208 骸面のテオドール
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テオドール率いる骸の集スカルスクアッドが僕達の側までやってきた。
パーティー全員が全体的に黒っぽい格好をしており、各所にドクロがあしらわれた見た目は、いるだけで威圧感がある。一般人は怖がりそうだ。
テオドールは、まずはモッサリヤン商会長に挨拶をする。
「おはようございます商会長。遅れてしまいました?」
ドクロ面を着けたその見た目とは裏腹に、とても優しげで穏やかな印象の声がテオドールから響く。完全に見た目詐欺だ。
「いえ、遅れておりませんよ。おはようございます。彼らは、早めに来られただけなようです」
「ああ、そうでしたか。時間を間違えてしまったのかと少しだけドキドキしました」
胸に手を当て、ホッとしたといった様子を見せるテオドール氏。彼だけではなく、後ろにいるパーティーメンバーもどこか安堵した様子を見せていた。
どうやらパーティーメンバー全員が、テオドール氏と同じような穏やかタイプな人のようだ。見た目詐欺は、テオドール氏だけではないらしい。ドクロ好きなだけか?
「はじめまして。骸の集のリーダーをしております、Aランク冒険者のテオドール・レイカーです。今日から7日間、よろしくお願いします」
商会長から僕達へ向き直ったテオドールは、物凄く丁寧な仕草と言葉遣いで挨拶をしてきた。
・・・あ、しまった。ランクが上の先輩に先に挨拶させてしまった。
「はじめまして。自由なる庭園のリーダーをしております、Cランクのグレンです。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、こちらこそよろしくお願いします」
グレンもしまったと思ったのか、若干慌てながらも返した。
うーん、テオドール氏。凄く良い人だな。ルチルが見た目以外は、かなりの常識人と言ってたのが良くわかった。
そうしてグレンからの挨拶を受けたテオドールは、僕達一人一人に目線を移す。
「おや?ルチルミナさんではないですか。お久しぶりですね」
ルチルに気付いたテオドールが少しだけ驚きつつも嬉しそうに声をかけた。
そういえばルチルは、何度か話したことがあるって言ってたな。
「お久しぶりですテオドールさん。まさか覚えてらっしゃるとは思いませんでした」
数度話した程度の自分を覚えていた事に、ルチルは僅かに驚きの表情を浮かべた。
「ソロの魔法使いというのは、中々に珍しいですからね。それにしても、パーティーを組まれたんですね」
「はい。イース大陸に行った際にご縁がありまして」
僕達とパーティーを組んだことを、ルチルが嬉しそうに語る。
その様子が珍しかったのか、テオドールは再度驚くように少しだけ目を見開く。
「そうでしたか。よかったですね」
だがすぐに変わり、嬉しそうな表情を浮かべるとそう口にした。
「ああ、すみません商会長、失礼しました」
商会長そっちのけで話しをしてしまっていた事に、テオドールが申し訳なさそうにする。
「お知り合いとの再会だったのでしょう。構いませんよ。それに、まだまだ時間はありますので」
好々爺のような表情を浮かべた商会長は、気にするなと答える。
予定されている集合時間まで、まだ30分以上もあった。まだまだ時間はある。だが放置していたのは確かだ。
「ありがとうございます。それでは今回の護衛について、最終確認も含めての打ち合わせをお願いします」
テオドールは、申し訳なさそうな表情から真面目な表情へと変え、打ち合わせを願う。
「わかりました。それではあちらの馬車の方まで行きましょうか」
「かしこまりました。あっ、とすみません。自由なる庭園の皆さんは、出発の30分前まで待機でお願いします」
「了解しました」
「どうしても離れる場合は、商会員の方に一声かけて下さい。もし時間になっても戻ってなかった場合、置いていかれますので気をつけて下さいね。それではまた」
そう言って僕達へ指示と注意を口にしたテオドールは、パーティーメンバーと共に先を行く商会長を追いかけて行った。
去っていくAランクの後ろ姿を、僕達は無言で見送る。
対応は全てグレンがしてくれたが、正直ドキドキした。優しげな感じで凄く良い人な雰囲気だった。だが見た目が怖い。何だあのドクロ面。
ナインは、頭の中でテオドールの着けていたドクロ面を思い出す。
凄く邪悪そうな真っ黒なドクロ面。しかも紫色で模様まで入ってる。そんなわけないのだが、紫色が毒っぽく見えた。
パーティーメンバーも濃い。何で黒いんだ。しかも絶対ドクロ付いてるし。
テオドールの後ろに待機していた、パーティーメンバーの姿を思い出し、見た目的にテオドールに負けず劣らずだと感じた。
装備や服が黒い。肩とか杖先にドクロ。なのに見える表情は穏やか。ギャップが凄いよ。
内面で見れば、骸面氏が一番常識人だと聞いていた。確かに常識人、というか普通な感じだった。
だからこそ印象の衝撃が凄かった。
「・・・これがAランクか」
想像を超えてくる存在達。それがAランクだと、ナインはしみじみ実感した。
また明後日。