020 買い物に出る
「それじゃあ、一度部屋に行くよ。」
「はーい。」
そう言って鍵を持ち、階段を登って三階に上がる。
3階に上がると扉が3つあった。
扉には部屋番号が書かれたプレートが貼ってある。
「303は・・・。一番奥か。」
『まずはちょっと休憩だね。その後に街に出ようか。」
(なんか見に行くのか?)
部屋に向かいながらメイに聞いてみる。
休んだら街に出るつもりだったが、何か予定でもあったかな?と考える。
鍵を指して回し、扉を開くと、そこはベットと机、椅子だけがある狭い部屋だった。
だが値段を思えば十分過ぎるだろう。
夕食もついているし、ましてや安くもしてもらってもいるのだ。
「うん。いい部屋だ。落ち着く。」
『だね。広いと逆に落ち着かないしね。それと、街に出るのは買わないといけないものがあるからだよ。』
荷物を床に下ろし、マントを椅子にかけてベットに座る。
「買わないといけないもの?」
そんなのあったのか。言っといてくれ。
部屋の中だが一応声を落としてメイと話す。
『うん。マジックバッグだよ。』
「まじっくばっぐ?」
なんだいそれ?初耳だよ?
『簡単に言えば中が空間拡張されていて、見た目以上に物が入る鞄だよ。』
「なに!?そんな便利な物があるのか!?あ、やべっ・・・。」
あまりの驚きに声が大きくなってしまった。
だがそれも仕方ないだろう。
そんな夢のような鞄があるとは思わなかったのだから。
「でも、もう残り1000トリアしか無いけど・・・。買えるのか?」
そこが重要だ。
そんなにいい物が元の宿代の3分の1で買えるとは到底思えない。
『腰に着ける小さいのだったらたぶん1000トリアで買えるよ。とりあえずは買いに行ってみようよ。お店に行って実物を見ながら説明してあげるからさ。』
メイがいうには買えるらしい。
それと何やら説明することもあるようだ。
なら行って実物を見た方が早いだろう。
「なら見に行くか。売ってる場所はリーネルに聞けばわかるだろうし。」
『すぐ行くの?休まないの?』
「ささっと行って戻ってきてから休めばいいんじゃないか?それにこのままだと気になって休めないし。」
そう言ってベッドから立ち上がり、マントを着けて荷物を持つとすぐに部屋を出る。
部屋に鍵をかけると1階に降りる、受付にはまだリーネルがいた。
「なぁリーネル。マジックバッグを売ってる店って知らないか?」
鍵を受付に預けながら聞いてみる。
「マジックバッグ?防具屋にあるわよ。近くの店だとここから大通りに出て北に向かって、3本目を右に曲がって真っ直ぐ行くとあるわよ。ヴァイン防具屋って名前ね。」
リーネルは鍵を受け取り棚にしまいながら教えてくれた。
「ありがとう。あともう1個。今日って何年の何月何日?」
街に来る道中、メイにどこかで確認しといてと言われていたのに忘れていた。
それに僕も気になっていた。
「え?今日?今日は改暦2000年の9月7日だよ。」
不思議そうにしながらも教えてくれる。
下手な事を聞かれる前に行ってしまおう。
「ありがとう。それじゃあいってきます。」
「んー?いってらしゃーい。」
リーネルの声を背に受け夕月亭を出た。
『ナインが私の所にやってきたのが改暦1500年くらいだったから、やっぱり500年くらい経ってたね。』
夕月亭を出たところでメイにそう言われた。
(そうか・・・。これで僕は500年前の人だと確定したわけだ。)
言いながら考えてしまう。
僕を知っている人はもういないということを。
記憶は無いけど、ちょっとだけ寂しいな・・・。
『これからだよ。それに私はずっと一緒だからね。』
言葉にしてないのに返答しないでほしいなぁ。
だけどそれは少しだけ嬉しかった。
『わかってるよ。ありがとう。』
「あったあった。」
『近かったね。』
それから気分を切り替えて街を進んでいくと防具屋にはすぐ到着した。
入り口の横にはヴァイン防具屋と荒っぽく書いてある。
さっそく扉を開けて中に入る。
「おおー。色々置いてある。」
金属鎧に革鎧。金属兜と革の帽子。脛当て、膝当て、脛当てなど。
店の中には各種防具が置いてあった。
『ほら、左側にマジックバッグあったよ。』
そう言われて店舗内の左側を見る。
壁際に並べられたマジックバッグは色々な種類があった。
リュックタイプやショルダーバッグタイプもある。
(腰に着ける小さいのってこれか?)
また明日。