023 薬草はいずこ?
今日も2話です。
早朝のギルドに到着した。
ものすごい人の数だった。
「うわ・・・すごいな。」
『朝早くは依頼の取り合いだから、昔からこんな感じだよ。』
寝ぼけが治ったメイが普通の事だと教えてくれる。
(薬草採取だから依頼の掲示板に行かなくてもいいんだよな?)
ギルド内全体にかなりの冒険者がいるが、一番集まっているのは掲示板の前だった。
どんな依頼があるのか見たいが正直行きたくない。
メイが昨日寝る前に見れるかわかんない。と言っていた意味がよくわかった。
『ふふふ、まぁ行きたくないよね。常設依頼は受付で言うだけで大丈夫だよ。あ、冒険者カードは出してね。』
僕の気持ちを理解してくれたようだ。
ギルドの入り口から真っ直ぐカウンターを目指す。
人は並んでいたが幸いまだ混み出してはいなかった。
このあとあの掲示板に群がる冒険者が並び出すのだろう。
冒険者というのはなかなか大変なようだ。
前に3人しか並んでいなかったのですぐに順番が回ってきた。
「おはようございます。あら?あなたは昨日登録された。」
受付に居たのは冒険者登録を担当してくれたアミラだった。
「おはようございます。昨日はありがとうございました。今日は薬草採取に行ってきます。」
後ろの列が増えていくのですぐに用件を伝え、冒険者カードを出す。
「いえ、こちらこそご丁寧にありがとうございます。それではこちらで受け付けます。薬草はどの種類でも買い取りますのでよろしくお願いします。」
「わかりました。」
依頼の受注が完了したのでカードを受け取りバッグにしまうと、受付からそそくさと離れ、ギルドからも出る。
「ふうぅー・・・。」
扉を出た瞬間に大きく息をつく。
後ろに沢山並ばれると急かされているような気がして落ち着かない。
いずれ慣れるのだろうか?
『落ち着かない気持ちはわかるよ。大丈夫。そのうち慣れるよ。』
大概お見通しらしいメイに励まされる。
(あと数十回は経験しないと慣れないと思う。)
などと軽口を言って気持ちを落ち着かせながらギルドを離れ、南門に向かう。
今日の薬草採取は昨日までいた東の森の南東方面だ。
宿代や装備、服代も欲しいので気合いを入れる。
そういえば種類とか買取価格とか聞いてなかった。
とりあえず種類はあとでメイに聞こう。
南門を出て街道を進んで10分。
そろそろいいだろうと左に逸れて森に向かう。
ちなみに南門にガーデルはいなかった。
周りに人も居ないのでフードはおろしている。
「髪の毛長くて邪魔だな。切っていいか?」
別に許可はいらないがなんとなくメイに確認する。
『ダメだよ。目立つけどダメだよ。綺麗なんだからダメだよ。私とお揃いだからダメだよ。』
だいぶ食い気味に拒否された。
お揃いだからダメってなんだよ。
はぁー、仕方ない。
「・・・なら前髪だけ切っていいか?視界に入って前が見づらい。」
妥協案を出しておこう。
『うーん・・・、前髪ならいいよ。他はダメだからね。』
すごい念押ししてきた。
だけど渋々だが許可はくれた。
「わかったよ。とりあえず前髪は・・・、後でいいか。」
そうして髪の話をしながらも進み、森の前に来る
「鑑定使えばいいんだったか?」
メイに事前に教えてもらった情報では、逐一鑑定を使えば楽らしい。
『そうだよ。この森に生えているのだと、ヒール草、マナ草、キュア草かな。ヒール草がHPポーション、マナ草がMPポーション、キュア草がキュアポーションの原料だよ。』
種類とそれで何が作れるのか説明してくれた。
ポーションがどんな物かは事前に聞いている。
飲んだりかけたりして使用する薬とのこと。
HPとMPは名前の通りの薬で、キュアポーションは毒とか麻痺とかを治す薬らしい。
「了解。それじゃあ探して行こうか。」
そう言って鑑定を使いながら森を進み始めた。
薬草探しを始めて1時間。
採取した薬草はマジックバッグから出した皮袋に入れて背負っている。
だが思った以上に薬草は集まっていなかった。
「1時間でヒール草3本、マナ草1本、キュア草1本・・・。全然無いな。」
正直もっと沢山見つけられると思っていた。
『こんなものだよ。そんなに集まらないから常設依頼としてあるんだし。』
そんなものか。
大概は他の依頼のついでに集めたり、僕みたいにランクの低い者がやるのだろう。
「根気良くやるしかないってことか。」
『そういうこと。さ、頑張ろう。鑑定使えないけど私も探すからさ。」
減った気合いを入れなおし、探索を再開する。
今はまだ森の浅いところを探しているので少ないのかもしれない。
「奥の方が薬草も多いかな?」