189 宿とBランク
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「これは?これならサイズ的にギリギリ大丈夫じゃない?」
ベッドの上に置かれた服の中から、ナインは少しだけダボついた薄茶色のズボンを手に取る。それを見たメイとルチルは、「うーん」と唸なると首を捻った。
あれから宿を何軒か回り、値段と設備が良さげな宿の部屋を取った。今回も四人で一部屋だ。
カルヴァースの宿と似た作りの部屋で、小キッチンが付いたリビングに、ベッドルームが二つある。宿泊料は一泊5万トリア。前回泊まったところよりも、1万トリア高くなった。とはいえ前回の宿とは違い、高くなった分この宿では朝夕の食事が付いている。
だが、この宿に決めた理由は、食事が付いてくるからではない。
何とこの宿、温泉があるのだ。
朝六時から夜十時の間ならいつでも利用でき、利用料金も宿泊料に含まれているため、追加でお金がかかることもない。
これはもうここで決まりだろう。と、受付で説明を聞いた瞬間にナイン達は即決したのだった。
現在、ナインとメイとルチルは、彼女達のベッドルームでメイの着替えを手伝っていた。
服選びなんてルチルに任せればいいし、着替えに手伝いはいらんだろう、と思ったのだが、メイにゴリ押された。面倒くさ・・・
ちなみに部屋割りをする際、メイが遠慮がちに「できればナインと同室がいい」と言いだした。だが僕とメイで一部屋使うと、グレンとルチルが同室になってしまう。流石にそれはダメだろうという事で、わかりやすく男女で分けた。その際、グレンが気を遣って「俺はソファーでもいいぞ」と言ってくれたが、僕が却下した。絶対疲れが残るからな。
「可愛くない」
ナインが持つズボンに、メイが文句を垂れる。
「自分で買ったんだろ」
「安かったんだもん」
「・・・そうですか」
何とも言えない表情を浮かべるナイン。
前に服を買った時は、あまりお金が無かった。故に、安いものから選ぶしかなかったのだろう。甲斐性が無くてすまぬ。
とはいえ、早く選んでくれなければ外に出られない。こうしている間にも、時間がどんどん減っていく。
「でもサイズが問題無いのはこれしかないだろ?いいからこれにしとけ。観光する時間無くなるぞ」
「むぅ、わかった」
渋々といった表情を浮かべたメイは、ズボンを受け取った。
「とりあえず、外に出たら今日明日の分だけでも買いましょうか。可愛いのは、明日のデートで買えばいいんですよ。ナインさんが選んでくれますよ」
成長した体に、まだ完全には慣れていないのか、ヨタヨタとしながらズボンを履くメイ。そんな彼女にルチルがフォローを入れる。僕が出汁にされてるが、服屋に行けばどうせそうなるのだろうとわかっているので、口は挟まない。
「そうだね!じゃ、じゃあ、下着も選ん「それは無しだ。自分で選べ」・・・はい」
流石にこれには口を挟んだ。メイの横ではルチルが苦笑いを浮かべている。勘弁してくれ。13歳くらいの少女の下着選びとか、拷問だろ。君、船でのトイレとかさっきのキスとか、ちょっとタガが外れてないか?
一瞬、兄妹だったら大丈夫なのか?とも考えたが、普通に大丈夫ではなかった。いや、いるだろうが、それはちょっと特殊だろう。
「うぐぐ・・・、いいじゃんか下着くらい」
「下着くらい・・・では無いと思いますよ」
ぶーぶー文句を垂れながらもズボンを履き終えたメイは、これまたダボっとした薄黄色のシャツを手に取り、ささっと着替える。
「うーん、やっぱり可愛くないなぁ」
「色が淡すぎるんですね。町に出たらもう少し濃い色のを買いましょうか」
「服屋も知ってるの?」
「はい。近くにありますよ」
どうやら宿を出て一番に向かうのは、服屋なようだ。
ナインとしては、先に防具屋に行ってマジックバッグの強化をしたいのだが、まぁその後でもいいかと思い直す。容量にはまだ余裕がある。いっぱいになりそうになったら、ルチルに頼めば大丈夫だろう。
一応マジックバッグ以外にも、レッサーキマイラを使ったメイの防具を作る予定があった。こちらも、作製依頼をするだけなので、そこまで時間はかからない。後にしても大丈夫なはずだ。
メイの着替えを終えたナイン達は、ベッドルームを出てリビングへと戻る。
「終わったのか?」
ソファーに座って休んでいたグレンが、声をかけてきた。
「とりあえずはね。この後服屋に行くらしいよ」
「明日じゃねぇのか?」
「今日明日の分だけだってさ」
チラリとメイの格好を見たグレンは「ああ、なるほど」と納得する。
「んじゃ行くか。服屋の後は防具屋でいいのか?」
立ち上がったグレンが、予定を確認してきた。
「それで大丈夫。その後は適当にぶらつく感じだね。あ、待った」
「あ?どうした?」
グレンの言葉に頷いていたナインは、急に待ったをかけた。何かあったか?とグレンが首を首を捻る。
「メイのステータス確認するの忘れてた」
「ああ、そういやそうだな」
宿に行ったら確認しようと思っていたのだが、すぐに着替えで連れて行かれたため、すっかり忘れていた。
正直、これも後でやればいい事なのだが、全員が気になっているので先に確認する事にしていた。
「メイ」
「はいはーい。ステータス」
後ろにいたメイに声をかけると、彼女はすぐにステータスを開いた。
シュンッ、と現れたステータス画面へ、ナインとメイが視線を向ける。
普通は他人のステータスを見ることは出来ないが、僕とメイの魂は、僕の中にある魔石の中に存在している。そして魂自体も繋がっている。その為、お互いのステータスが確認できるのだ。見れないグレンとルチルは、ソファーに座って待つようだった。
メイ・ウォーカー
Lv.60
HP:1280/1280
MP:100308/100308
AP:1220/1220
ジョブ:長剣士Lv.20
EXP:***/***
STR:130+15+15
VIT:106
DEX:109+13
AGI:117+14+15
MGI:128
SP:359
エクストラスキル
<念力Lv.20><***><***>
スキル
<長剣ⅡLv.10><双剣ⅡLv.10><投擲ⅡLv.30><魔力統制Lv.10><姿勢制御Lv.30><縮地Lv.10><鑑定ⅡLv.30><気配感知Lv.30><高速思考Lv.10><MP回復UPⅡLv.30>
「あ、制限が結構解除されてる」
表示されたステータスに、ナインがあまりの驚きに言葉を失っていると、隣に立つメイは、素直にステータスの制限解除に喜んでいた。
ふむふむ、と自身のステータスを確認するメイを横目に、ナインは改めて上から確認していった。
(レベル60はBランクだからか。確か51から70がBって言ってたな。ジョブは・・・、長剣士のレベル20か。ステータスが高いな。プラス表記は、長剣士のステータス上昇効果とアクセサリーの効果か。んでもってスキルなんだが・・・)
上から順に確認していったナインは、とある名称で視線を止めた。止めた箇所が、ナインが驚きで言葉を失った原因だった。
(というかこれ、なんだ?)
名称の意味がわからない訳ではない。どんな感じなのかがわからないのだ。なので、今もステータスの確認をしているメイに、素直に聞く事にした。
「なぁメイ。この<念力>っていうエクストラスキル。どんなスキル何だ?」
ふと気になり、家にあるブランケットの枚数を数えました。
6枚もありました。
2枚くらいで十分ですね。
また明日。