198 手間が省ける
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「おい、バッグと装備、女を置いていけ」
目の前の小汚い男達の内、1番体格と装備の良さそうな男が、曲刀を片手にドスの聞いた声で命令してきた。
初めてマジックテントを使った日から2日後。盗賊の目撃地点までやってきたナイン達は、「さあ、盗賊を探そう」と意気込み、捜索について相談しようとした。だが、その必要は無かった。
何故かって?向こうからやってきたからだよ。
「何してんだ?早くしろ!」
「この数が見えねえのか!」
「ぶっ殺すぞ!」
盗賊達が4人ずつ計8人が、街道上にいる僕達の前と後ろを塞ぐように立ち、騒ぎ立てる。
「うるさ・・・」
薄汚れた男達の喚く声に、僕は不快感を露わにする。あ、僕だけじゃなかったわ。
「ふしゃー!!」
「もう斬ろうぜ」
「うわ、こっちまで唾飛んできた」
「汚いですぅ・・・」
散々な内容だ。まぁ汚い上にうるさいので仕方ないけど。
とはいえ、向こうから現れてくれたのは、手間が省けて助かる。
僕達が捜索の相談を始めようとしたタイミングで、気配を抑えて近づいてくる者達がいる事に気付いた。
『あれ?これ?来たんじゃないの?』
『あー、本当だ。待ってみようか』
となり、足を止めて気配の主を待ってみると、盗賊だった訳だ。
僕達の格好は明らかに冒険者なのだが、人数が少ない上に弱いとでも思われたのだろう。まさか堂々と姿を現すとは思わなかった。
ギャーギャーと喚く盗賊を尻目に、僕はグレンへ話しかける。
「どういう分担にする?」
「俺が前4人で、ナインが後ろ4人でいいんじゃねぇか?ルチルとメイとルーチェは、フォローでいいだろ」
グレンがあっさりと決める。特に異論は無いのでコクリと頷き、了承する。
「あのリーダーっぽいのは残してね。無理だったら他のでもいいけど、その場合は何人か残してよ。アジトの場所聞かなきゃいけないから」
「そうですね。一応、規模が6人から10人ですから、もしかしたらアジトに後2人くらいいるかもしれませんしね」
メイの要請とルチルの話を聞き、僕はなるほどと納得した。
依頼には6人から10人と書かれていたが、周囲には8人しかいない。もしかしたらこれで全部なのかもしれないが、その辺を確認しないことには討伐完了とはならない。なので盗賊達を捕まえて、尋問しなければいけない。
それとアジトを聞くのは、残りの盗賊を討伐するためだけでは無い。アジトには、盗品等が集められている可能性が高いからだ。盗賊討伐をするのであれば、これらの回収を忘れてはダメだろう。
ちなみに、盗賊の所持品や盗品の所有権は、討伐者となる。一応持ち主が捜索願いを出していれば返還される事もあるが、その場合は、討伐者への謝礼が必要となる。ただし、この謝礼というのがかなり高いらしく、よっぽど大事な物でもなければ、捜索願いも返還もされないらしい。
「何をコソコソと話してやがる。いいから早く置いていけ」
痺れを切らしたのかリーダーっぽい男が右手に持つ曲刀をこちらに向ける。
おっと、放置している場合じゃないな。
「それじゃあ行くか」
「ああ、同時に行くぞ。俺がカウントする」
全員がほんの少しだけ重心を落とし、動き出す準備をする。それを確認したグレンは、小さな声でカウントを始めた。
「3、2、1、行け!」
グレンはリーダーっぽい男がいる前に、僕は後ろへと振り返り、4人の盗賊達へ向けて走り出す。
剣を抜き、4人へと近づいて行くと、後ろからメイとルチルの声がした。
「マジックソード」
「ウインドアロー」
牽制として魔法を使ったようだ。メイの放った4本のマジックソードが走る僕を追い越し、盗賊へと飛んでいく。ルチルが放ったウインドアローは、グレンの方へと行ったようだ。
ルーチェの声は聞こえなかった。下手に手を出すと邪魔になると思って見てるだけにしたのだろう。うむ、賢い子だ。
「ぐわぁ!?」
「ぎゃあ!!」
「ぐひぃ!?」
「ぬあぁっ!?」
飛んでいったマジックソードが盗賊達の太腿に1本ずつ突き刺さる。いきなりの攻撃にたまらず盗賊達が悲鳴を上げた。
(おー、これで逃げられらないな。さて何人残すか。4人全員は多いな。2人でいいか)
走る僕は、剣を左横に構えながら何人残すか決める。そうして足をやられ、回避が不可能な盗賊の1人に向けて、容赦無く剣を振るう。
「うわああああっ!!!」
シュパッという音の後、悲鳴を上げた盗賊の体が胴の辺りで2つに分かれ、地面に崩れ落ちる。
僕は、右に振った剣の勢い殺さずクルリとその場で体を反転させると、切り捨てた盗賊の左隣にいた奴に向けて、左上からの斬り下ろしを浴びせる。
「っ!!」
シュッ!
悲鳴の声すら上げられず、盗賊の男は右肩から左腰に向かって切り裂かれた。そして1秒後、ズシャリという音を立てて、男の上半身が斜めにずれ落ちる。
これで僕の分担は残り2人となった。さて、残りはどうやって無力化しようかと視線を向ける。
「ん?あ!」
向いた先に、盗賊2人の姿がなかった。どうやら足の傷を治癒魔法で治し、逃げたようだ。
「いた!」
盗賊達が現れた森の方へ視線を移すと、二手に分かれて逃げる盗賊の後ろ姿が見えた。
僕は、剣を右手に持ったまま左手を腰の後ろに回し、魔導銃を抜く。
「逃がさんよ」
魔導銃に魔力を込めながら、逃げる盗賊の背中に狙いを定める。そして即座にトリガーを引く。
バシュンッ!!!
「うおおっ!?」
銃口から圧縮された拳大の魔力弾が射出された。
5、6000ほどと、ちょっとだけ多く魔力を込めすぎたせいか、撃ち出した瞬間大きな音と共に腕へと強い衝撃が伝わる。
逃げていた盗賊が、大きな音に驚き後ろを振り返る。
「え?うわあああああッ!?」
撃ち出された魔力弾は、振り切った盗賊の左足に当たった。そしてガギュンッ!!という変な着弾音が鳴ると、盗賊の足が吹き飛んでいった。
「ぎゃあぁぁあああッ!!!」
「・・・え?」
自身がよく使うマジックショットよりちょっと強いくらいだと思っていたナインは、まさかの威力に言葉を失うと、左手の魔導銃に視線を向けた。
(え?マジで?こんなに強いの?嘘だろ?)
同じように5、6000ほど魔力を使ってマジックショットを撃っても、これほどにはならないだろう。おそらくだが、この魔導銃自体の魔力制御効果が凄いのだ。
「あ、やばい。もう1人忘れてた」
視線を戻し、逃げたもう1人に向けて魔導銃を構える。さっきは少しだけ魔力が多かったので、今回はしっかりと抑えて最低量の3000にする。
「えい」
気の抜けたような声を出し、トリガーを引く。
バシュッ!
先ほどよりも小さな音と衝撃が魔導銃から伝わる。
「うわぁあああ!ぎゃあ!」
真っ直ぐに飛んでいった魔力弾が、盗賊の背中に直撃した。もろに直撃した盗賊は、悲鳴を上げながらぶっ飛んでいくと、草原を削るようにして転がっていった。
「あ、やべ、最低でも威力高いわ。死んでんじゃないかな?」
自転車のライト、新しいの買わないとダメかもしれないです。
フルで充電しても、30分も持たずに電池切れになってしまいます。
まぁ流石に10年近く使えばそうなりますよね。
寧ろ、今までよくもったと言うべきかもです。
ありがとうライト。
懐中電灯代わりにもなってくれてありがとうライト。
また明後日。