204 個人とパーティー
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二つ名持ちについて話していたナイン達は、宿に帰ってきてもまだ話題が変わってはいなかった。
「Aランクの二つ名持ちはわかったけど、Bランクは、どんな感じなんだ?」
次はBランク冒険者の二つ名持ちだ。ルチルは、数人だと言っていたけど知ってるのかな?
各々が部屋の中で装備を外す中、僕はルチルに聞く。
「うーん、Bランクの方については、あまり知らないんです。二つ名を持ってても、Aランクほど強くないですからね」
「だろうな。Bランクっつうのは、それなりに数がいるからな」
革鎧を外してマジックバッグにしまっていたグレンが教えてくれる。
一般的に活躍する冒険者のメイン層は、BとCランクだ。下位ランクを抜いて見た場合、Cが6割、Bが3.5割、Aは0.5割くらいらしい。
とはいえ、これはあくまでも大体の目安だ。Aが1割いるところもあれば、Bが5割を占めるところもある。
では、その割合の中で二つ名を持つようなBランクはどれくらいかと言うと、1割前後らしい。
「本当に少ないな。そりゃ知らなくても仕方ないな」
話を聞いて納得する。だが道中で話した時、Bランクの二つ名持ちは、大概クセが強いと言ってなかったかな?クセが強いのに記憶に残らないのか?
その辺を聞いてみる。
「さっかも言ったように二つ名持ちのBランクの人は少ないですからね。Aランクの方より見かける事が少ないんです。だからあまり知らなくて」
なるほど。見かけないから周りの話題にも上がらない、という事なのだろう。
「私が知ってるBランクの方は、個人2人とパーティーが1つですね」
ローブと杖をマジックバッグにしまったルチルは、ソファーに座るとBランクについて話し始めた。
「個人?パーティー?」
どういう事?
装備を外した僕は、ルーチェを膝に乗せメイと一緒に2人がけのソファーに座る。
「個人とは違ってパーティーに付けられた二つ名です。あまりいないんですけどね」
普通は個人です。とルチルは続けた。
だろうな。パーティーで付けられてるって何か不思議な感じがするし。そんなに特徴的なのかな?
はて、どんな感じなんだろう?と勝手に想像していると、ルチルが個人の方の説明を始めた。
「個人の方だと1人目は、爆裂娘さんですね。天才爆弾職人の女の子です」
え?爆弾?
「そんな子がいるの?」
メイが少し驚きながらルチルに聞く。
「はい。15歳くらいの女の子ですね。何度か見た事があります。独自の作製法を用いて凄い爆弾を沢山作ってますね」
なんだそりゃ。ん?その子がBランク冒険者なの?戦うの?
「それだけ聞くと、爆裂娘って二つ名は合ってないような気がするんだけど・・・」
メイの言葉に僕も頷く。
今のを聞いた感じだと、天才職人って感じだけだ。
「あー・・・、由来は、自身の作った爆弾を楽しそうに笑って投げまくるから、です」
「ああ、そう」
爆裂娘だわ。周りにいたら巻き添えくらいそうだ。
その後も爆裂娘についての話が続く。
なんでもこの爆裂娘、戦闘力で見ればAランク下位くらいはあるらしい。だが、爆弾によるやらかしがかなり多いため、未だにBランクなのだとか。
ちなみにランクが上がらない事に本人は、納得してるらしい。
してるんだ。自重しようよ。
「でもこの方、やらかしは多いですが国への貢献はかなり高いんですよ。鉱山用やトンネル工事用の爆弾なんかを格安で大量に、しかもとても早く納品されるんです。だからか、国から準男爵位を賜ってたりしてるんですよ」
「は?マジか?」
貴族と聞いてグレンがびっくりしている。僕もメイもびっくりだ。
まぁ内容だけ聞いたら確かに凄い。坑道内の岩盤とか埋まった鉱山の復活、それから国家事業だろうトンネル工事の重要な部分を担当している。貢献はかなりのものだと僕も思う。やらかし以上に貢献してるという事か。
「凄いなぁ。まぁその分変わってるけど」
爆裂娘だもんな。流石Bランクで二つ名が付けられるだけはある。
「そうですね。でも次の人も変わってますよ」
ちょっとだけ楽しそうにしながらルチルが話す。
うん、何となくわかってたよ。つかクセが強いって言ってたし。
「2人目の方は、天駆と呼ばれてる男性です。空中跳躍が進化した天駆スキル、装備、CT減少スキルなどを使ってとにかく空中を駆け回ってる人ですね」
二つ名の由来も天駆スキルからです。とルチルは付け加えた。
空中を駆け回る人か。今のところ変な感じはしないけど。やっぱり変わった人なのかな?
それにしても空中跳躍が進化したスキルか。僕外しちゃったんだよなぁ。付けてみようかな。でもスキルの枠が空いてないなぁ・・・。あ、魔力統制スキルになれば1枠空くか。でもなぁ・・・。
話をほったらかして1人でうんうん唸るナインを放置して、天駆についての説明が続く。
「この方、強いことは強いんですが、空中を跳び回る事が好き過ぎて、戦闘でミスする事が多いんだそうです。だからAには上がれないって聞いた事があります」
考え込んでいた意識が、聞こえてきた内容に向く。
「ん?空中跳躍マニアみたいな感じって事?」
「そうです」
なるほど、面倒臭そうな人だ。正直共闘とかには向かない人だな。
「一緒に戦いたくねぇな。流れを乱されそうだ」
グレンも同じようだ。僕もそう思う。
「私もやだなぁ。間違ってマジックソード当てそう」
メイが嫌そうにボソリと呟く。やめてやれ。天駆さん死んじゃうから。
「ここまでが、私の知っている個人のBランク冒険者の方ですね。パーティーは、先ほども言った通り、二つ名持ちは1つしか知らないです」
爆裂娘に天駆。ルチルが知るBランクの個人だと、この2人のみ。まだ他にも数人いるらしいが、そっちはいずれ知れる機会もあるだろう。
さて、パーティーはどんなのだろう。
「青の戦線って二つ名を持つパーティーですね。正式なパーティー名は、水竜騎士団です。近接系の男女6人で組まれてます」
「おお、なんかカッコいい」
青の戦線に水竜騎士団か、いいじゃんいいじゃん。と思ったが
(あれ?Bランクの二つ名持ちって、クセがかなり強いんじゃなかったか?)
まさかこの人達も?
「あー、えーと、カッコいいかどうかは、人によりますね」
ルチルが微妙な表情を浮かべている。
あぁやっぱり。
「この人達、凄い青いんです。本当全員」
なにそれ?
「もしかして、青いから青の戦線なのか?」
「そうです」
「ああ、そう・・・」
なんかカッコよく思えなくなってきた。
「水竜騎士団は、水竜が大好きな6人組のパーティーですね。リーダーの男性はBランクで、他はCランクだったはずです。あとは、リーダーだけ水竜装備ですね」
他の5人は、Cランクのアクアリザード装備です。とルチルが付け加える。
リーダーが水竜装備というのは、何となくらしいと思った。だが仲間は、アクアリザードなのか?トカゲだぞ?いいのか?
「はぐれ水竜なんてまず現れないですからね。仕方ないと思いますよ。それに現れても強いですから、大抵は負けちゃいますよ」
「竜だからねぇ。ましてや、はぐれなんて気性の荒いのばかりだからかなり暴れるだろうね」
メイがはぐれ竜について語る。
通常、竜は神の眷属のため、竜から人を襲ったりはしない。だが、まれにその枠組みから外れる者が現れる。それがはぐれ竜だ。はぐれ竜は神の眷属ではなくなるため、討伐しても問題無くなる。むしろ討伐が推奨されているらしい。放っておくと危ないからだとか。
「なるほど、レア装備ってことか」
そう簡単には手に入らないと。まぁ他のメンバーは、Cランクだ。竜との戦闘は無謀だろう。
「以上が私の知っている二つ名持ちですね」
そう言ってルチルがテーブルの上のお茶を飲む。ギルドからずっと喋ってたからな。喉も乾く。
「ありがとう。二つ名持ちは、強い上に中々に濃い。っていうのがよくわかったよ」
それに面白かった。
「そうだな。だが俺は、Bランクで二つ名は付けられたくねぇな」
「わかる」
僕も嫌だ。なんか、『コイツはクセが強いぞ!』って感じがして、ちょっと恥ずかしいから。
「私も嫌だなぁ」
「私もです」
女性陣2人も嫌なようだ。たぶん僕と同じ理由だろう。
でもなぁ・・・。
「・・・でも僕達って、どっちかと言うと付けられそうなタイプじゃない?」
そんな感じがするんだよ。嫌な予感だけど。
「「「・・・」」」
この僕の言葉に、3人は一言も発さなかった。おい、目を逸らすな。
夜中に食べるチョコパンは、背徳的です。
うまーい。
また明後日。