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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
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212 護衛3日目の夜2

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 「ルチルは、いつパーティーに入ったんですカ?事件が解決した後ですカ?」


 気さくな様子で話しかけるエルン。ルチルと骸の集は、以前に何度か話した事があるくらいなのだが、エルンとは魔法使いどうしという事で仲良くしていたらしい。


 ルチルは、エルンへ向くとすぐに話しだす。


 「そうです。事件が解決して、ルーチェちゃんを従魔登録しに行った時ですね」


 そうだったな。確か、冒険者ギルドの近くでだった。


 まだまだ最近の事なので、鮮明に思い出せる。


 「ずっとソロだったルチルが、どうして入ったんですカ?」


 「ああ、それは私も気になりますね」


 エルンの質問に、テオドールも乗っかる。どうやらずっと気になっていたらしい。


 2人からの問いかけに、ルチルは当時を思い出すかのように空を見上げる。そうしてゆっくりと言葉を紡いでいく。


 「・・・そう、ですね。色々理由はありますが一番は、楽しくて、別れたくなかったから、ですね」


 ルチルの口元に小さく笑みが浮かぶ。


 彼女のその幸せそうな表情を見て、エルンは安心したように微笑んだ。


 「・・・なるほド。良かったですネ、ルチル」


 そう答えたエルンの声に、安心と喜びの色を感じた。


 ずっと心配だったようだ。


 彼女も魔法使いだから、ソロで魔法使いを続ける大変さがよくわかるのかもしれない。出来れば、どこかのパーティーに入って欲しいと思っていたのだろう。


 「はい!」


 顔をエルンに戻したルチルは、にっこりとした笑顔を作り、嬉しそうに答えた。


 エルンの心配も、これで少しは解消されたことだろう。あ、いや、僕達次第か。心配させないように強くならないとな。


 心の中でしっかりと決意を固めるナイン。それと同時に、先程のエルンの様子から少しだけ気になる事が出来ていた。


 それは、骸の集も過去にパーティーに誘ってたりしたのかな?というものだ。


 エルンがあれだけ心配していたのだ。であれば、過去に誘っていてもおかしくないのではないだろうか。


 ちょっと聞いてみよう。


 そう思ってすぐにテオドールに聞いてみた。


 「ええ、二度ほどお誘いしましたよ。物凄く申し訳なさそうに断られてしまいましたが」


 何でもない事のように教えてくれた。


 やっぱり。しかも2回もか。


 一度だけだと思っていたのでちょっとだけ驚いた。もしかしたら心配だったからだけでなく、実力も加味しての誘いだったのかもしれない。ソロで魔法使いなら戦い慣れてるからな。


 僕達の会話を聞いていたルチルが、「あの時は、すみせんでした・・・」と言いながらぺこぺこ頭を下げていた。


 まぁAランクからの誘いだしな。申し訳なくなる気持ちもわかる。


 ルチルの様子にテオドールは、気にするなと答えると、雰囲気を変えるためか僕達の装備に目を向けた。


 「そちらの剣が、報酬で頂いた物ですか?」


 「そうです」


 「もしよろしければ、見せていただいてもよろしいでしょうか?出来れば、鑑定も」


 「構いませんよ。どうぞ」


 僕は、腰に提げた振切剣を外すと、鞘ごと手渡した。


 テオドールは、「ありがとうございます」と答えると丁寧に受け取り、ゆっくりと鞘から抜く。


 「これは・・・、かなり強いですね。切ることに特化したアビリティですか。しかも剣自体も凄いですね。硬く、鋭い」


 剣の性能を確認したテオドールが、感嘆の声を漏らす。そうでしょうそうでしょう。それ凄いんですよ。

 

 見た目は、装飾のほとんどないシンプルな長剣なのだが、性能はピカイチだ。相手が舐めてかかって剣で受けようとしても、その剣ごとバッサリと切り捨てられるレベルだ。


 僕とテオドールが報酬で貰った武器について話していると、他の骸の集の面々も同じようにメイやグレン、ルチルに武器を見せてとお願いし始めた。


 あちらこちらから楽しそうな声が聞こえてくる。


 「なるほど、魔力吸収能力を付与するんですね。継戦能力が上がり、妨害も行える。面白いですね」


 「魔力還元!凄いデス!羨ましイ!」


 「なんだ?武器じゃないのか?なに!?操重の小手に縮地のブーツだと!?超レア装備じゃねぇか!!ど、どんな感じなんだ?」


 「うふふ、可愛いねルーチェちゃん。おやつ食べる?」


 斥候のスラーンがメイの、魔法使いのエルンがルチルの、剣士のリィトがグレンの装備をとそれぞれで盛り上がりを見せていた。


 ヒーラーのミネアだけは、膝の上に乗せたルーチェを嬉しそうな表情で撫でていた。いつのまに?というかもう夜中なのでおやつは、ダメです。


 「仲間達がすみません」


 そんな仲間達の姿に、テオドールが申し訳なさそうな顔をする。


 「気にしないでください。みんなも楽しそうです。ああ、そうだ。これも報酬で貰った物です」


 そう言って僕は、腰の後ろに付けた魔導銃を外し、テオドールに渡す。


 テオドールは、振切剣を返し、魔導銃を受け取った。


 「・・・これは、魔導銃ですね。鑑定しても?」


 「どうぞ」


 「失礼します」


 受け取った剣を腰に戻しながら許可を出す。


 テオドールは、真剣な目で魔導銃を鑑定し始める。そしてすぐに目を見開いた。


 「あの・・・、失礼ですが、ナインさんは、これを使えるのですか?」


 性能を確認したテオドールが、恐る恐るといった様子で聞いてきた。


 ここで僕は、自身がミスをした事を理解した。


 あ、ヤバい。そういえば、普通の人なら使うだけで魔力切れになるか、そもそも使う事すら出来ないような武器だった。


 僕が持つ魔導銃アストラ<type.Ⅲ>は、万人が使えるような性能をしていない。使用に必要な最低魔力量が3000と、かなり高いのだ。自分の魔力量が膨大なので忘れていたが、ヒトの魔力は、そこまで多くない。


 参考として、レベル40の魔法使いであるルチルの魔力量、ステータスのMPの値は、2560である。つまりは、魔力特化であるルチルでさえ、1発も撃てないような性能なのだ。


 普通の人は、使う事すらできない武器。それを持ち歩く僕。どう考えても変だろう。テオドールがこのような反応をするのも、仕方ないと言える。


 どうしようか、と焦る僕。だがテオドールは、それだけで答えがわかったようだった。


 「・・・失礼しました。お答えいただかなくて大丈夫ですよ。何となくですがわかりましたから」


 僕を落ち着かせるためか、微笑みながら優しく話すテオドールの姿に、答えられなかった僕は、何だか申し訳なくなった。


 「すいません・・・」


 「お気になさらず。誰にでも言えない事は、あるでしょう。私もありますから」


 慰めるような言葉に、僕は少しだけ気持ちが軽くなった。というかテオドールにもあるのか。どんなのだろう?


 テオドールは、僕に魔導銃を返すと、また雰囲気を変えるためか別の話題に変える。


 「そういえば、ナインさんとメイさんは、髪の色が同じですよね。ご兄妹ですか?」


 僕とメイのことだった。まぁ気になるよな。珍しい色らしいし。


 気落ちしたり戻ったりと忙しくしていた僕は、テオドールの問いかけに対し、深く考えもせず何気ない感じで答えた。


 だがこれもまた、ミスだった。


 「いえ、夫婦です」


 言ってから、しまった!と気付いた。


 普段なら「そうです」と答えていた場面だったのだが、どうやら頭が働いていなかったようだ。


 「「「「「えっ!?」」」」」


 武器やら何やらを話していた骸の集の4人とテオドールが、声を揃えながらバッ!と音がしそうな勢いでこちらを向いた。


 視界の端で、グレンが呆れ顔で頭に手をやり、ルチルが苦笑いを浮かべているのが見えた。


 そして隣に居たので見えなかったが、メイがドヤ顔で胸を張っていた。

次回は4日後の月曜日です。

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