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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
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238 青き魔物達

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 「メイ、Cランクが来た。他属性もいるけど、ほとんど水属性だ」


 思念での会話なので口に出す必要はないのだが、何となく声に出して報告する。


 多いな。後続もいるっぽいのに初っ端から50は来てるぞ。


 ざっと確認しただけだが、中々に多い。


 『わかったよ。氷属性は?』


 先ほどまでと同じようマジックソードを出していると、メイが聞いてきた。そういえば氷がいないな。


 「氷は、いないな・・・。あ!後続にいたわ。何で一緒じゃないんだ?」


 氷属性の魔物は、何故か後続で集団になっていた。どうやら水と氷で別々の集団を作っているようだ。


 『たぶんだけど、数と相性の問題じゃないかな?数が少ない場合は一緒にいたりするけど、多くなると属性別で固まってたりするから』


 「あー、なるほど」


 何となくだが理解した。


 相性的なものか。水は、氷属性の攻撃で凍結してしまうからな。少数ならある程度問題無いだろうが、流石に50近くの集団になると無視できないのだろう。


 この先頭の水属性の魔物達は、スタンピードで移動していると同時に、氷属性の魔物達からも逃げている状態な訳だ。


 ちなみに、もっと数が多くなると属性別で別れず、相性を無視して大集団になったりする。そこまでいくと、相性など関係ないのだろう。


 「少しずつ後退しながら足止めするな」


 『わかったよ。こっちはあと3分の2くらいだからね』


 「了解」


 歩くくらいの速度で後退しつつ、ナインは水属性の集団にマジックソードを撃つ。


 後退する理由には、撤退する時の距離を稼ぐというのもあるがそれ以外にもある。


 とりあえずは戦闘領域の確保だ。周囲には、最初に倒した魔物の死体が100ほどある。これはかなり邪魔だ。戦闘領域が雑多になり、遠距離攻撃に対しての壁にされるなどが起こりうる。あとは、イレギュラーが起こりやすくなるなどもあるだろう。死体に足を引っ掛けて転ぶとかな。


 それと、死体が壁になり、魔物の移動経路が横に広がる可能性が出る。左右に広がってしまった場合、集団の数は減るがどちらか一方しか足止め出来なくなる。これはマズイ。それに、王都での迎撃も範囲が広がり戦力が分散する。街からの支援もしにくくなるだろう。


 その点、逆に固まって一方向から来るほうが楽だ。進行方向がはっきりするうえに、集団の密度は濃くなるが、大量の魔法使いで範囲魔法を使えば割と楽に倒せるからな。残った魔物は近接職が倒せばいい。先ほど言った支援も、一箇所だけで良くなるしな。


 まぁつらつらと語ったが、後退しながら戦った方が今も後も楽というわけだ。


 マジックソードを射出したナインは、続けて魔導銃を撃つ。


 ドギュン!!!


 「シャギャッ!?」


 顔面に直撃したスプラッシュリザードが断末魔を上げて弾け飛んだ。お?木っ端微塵にならなかったな。やっぱりCランクまでいくと硬いな。


 倒せはしたが、思った以上の効果が与えられなかったことにナインは、集中をより強める。それと同時に、マジックソードを当てた魔物達の様子を見る。


 「・・・やっぱり生きてるな。死んだ奴が一体もいない」


 十数体の魔物の体に、剣での切傷があった。だが、血は流れているが深くない。どれもこれも元気に動いている。


 「流石Cランク。防御力だけじゃなく耐久力もあるな」


 後退しつつナインは呟く。そしてすぐに追撃を開始しようと、マジックソードと魔導銃を構えた。しかし、魔物の方が少し早い。


 「ギャギャーッ!!!」


 「っ!くそ!」


 ナインに向かって血を流す魔物だけじゃなく、無傷の魔物も襲いかかってきた。


 「グシャーッ!!」


 先ほど倒したのとは別の個体のスプラッシュリザードが、鳴き声を上げて近づいてきた。その口が大きく開いている。噛み付きだ。


 「おら!」


 マジックソードを創造しつつ、右手の剣で頭を脳天から真っ二つにする。そしてすぐに出来上がったマジックソードを撃とうとした。だが、魔物は一体ではない。


 「ピピーッ!!」


 やかましい声が上空から降り注ぐ。咄嗟に上を見上げると、青い鳥型の魔物が4体いた。


 ウォーターイーグル!!


 青の洞窟に出現する鳥型の魔物だ。主な攻撃方法は、空中から突撃し、嘴、爪での近接攻撃。それと、水魔法での遠距離攻撃である。今のように。


 「「「「ピーッ!!!!」」」」


 空中で4体のウォーターイーグルが、同時にけたたましい声を上げる。すると1体につき5本、計20本のウォーターアローが出現し、即座にナイン目掛けて射出された。


 「シールド!」


 頭上から降り注ぐ水の矢を、マジックシールドで防ぐ。


 ガガガガッ!!という音を立て、水の矢がシールドにぶち当たる。強度的には問題無い。防げる。


 そう思っていると。


 「ガルゥア!!!」


 「うっ!?」


 いつの間にか接近していたウォーターウルフが、左脚の太腿に噛みついていた。


 「離せっての!」


 「ギャンッ!!」


 左の魔導銃で咄嗟にウォーターウルフの胴体を撃ち抜く。威力が高いおかげか、ウォーターウルフは鳴き声を上げて吹き飛び、絶命した。


 だが、魔物はこの程度では無い。


 「ギギギギギ」


 擦れるような鳴き声に反応し顔を上げると、藍色をしたカブトムシのような魔物であるレインビートル2体が、こちらへと翅を広げて突撃してきているところだった。


 かなりの速度で飛ぶレインビートルの翅と角に、水の刃のようなものが付いている。まとも受ければ、手足くらいならあっさり落ちそうだ。


 「ならお前らだ!」


 ナインは、まだ撃っていなかったマジックソードをレインビートルへと撃った。


 ガギガギガギッ!バキン!!


 「ギギー!!」


 甲殻がかなり硬く、一発では貫けなかったが、四発目で何とか貫通した。レインビートルは断末魔を上げて墜落すると、突撃の勢いのまま地面を削って転がっていく。


 「よし!ゔっ!?」


 レインビートルを倒した直後、ナインの体に衝撃が走った。何かを食らった。それだけわかったナインは、何かが当たったと思しき胴体に視線を向ける。


 「・・・泥?っ!?」


 自身の脇腹辺りに付く泥に首を傾げたナインは、すぐにその原因を思い出す。


 マッドモンキーか!!


 青の洞窟内に出現する猿型のCランク魔物。


 気付いたナインは顔を上げ、周囲を見回す。


 「いた!!」


 街道上ではなく、その脇に生える木の上に、青茶色のマッドモンキーの姿が見えた。数は全部で6体。左右に3体ずつ。


 くそ!マジックソード全部撃たなきゃよかった!


 レインビートル相手に全て使った事に後悔する。


 くそ・・・。


 樹上のマッドモンキー達、そしてまだまだ他にもいる魔物達を見据え、ナインは内心で悪態をつく。


 だが、それは魔物に対してではない。


 「やっぱり僕、あんまり強くないな・・・」


 自身の弱さに対してだった。

また次回。

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