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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
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191 二人で服屋へ

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


 翌日11月24日。朝食を終えたナインとメイは、二人でクリアマリンの町に出ていた。


 今日は、カルヴァースで約束していた通りデートである。


 横を歩くメイへと視線を向ける。


 「楽しみだね!」


 満面の笑みを浮かべ、ウキウキした様子だ。


 今日は二人だけであり、ルーチェいない。あの子は、グレンと一緒だ。なんでも今日は、一緒に屋台巡りと観光をするらしい。おかげで朝からルーチェのテンションが高かった。


 ルチルは、一人で魔道具店巡りをするらしい。二ヶ月程離れていたので、新しい物が入荷している可能性が高いからだとか。彼女も朝からテンションが高かった。


 「そうだな。まずは服屋だったか?」


 「うん!この先だよ!」


 そう言ってメイが通りの先を指差す。


 昨日のステータス確認後、予定通りメイの服を買いに行った。と言っても茶色のシャツにカーキ色のズボン。これが2着だ。シンプルな安い古着である。そして今彼女が着ている。正直あまり、というか全く可愛くない。


 まぁ服屋で新しいのを買ったらその場で着替える予定なので、この短時間だけだ。


 ちなみに下着も購入済みだ。これはルチルと一緒に買ったらしい。その時僕とグレンとルーチェは、近くのベンチで待機していた。しっかり選んできたのか、一時間くらい待たされた。


 「暑いねぇ」


 「だなぁ。防具着てたらもっと暑かっただろうな」


 日差しをチラリと見たナインは、普段着で来てよかったと胸を撫で下ろした。


 今日のナインは、白いシャツに濃い灰色をした七分丈のパンツという服装をしている。一応何かあった時のために帯剣はしている。


 これらの服を購入したのは、カルヴァースの事件解決後だ。町の外に出られなかった時に、観光ついでで買った。というか買わされたものだ。


 メイの装備となる、レッサーキマイラの防具作製依頼とナインのマジックバッグの強化は、昨日のうちにしてきている。防具の完成は5日後との事。


 マジックバッグ強化はその場ですぐ終わり、容量が40になった。Dランクの時は20だったので2倍だ。容量にかなり余裕が出来たので、凄く便利だ。


 「ほら!早く行こう!」


 「あ、おい!手引っ張るな!」


 ナインの手を握ると、メイは通りをずんずんと進んでいく。


 先ほどメイが通りを指差したが、服屋の場所はルチルから事前に確認している。昨日行ったところとはまた別の店だ。昨日のは安い古着のみの店で、今日行くのは古着と新品どちらもあるらしい。


 服屋まで5分ほどの道を進んでいると、通り沿いにある屋台に見覚えのある姿が見えた。


 「おっちゃん、焼き鳥3本くれ」


 「あいよ!」


 「みゃ!」


 「悪い、やっぱ4本だ」


 グレンとルーチェだ。どうやら仲良く楽しんでいるようだ。うん、スルーしておこう。







 見覚えのある1人と1匹をスルーしたナインとメイは、二階建の建物の前にいた。


 「シャインクロース、ここだね」


 「服屋にしてはデカいな」


 ルチルが教えてくれた服屋、シャインクロースだ。ここは、一階と二階の全てが店舗となっている。戦闘用と普段用のどちらも置いてある店との事だ。


 男性も来るからか、外観は派手さの無いシンプルな作りだ。


 メイに手を引かれながら、ナインは店内へと入る。するとすぐに大量の服が視界に入った。


 「うわぁ・・・、服ばっかりだ」


 店内の光景に、2人は圧倒される。


 棚やラックに壁、果ては天井に至るまで所狭しと服服服が陳列されていた。


 「と、とりあえず二階に行こう。戦闘用はそっちらしいから」


 「あ、ああ」


 先に戦闘用の服を選ぶのか、メイが右側にある階段へと視線向ける。


 今回は5着買う予定だと、メイからは事前に聞いている。防具と合わせる戦闘用が2着、町中や宿内で着る普段用が3着らしい。


 戦闘用少なくない?逆じゃないの?と思ったが、対して汚れないから2着で交互に着ればいいらしい。


 階段を登り、戦闘用や作業用の服が置いてある二階に到着する。


 二階店舗内を見回してみると、一階よりも服が少なかった。天井どころか壁にも服がないので、どこかスッキリとして見える。


 「二階は一階より少ないな」


 「まぁ一般的な服とは違うからね」


 「それもそうか。二階は冒険者とかがメインだもんな」


 冒険者以外で来るとなれば、クラフター系の職業の人くらいだろう。客としているのもそんな感じだ。


 店内にいる建築士っぽい人や、木工士っぽい人へと視線を向けながら、ナインは納得する。


 「さて、じゃあ見て回ろっか」


 そう言ってメイは、陳列されている服に近づくと手当たり次第に見始めた。


 ナインも棚に近づくと、目の前にある服を手に取る。


 「ほー、この地域特有か?サラッとしてるな」


 「通気性が高いんだね。その分ちょっと高いけど」


 「あ、本当だ」


 鎧下などもある戦闘用の服は、基本的に生地が少しだけ厚くしっかりとしたものだ。その分若干暑かったりする。


 対してこの地域で販売されている物は、通気性のある生地を使って作られており、触り心地も良い。だがその分高い。どのくらいかと言うと、カルヴァースで見た物の1.5倍か2倍だ。


 (高いなぁ。でもちょっと欲しいな)


 買う予定は無かったが、欲しくなってしまった。うーむ、どうしよう。


 手に持っていた服を戻し、ラックにかけられている黒いシャツを取る。さて値段は・・・。


 「げっ、2万トリア」


 あまりの高さにそっと元に戻す。ナインが普段着ている戦闘用の服は7000トリアだ。およそ3倍である。高過ぎる。せめてもう少し安いのはないだろうか?


 ちなみに7000トリアの服は、カルヴァースで買った物だ。前の服はグラベルにボロボロにされてしまったからな。


 安い服はないかと店内をキョロキョロ見回すナイン。その様子に気付いたのか、服選びをしていたメイが声をかけてきた。


 「どしたの?」


 「いや、ちょっと僕も買おうかなって思ったんだけど高くてさ。安いのを探してるとこ」


 「え?買うの?じゃ、じゃあ、お揃いにしよう!」


 えー、お揃い?恥ずかしいんだけど。


 メイがキラキラした目でこちらを見つめてくる。チャンスだと思われてしまったようだ。


 「あー、お揃いは、やめない?」


 「なんで?」


 「恥ずかしいじゃん?」


 「え?別に?」


 「・・・そう」


 あ、ダメかもしれない。多分どう言ってもお揃いにしようとしてくる。回避するには買わないという選択肢しか無いが、正直買わないは選べない。暑いんだよ。本当に。


 じゃあメイが選んだ後に彼女と別なのを選べばいいと思うかもしれないが、それは無意味だ。彼女と別の服を選んだとしても、彼女ならば態々選んだ服を戻して同じやつを持ってくる。それくらいやる。


 諦めるしかないらしい。


 「・・・まずメイが選びなよ。レッサーキマイラの防具と合わせるんだから、それに合ったのにしないと」


 レッサーキマイラの皮は、黒色をしているが、光の加減で微かに赤くも見える。目立つほどでもないが、合わせるならばその辺の色合いも気を付けなければいけないだろう。


 「そうだね!じゃあ何着か探してそこから選ぼうか!」


 「・・・うん」


 僕とメイのお揃いが決定した。まぁ僕と彼女では防具の形が違うからそこまでお揃いには見えないだろう。たぶん。


 ちなみに、戦闘用の服は防具が出来てから買いに来ればよかったんじゃない?と考えたが、言うことはなかった。


 言えば絶対に、もう一回服屋に来なければいけなくなるからな。流石にちょっとめんどい。


 メイがかけてある服の中からシャツを1着手に取ると、こちらへ振り向いた。


 「これどうかな?」


 持ったシャツを胸に当て、感想を求める。


 全体が白に近い灰色だ。そして所々に紺色で蔦のような模様が入っている。戦闘用にしては目立ちそうなシャツだった。隠密とかには向かないだろう。


 とはいえ、戦闘用の服な割にオシャレな感じだ。正直悪くない。


 「良いんじゃないかな?一回試着してみれば?」


 「そうだね」


 僕の言葉に、メイはシャツを持って試着室へと向かった。


 中へと入りカーテンを閉めると、ゴソゴソと音が聞こえてくる。そして1分もせずにシャッ!とカーテンが開かれた。


 「どう?似合うかな?」


 シャツを着たメイはその場でくるりと回ると、楽しそうに聞いてきた。


 「うん、似合うよ。サイズもぴったりみたいだな」


 ちゃんと自分に合ったサイズのものを選んでいたようで、丈や袖が長いという感じも無さそうだ。メイの髪が白いからか、白に近い灰色がより白っぽく見える。


 うん、よく似合ってる。僕が着たらどうなるだろう?似合うのかな?


 自分が着たら似合ってなくて変に見えたりしないよな。と少しだけ1人で不安に思っていると、メイが胸元に手をやりボソボソと喋り始めた。


 「サイズは・・・、む、胸のところが、ちょっとだけ苦しいかな・・・」


 どうやら聞かなくていい事だったようだ。


 見栄を張るな。

少しの間、投稿を2日に1回にさせていただきます。

申し訳ございません。


また明後日。

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