220 それぞれから見たナイン2
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すみません。
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Side ギルフォード
勘弁してくれんか。
スチュアートの同行者であるギルフォード・グラントは、目の前で起こる状況に対し、内心でそう吐き捨てた。
(とんでもねぇもんに手出しおって・・・)
怒りの権化とも言うべき白髪の青年を見ながら、ギルフォードは溜息をついた。そうして視線をずらし、隣に立つ少女、アメリアの様子を確認する。
「あわわわ・・・」
自身と同じくマントを深く被り、姿を隠している少女はあまりの状況に声が震えている。抱えるように持つ杖もガクガクと震えていた。わしは頭を抱えたい気分じゃ。
正直、今回は最初から止めるべきだった。
このスチュアートの阿呆がこのようなことをするのは、今回が初めてではない。1週間に数回はやる。ならばなぜ最初から止めないのかと言えば、最初から止めた方がより面倒な事になるからだ。
そもそもの経緯として、わしとアメリアの嬢ちゃんはこの阿呆の仲間ではない。ただの同行者だ。そしてわしにいたっては、国と契約し、嬢ちゃんの護衛をしているが、その実ただの冒険者だ。別に騎士でもなんでもない。
ではそんなわしと嬢ちゃんがなぜ同行しているのかと言えば、嬢ちゃんに対して本国からの要請があったからだった。しかも最重要という文言付きで、だ。
要請内容にはつらつらとどうでもいいような言葉が多々あったが、要約すれば、勇者が同行者に希望した。それだけだ。
通常であれば、本国がこんな要請を受けるはずがない。だが受けた。金に靡くような国じゃない。おおかた、脅されたか何かだろう。
そうして4ヶ月程前からこいつらと行動を共にし、アクエリアスまでやってきた。が、道中はひどいものだった。
傲慢なスチュアートによるわがまま、それから派生した犯罪行為。奴の従者達は一切止めることはないため、その全てをわしが諌めることになった。
『なぜわしが?』
そう何度も思った。
そもそもわしはアメリア嬢ちゃんの護衛だ。決して阿呆の教育係ではない。
それでも何度も止めてきたのは、嬢ちゃんのためである。この優しい子に、余計な中傷や危害が及ばぬよう、護衛として守るためだ。
先ほどの話に戻るが、最初から止めればより面倒になる。の、この面倒が何なのかと言うと、単純に暴れるのだ。
一番最初にスチュアートの行動を止めた時、こいつは街中で剣を抜き、暴れ散らした。
雷の聖剣の効果なのか、雷魔法のスキルなのかわからないが、周囲に雷光を振り撒き、負傷者と家屋等への損壊を多大に出したのだ。
それ故に、最初には止めず、少ししてから標的とされた女子をわしが隠れて逃していたのだ。
もちろん女子に手を出させたりはせん。まぁ、連れ去られるようなことをされた事で心に傷を負ってしまった可能性はあるが・・・。それについては、本当に申し訳なく思う。
そうして逃した後に、わしがスチュアートへと説教をするという方法をとっていた。この方法であれば、スチュアートが暴れる事はなかったからだ。おそらくだが、逃げられたとは、言え連れ去る事には成功しているからなのだと思う。いや、正直わからん。
色々やってみたが、これが一番被害が出ない方法だった。
それからは、少しずつだが止めるタイミングを早めたり、説教を強くするなどして、スチュアートにそのような行動をさせないよう、ひたすら尽力してきた。
その甲斐あってか、スチュアートがやらかす回数は減ってきていたのだが・・・。
改善される前に、特大の地雷を踏み抜いてしまった。
(おいおい、こりゃとんでもないのぉ・・・)
ギルフォードは、白髪の青年を魔力を肌で感じながら心の中でつぶやいた。
際限無しに湧き上がる魔力に、周囲の人間がバタバタと倒れていく。
(使徒と同等・・・。いや、それ以上じゃな)
過去に数度、ラグナロクの使徒と戦ったことがあるギルフォードは、青年を魔力をそう評した。
(化け物じゃな)
堪えていても溜息が漏れた。
正直あんな者の前に出たくはないのだが、この状況をどうにかせねばならない。
ギルフォードは、スチュアートと白髪の青年に間に出ようと足を踏み出そうとした。
「ッ!?」
だがそれよりも早く、白髪の青年の右手が上がった。そしてすぐに青年の周囲に魔力で作られた剣が現れた。
(くそったれ!!)
あれはマズイ。普段のスチュアートならば何とかなるが、驚きに固まってしまっている状態では防げない。
キュキュキュキュン!!!
青年が魔力剣を撃ち出すと同時に、ギルフォードはマジックバッグから両手斧を取り出しながら飛来する剣の前に躍り出た。
全力の移動にフードが落ち、顔が出てしまったが気にしてる場合では無い。
(17本!多いな!)
魔力剣の数に文句を言いつつ、ギルフォードは高速で斧を振るった。
ガガガガガガガガガッ!!!ガギンッ!!!
(ぐぅッ!重いのう!)
斧を通じて手に伝わってくる衝撃が、想像以上に重く硬い。かなりの魔力が込められているようだ。それに勢いも。
壊すつもりで迎撃したが、魔力剣は一切折れることなく、地面に散らばる。
全てを叩き落とすと、ほんの少しだけ静寂が生まれた。
白髪の青年の隣に立つドクロ面の男が、わしの顔と両手斧を見る。面によって顔は見えないが、驚愕している様子が気配から感じられた。
「・・・雷轟。ギルフォード・グラント」
ドクロ面の男が、わしの二つ名と名を口にした。
投稿予約をすっかり忘れてました。
出先で気付いたので、帰るまで出来ず・・・。
ごめんなさい。
それではまたー。