229 宿にて予定を
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アズールに入ってから1時間後、ナイン達は、街の中心地から少し手前の場所にある宿を無事確保することができた。
街の構造としては、中心に馬鹿デカい噴水が有り、その後ろに王城となっている。そして王城の周辺は貴族街となっており、さらにその外側が住宅街、商業街といった感じだ。
ちなみに街の形は、完全な円形をしている。噴水を中心に広がったという歴史があるらしく、住民は、噴水と水をとても大切にしているんだとか。
「カルヴァースの宿と同じくらいだな」
借りた部屋に入り、中をざっと見たナインは、部屋の内装や間取りをそう表した。
広めのリビングフロアに寝室が2部屋。寝室にはベッドが2つある。後は、カルヴァースの時と同じように簡易キッチンもある。もちろん、お風呂とトイレもあるぞ。
「料金は高かったけどね」
「仕方ないですよ。年末はどうしても料金が上がりますから」
「相場の1.5倍はまだマシな方じゃねぇか?」
同じように部屋を確認していたメイ達が、宿泊料について話していた。
この部屋の料金だが、朝夕の食事付きで1泊9万トリアだった。カルヴァースの宿は食事がついてなかったため、1泊4万トリアだったのだが、このくらいの部屋で食事付きの場合は、相場が6万前後らしい。
ルチルが言うように、観光客が増える年末は、宿泊料が高くなるんだとか。
仕方ないとはいえ、ちょっと高いなぁとは思った。だが今更安宿には泊まりたくない。ましてや年末だ。出来れば良い環境で年を越したいと思っても、これまた仕方ないと言えよう。どうやら贅沢になってしまったようだ。
「それじゃあ、いつも通り寝室は男女で。荷物置いたらリビングに集合して予定の確認しよっか」
「そうだな」
「わかりました」
「・・・はーい」
「んにゃ」
それぞれに了承の声が返ってくる。メイだけは、僕との同室じゃないため若干不承不承だが、知らん。流石にグレンとルチルの同室はダメだろ。
少しだけ煤けた背を見せながら、メイはルチルと共に寝室へと向かって行った。
僕とグレン、そしてルーチェも、自分達の部屋へと向かう。
さて、ささっと荷物置くとしよう。
10分程で全員がリビングへと戻ってきた。
部屋の中央にあるテーブルを囲む形でそれぞれソファーに座る。
「んじゃまずは今日の予定だな」
そう言ってグレンが話を始めた。
「まずこの後だが、ギルドに行く。そんでダンジョンの場所の確認と、フロアマップを手に入れる」
「前に入った四足ダンジョンの時みたいな感じだね」
「ああ」
ナインの言葉に、グレンがしっかりと頷いて返した。
前回潜った時と同じように、冒険者ギルドでは最寄りのダンジョンのマップや出現魔物の情報などが用意されている。まずはこれを手に入れる。こういった情報を先に手に入れていた方が、予定や買い物をしやすいからだ。
グレンの話は続く。
「ギルドで情報を手に入れたら、明日から6日までは観光。つうか自由だ。年末年始だからな。それぞれ好きにしよう」
「そうだね」
ギルドに行った後の予定を口にしたグレンに、僕を含め全員が同意する。
「んで7日からダンジョンアタックだ」
全員の同意を確認したグレンが、あらかじめ皆で決めていたダンジョンアタックの日を告げる。
今後の予定は、今日から6日までの8日間は観光なんかをしてしっかりと遊ぶ。そして7日から冒険者業に戻り、ダンジョンにてレベル上げ、となる。
年明けからすぐにダンジョンへ行かないのは、先に観光した方が時間的にも時期的にも良かったからだ。年末年始は色々と楽しめる事も多いのに、それらを無視してダンジョンに潜る必要もあるまい。しっかりと英気を養い、気力もやる気もマックスにしてからダンジョンに向かう方が効率もいいだろう。
今回のダンジョンアタックでは、主にレベル上げをメインに活動する予定だ。
一度のダンジョンアタックにかける日数は、最低7日。長くても10日くらいを目安にしている。ちなみにこれには、往復の移動の時間も入っている。
ダンジョンへは、王都からゆっくり向かっても半日かからずに着く。だがそこからダンジョンの下階層へは、マップを見て最短距離で進んでも数日はかかる。それ故の時間設定だ。
おそらく、目標階層に着いてからは1日か2日くらいしか時間が取れない可能性が高い。帰りも行きと同じ日数がかかるからな。
「・・・予定確認つっても、前々から決めてたからあっさり終わったな」
「まぁ、予定決めじゃなくて確認だからね」
事前に話して決めていたため、予定確認はすぐに終わってしまった。となれば、さっさと予定の行動に移った方がいい。その分後でゆっくりできるからな。
「そんじゃギルドに行くか」
そう言ってグレンが立ち上がった。
ナイン達はそれぞれに了承の返事をすると、準備もそこそこにしてすぐに部屋を後にした。
それではまた~。