
爆発する。溶解液で出来た体がだ。
スライム種は、絶命すると爆散し、溶解液出来た体を周囲へとばら撒く。範囲は、凡そで半径3、4メートルほど。中々に広範囲だ。
この爆発を至近距離で受ける可能性があるため、近接攻撃では倒さないのだ。
ちなみに、スライム種は、女性冒険者から物凄く嫌われている。服が溶けるからな。メイが嫌がったのもこれが理由だったりする。男でも嫌だと思うよ。
「先に倒しとこう」
周囲へとマジックソードを撃ちつつ近くの魔物を剣で倒し、後方のスライムに向けて魔導銃を撃つ。
ドパァーンッ!!
「ギュワァーッ!?」
スライムが絶命したことによる爆発が発生し、一緒に向かってきていた魔物達へ溶解液が降り注いだ。流石の魔物達も嫌なのだろう。スライムの周囲が阿鼻叫喚だ。
「よしよし」
が、そんなものは関係無いとばかりに、ナインは撃ち続ける。後続の魔物にダメージが入るのは良いことだ。出来ればそのまま死んでくれ。
時折り、ナインの横を魔物がすり抜けてしまう事もあったが、出来うる限り倒すと後続が前へと来た。
「あらら。満身創痍だね」
ギャーギャーと喚く魔物を見たナインは、半笑いで呟く。
後続の魔物は、スライム6体分の溶解液を被ったからか所々から煙が上がり、ボロボロの状態だった。というか、あれ?ロックゴーレムいないんだが?
チラリとボロボロの状態の魔物達の後方を確認する。
「・・・あ、いた。って死んでるじゃん」
スライムが爆発した地点に、ロックゴーレムの残骸だと思われる岩が煙を上げて転がっていた。どうやら溶けて死亡したらしい。ラッキーだ。
「まずは飛んでる奴だ」
視線を戻したナインは、王都方面へ下がりつつ、空を飛ぶサンダーファルコンへと魔導銃を撃つ。鳥型は、飛行速度も速いし邪魔だからな。
4体いたサンダーファルコンをゆっくりと、だが確実に撃ち落としていき、地上戦力を倒していく。
「うわ!あちちち!!」
マジックソードや剣で魔物の数を減らしていると、炎を纏ったフレイムホースが突撃してきた。回避には成功したが、辺りが炎に包まれる。
「ちょっ!属性魔法使えないんだよ!」
水は出せないし地面を隆起させたりも出来ない。どうしようかと悩む。が、面倒くさくなり、力技にした。
「ぬぅ!よい、しょっ!!!」
先ほども使用した、巨人型イマジナリーアームの更に大きくしたものを無理矢理生み出し、掌を開いた状態で地面を叩く。
ドンっ!という音ともに地面が揺れる。巨人の腕が霧のように消えると、そこに炎はなく、潰れた魔物の死骸が5体あった。巻き込まれたのだろう。これもラッキーだ。
「雑になるけど、短時間で粗めならいけるな。パンチくらいならいけるか?」
いつも以上のサイズだったが、無理矢理の割に意外と良かった。今後も使えそうだ。
「さて、後退しつつ追撃、・・・ん?」
横を抜けていったフレイムホースを無視し、ダンジョン側から来る魔物へと意識を向ける。すると、ナインの気配感知領域に魔物ではない反応が入り込んだ。
反応が6つ。これは・・・人だ。
「!?生存者か!!」
絶賛戦闘中だが、生き残りがいた事に驚きを隠せないナイン。危うく攻撃を食らいそうになり、魔力機動で回避する。
そして危険だがその場で足を止めると、生存者までの道を開くために全力を出す。
今出せるマジックソードを、連続で、何度も。
流石に連続で出すと、魔力制御の影響か頭が痛くなるが、歯を食いしばって耐える。
「どぉおおけぇえええええ!!!」
設定として、この世界のスライムは
雑魚ではないが強くもない。ただただ厄介で面倒。
くらいの相手です。
青いぷるぷるのあいつとは違いますね。
あっちは可愛いし。
それではまた次回。