230 筋肉さん
祝!!投稿開始から1年!!
宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。
僕は今、6つの筋肉に囲まれている。
「どうした少年ッ!!」
目の前の一際凄い筋肉が、僕へと爆音を響かせた。ちょっ、唾飛んできたぞ。
上半身裸のムキムキ中年男は、その逞しい肉体を誇示するようなポーズをとっている。
この人がAランクの防護否定さんだ。絶対間違いない。
目の前に立つ男の姿を見て、ナインはすぐに誰なのかわかった。ルチルが言うように、声が大きくて暑苦しそうは人だ。
何故こんなことになったのか。はっきりと言えば、特に理由は無い。
ギルドにてやってきた僕達は、まず最初に受付に並んだ。予定通り、ダンジョンの情報とマップを手に入れるためだ。
マップはすぐに手に入れることができた。受付に言えば速攻だったの。『ダンジョンの情報に関しては、マップに記載されているのでそちらで確認して下さい』と言われたのでかかった時間は列に並んでの順番待ちの方が長かったな。
ちなみに、ここではダンジョンマップの料金を取られた。四足ダンジョンの時は取られなかったのに。とはいえその辺は仕方ないらしい。四足ダンジョンはCランクダンジョンだったが、今回のダンジョンはAランクだ。危険度が高いため、どうしても運営費用や警備費用、保全費用等にお金はかかる。少しでも費用を稼ぐには大事なことだろう。
「ふんッ!!某の筋肉はどうだ!?」
防護否定氏がポーズを変えると再度爆音を響かせた。耳が痛い・・・。もう少し音量下げて・・・。ポーズとっていいから。
「・・・えーと、凄いですね」
必死で引き攣った笑みを浮かべ、防護否定氏にありきたりな感想を返す。誰か助けて。
救いの手を求めたナインは、目だけを動かして仲間達の行方を探す。仲間達はすぐに見つかった。
グレンは、ギルド内の酒場の一角で誰かと話しているようだ。ルチルは知り合いがいたのだろう、こちらも酒場にて女性冒険者と話している。この2人は、まぁいいだろう。楽しそうにしているし、邪魔するのもなんだ。だがメイ。君はダメだ。
筋肉集団による囲いのすぐ外側で、メイはニヤニヤしていた。あれは、この状況を外から見て楽しんでいるだけだ。助けられるのに面白いからと笑っていやがる。
(後で覚えておけよ?)
『え?何?聞こえなかった』
思念会話でそう伝えると、すっとぼけた返答が脳内にやってきた。ふざけんな。思念会話は意識に直接語りかけてるんだぞ。聞こえないは無いだろ。
イラっとした僕は、顔ごとメイの方を向くとギロリと睨みつけた。
受付にてマップを手に入れた僕達は、情報の確認は宿でする事にし、ちょっと王都の依頼を見ていこうという流れになった。
そうして全員で依頼掲示板に向かっていたのだが・・・。
その途中で、何故か僕だけ筋肉集団に囲まれた。
「おお!そうだった!!自己紹介がまだだったな!!」
これまた爆音と共にポーズを変えた防護否定氏がいきなり自己紹介を始めた。
「某の名は、ガンドット・ラリゴッス!Aランク冒険者だ!!一応、防護否定という二つ名もあるぞ!!よろしくな!!」
「あぁ、はい・・・。Cランクのナイン・ウォーカーです」
「うむ!ナインというのか!よろしくな!!」
何故か2回よろしくされた。というかやっぱり防護否定だった。
改めて思うが、以前ルチルが言っていた通りの見た目と印象だ。上半身裸で声がデカく、暑苦しい。それと本当に武器もアクセサリーも装備していないみたいだ。彼の体には、それっぽいのが一切見当たらない。
「こいつらは某のパーティー、筋肉勇者のメンバーだ!!全員!挨拶!!」
「「「「「よろしくッス!!!!!」」」」」
「うびゃッ!?・・・あ、はい。よろしくです」
5人の筋肉からの同時挨拶に驚き、変な声が出てしまった。・・・え?筋肉勇者?
思わず目を見開いてしまうようなパーティー名だ。だが、それはそれとしてなんともわかりやすい。ムキムキな人しかいないとすぐにわかる。入りたくはないけど。
周囲で思い思いにポーズをとる筋肉勇者の面々を眺めたナインは、視線を正面のガンドットに戻した。
「あの・・・、それで、何か用でしょうか?」
彼らが何者かはわかった。Aランクの冒険者と、その冒険者が率いるパーティーメンバーならば、悪い人ではあるまい。問題は、声をかけて囲んだ理由だ。
「ん?ああ、それはな」
ナインの問いかけに、ガンドットは普通の音量で話し始めた。いや、大声じゃないんかい。なら最初からそのくらいにしてよ・・・。
彼は、ルチルの知り合いらしい。あ、そういえば、絡まれると長いって言ってたな。
数ヶ月見なかった彼女の姿を見つけ、何があったのか聞くために話しかけようとしたところ、一緒にいた僕を発見した。とのことらしい。
・・・ん?それだけ?
「なんか、面白そうだったからな!!」
「そっすか・・・」
乾いた返事が溢れる。ヤバイ!!思った以上に超面倒臭い人だ。
結局のところ、ルチルと一緒にいた面白そうな奴に話しかけた。ということだけらしい。
くぅ・・・、誰か助けてくれ。
筋肉の囲いの隙間から、仲間達の姿を探す。
だが僕の目には、ニヤニヤと笑うメイの姿しか見つからなかった。他は、哀れみの表情を浮かべる冒険者ばかり。おそらく過去に絡まれた者達なのだろう。辛さがわかるから助けてやりたいが、巻き込まれたくもないと思っていそうだ。
僕が周囲に向けた視線を、自身の誇る筋肉に向けたと勘違いしたのか、筋肉勇者の面々のポーズが激しくなる。
そして声も激しくなった。
「肉食ってるか!?」「野菜も食えよ!!」「筋トレはどのくらいやってる!?」「睡眠はちゃんと取ってるか!?」「ダンベル持ってるか!?」
うるさいよ!!
全方位からの筋肉ボイスに頭がおかしくなりそうだ。
この声を止めろとばかりに、僕は恨めし気な目をガンドットへ向ける。
「やはり筋肉こそ至高だ!!!」
だが、そんな僕の気持ちが彼に届く事はなかった。
というわけで、投稿開始から今日で1年が経ちました。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
この先も、少しずつですが頑張って投稿していきたいと思います。
今年の目標は、5章中盤まで書く!です。
今後とも、よろしくおねがいします。
それではまた。