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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
212/251

211 護衛3日目の夜1

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 クリアマリンを発ってから早3日。僕達冒険者と商団は、行程の3分の1まで進んだ。


 現在は、絶賛野営中である。


 「・・・」


 一応は周囲の警戒をしつつ、時折り爆ぜながらパチパチと燃える焚き火を眺める。


 時刻は23時。ぼーっとしているように見えるが、皆がテントや馬車の中で寝静まる中、夜の見張りをしているところだ。


 焚き火の周りには、メイ達もいる。


 今の僕達の役割は、火の番だ。


 他の2パーティーの内1つは、魔物や盗賊に襲われないよう、周囲を歩き回って警戒している。


 一応、商会支給である魔物避けの香を焚いているので魔物が寄ってくることはほぼ無いが、例外はある。高ランクの魔物ならば寄ってくるし、そもそも盗賊には効かない。その為の周囲警戒だ。


 もう1つパーティーに関しては、交代までテントで仮眠している。


 今日の見張りは、僕達のパーティーと、テオドールのパーティー、そしてCランクのパーティーの計3パーティーだ。


 見張りの担当と順番もそうだが、野営になる日についても、出発前のリーダー会議で指示されていた。


 見張りの順番は、最初がBランクパーティー2つに、Cランクパーティー3つの計5パーティーで、次が先ほど言った僕達とAランクを含めた3パーティーだ。これを野営の日毎に交代で行う。


 野営日に関しては、1日目、3日目、4日目、6日目がそうだ。2日目と5日目は、途中の村で宿泊となる。というかなった。


 なので初日は、5パーティーの見張りで野営を行い、2日目は村で宿泊。3日目である今日は野営で、僕達が見張りの番となった。

 

 ああ、7日目は到着予定日だから、野営は無いよ。遅れも出ていないから、予定通り7日目の夕方に着くはずだ。


 「眠たい・・・」


 「同意」


 こっくりこっくりと船を漕ぐメイの声に、反射的に答える。普段は寝ている時間だ。そりゃ眠い。


 焚き火を挟んだ向いから、大きめな溜息が聞こえた。


 「寝るなよ。寝たらしばく」


 溜息の主であるグレンが、ジロリとこちらを睨んでいた。寝ませんよ。本当。


 「大丈夫。あと半分だから我慢できる」


 答えながら、揺らめく炎の根本に薪を焚べる。あと2時間の辛抱だ。そうすれば寝れる。


 仮眠中のCランクパーティーとは、4時間毎の交代だ。僕達が21時から1時で、交代後のパーティーが5時までだ。


 ちなみにテオドール達Aランクパーティーは、交代しない。不寝番というわけだ。すごい。


 そうして気配感知スキルなどを使用しつつ、時折り雑談しながら火の番をしていると、こちらに近づく足音が聞こえてきた。


 「・・・ん?ああ、大丈夫か」


 気配感知で近づく者が誰か、すぐにわかった。


 「お疲れ様です。少し休憩しますね」


 「お疲れ様です。どうぞ」


 近寄り声をかけてきた5人組を、グレンが出迎える。


 休憩に来たのは、テオドールと4人の仲間だ。


 あれ?周囲の見張りはいいのかな?


 野営地周辺を見回っていた骸の集が、持ち場を離れて戻ってきたことに、僕は大丈夫なのか?と少し不安になった。


 とりあえず聞いてみる。


 「あの、戻ってきても大丈夫なんですか?」


 「大丈夫ですよ。斥候のスラーンに周辺を確認してもらいましたので。かなり広めに感知してもらいましたが、魔物も人の気配も無いとのことです」


 大丈夫なようだった。


 骸の集で斥候を担当しているスラーンさんが、笑顔を浮かべてこちらに手を振っていた。僕も笑みを浮かべ、振りかえす。


 スラーンさんは、Bランクの冒険者だ。斥候に関してかなりの腕なのだとか。


 「そうだったんですね。すいません」


 「いえ、お気になさらず。不安に感じるのもわかりますので」


 テオドールとスラーンに謝罪する。だが2人は特に気にしていないようだった。


 僕達とテオドール達の9人と1匹は、焚き火を囲んで座り込んだ。


 テオドールが、自身のマジックバッグからヤカンやら何やらを取り出し始めた。お茶の缶もあったので、休憩用のお茶を入れるようだ。骸の集の面々も、バッグから自分のカップを取り出す。


 ヤカンに水を入れ、焚き火でお湯を沸かし始めたテオドールが口を開く。


 「実は、皆さんと話してみたかったんですよ」


 そう言ってテオドールは、焚き火から顔を上げると僕を見た。


 何故僕?リーダーは、グレンだけど?


 よくわからずに首を傾げる。


 「知り合いでありずっとソロだったルチルミナさんが所属したパーティー、っていうのもありますが、武器やら精霊獣やらと中々に気になるところがありましたので」


 「あー、なるほど。確かに」


 ルチルの事を抜きにしても、全員が魔剣、魔杖持ちな上に、ルーチェという精霊獣がいる。普通のCランクパーティーとは、かけ離れていると言えるだろう。気になるのも仕方ない。


 とはいえ、武器に関しては、性能くらいしか話せる部分が無い。カルヴァースで起こった事件を解決した報酬で伯爵から貰ったのだが、事件については緘口令が敷かれている。なので入手経緯は口にできない。


 さてどうしたものか・・・。


 解決策は無いかと頭を悩ませていると、隣に座るメイが口を開いた。


 「Aランクなら、最近各地で起きた大きな事件について、ギルドから何か聞いてない?」


 え?いきなりなに?どうした?


 突然のタメ口とよくわからない発言に、僕は驚く。だがテオドールは気にせず、口元に手をやり考え込みだした。


 早口でブツブツと呟く声が、焚き火に音に混ざる。


 「ふむ・・・、各地の事件ですか。北は、2年前からなので最近では無いですね。ウェス大陸もずっと前からです。となれば、イース大陸の・・・。あれなら直近も直近ですね」


 答えに辿り着いたのか、口を閉じたテオドールが顔を上げた。


 「カルヴァースで起きていたアレですか?」


 場所だけは明確にし、他は濁してテオドールが確認してきた。おそらくだが、彼が場所しか言わなかったのは、間違っていた場合情報漏洩になってしまうからだろう。


 答えを擦り合わせるため、メイが返す。


 「日付は?」


 「10月31日」


 「何が起こった?」


 「無差別爆破」


 「目的は?」


 「町の壊滅」


 テオドールの答えに、メイがニヤリと笑う。


 「最後の質問。・・・首謀者は?」


 擦り合わせはほぼ終わっているが、メイは誰がやったのかを聞いた。


 「ラグナロクの魔人」


 テオドールは即座に答えた。


 どうやらカルヴァースでの出来事について、ギルドから詳しく聞いていたらしい。


 メイが「Aランクなら」と言っていたが、Aランクの冒険者には、ギルドがその辺の事を伝えているのだろう。何かあった時の戦力とかが理由だろうか?


 「うん。詳しく聞いてるみたいだね。その事件を解決したのが私達でね、その報酬で武器を貰ったんだよ」


 テオドールが事件について知っているとわかったため、メイが何でもない事のように武器の入手経緯を口にした。


 テオドール達の動きがピタリと止まる。だがテオドールだけはすぐに元に戻り、納得したような表情を浮かべた。


 「そういう事ですか。色々と腑に落ちましたよ」


 気になっていた事の理由がわかり、少しだけ清々しい表情に変わる。


 「ギルドからは、ラグナロクの魔人4名がカルヴァースの町で暗躍。伯爵やその部下を洗脳し、祭りを利用して大規模爆破を起こそうとした。だがその場に居合わせ、事件に巻き込まれた冒険者4名の活躍により、事件は無事解決した。と伺っていました。この冒険者4名というのは、あなた方だったのですね」


 ゆっくりとテオドールが僕達一人一人へ視線を向ける。


 どうやら事件についてしっかりと聞いていたようだ。ちょっと恥ずかしい。


 「あー、まぁそうですね」


 何と答えたらいいかわからず、情けない感じになった。


 そこからは、僕達4人で何故事件に関わることになったのかについて語った。


 町に着いて数日後、爆発が起きてルチルと会い、匿うことにした事。冤罪を晴らす為、事件について調べた結果、入場券が爆弾だった事。サージェスという魔人が現れ、戦闘になった事。祭り開催中に領主館へ潜入し、魔人との戦った事。そして伯爵を救出し、無事に解決した事。


 数十分かけ、4人で補足し合いながらカルヴァースで起きた事件の内容を語り終えた。


 「・・・そういう事だったんですね。正直、思っていた以上の内容でした」


 テオドールは、真剣な顔でそう口にした。彼の仲間達も、テオドールの言葉に頷く。


 まぁ大変だったな。味方が少ない上にタイムリミットまであったし。魔人は強かったし。


 およそ1ヶ月ちょっと前の出来事を思い出しながら、膝の上に乗るルーチェの背中を撫でる。


 あ、そうだった。


 「ルーチェと出会ったのもその時ですね。魔人に連れ去られてきたのか、領主館の地下独房の中で隠れていたのを僕が見つけました」


 「にゃうん」


 背中を撫でられてご満悦のルーチェが「そうだったね」とでも言うように鳴く。かなり眠いだろうに、僕達に付き合って頑張ってくれている。寝てもいいんだよ。


 「なるほど。森で出会ったのだろうと思ってましたが、まさかの町中とは。変わった出会い方ですね」


 「そうですね。しかもルーチェから強制的に契約してきましたからね。凄く驚きましたよ」


 「にゃうん?」


 僕の言葉に顔を上げたルーチェは、「え?何ですか?」ととぼけたような声を出した。


 「お前・・・、忘れたとは言わせないぞ」


 「にゃにゃん」


 ジロリと睨むと「覚えてません」とでも言うように目を逸らされた。こんにゃろ。


 「ははは。仲が良いんですね」


 「まぁ、悪くはないですね。仲間で、家族ですから」


 「にゃんにゃん」


 笑うテオドールの言葉に正直な気持ちを返すと、ルーチェが嬉しそうな声を上げた。


 僕は、白い背中にそっと手をやり、優しく撫でる。余程機嫌が良いのか、尻尾がゆらゆらと揺れ始めた。


 そうして少しの間まったりとした時間が流れたあと、骸の集の魔法使いであるエルンが、ルチルへと話しかけた。

 

 「ルチルは、いつパーティーに入ったんですカ?事件が解決した後ですカ?」

また明後日。

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