018 冒険者ギルド
「ようこそ。始原都市アルメガへ。」
僕はゆっくりと扉を潜る。
すると一気にガヤガヤと音が聞こえてきた。
「おー!」
広く長い通り、そして人と建物の多さに圧倒される。
それからキョロキョロとしながら街を眺めていると。
「ナイン。」
扉の前にいるガーデルに呼びかけられた。
「宿を探すならこの大通りを真っ直ぐ行って四本目の路地を左に曲がれ。そうしたらすぐに夕月亭って宿がある。」
そう言って右手を伸ばし、握手を求めて来たので僕も右手を伸ばす。
「気をつけてな。俺の紹介って言えばこれで泊まれる。余ったのは買い物にでも使え。」
ガーデルは握手をしながら一気に言うと手を離す。
僕の右手には何かが握らされていた。
「それじゃあまたな。」
ガーデルは手を軽く振ると詰所の中に戻って行った。
握らされた右手を開く。
銀色のコインが五枚あった。
「ガーデル・・・。」
『良い人だったね。』
確かに良い人だった。
良い人過ぎて損をしそうな人だ。
「そうだな。この恩は必ず返さなきゃな。」
『だね。』
再度心に刻み込み、ガーデルが消えた扉にしっかりと頭を下げる。
「ありがとうございます。」
お礼が終わると大通りへ向き直り、歩を進め始めた。
大通りを歩く。
沢山の人やら馬車やらが前から後ろからやってくる。
それを避けて進みながら周りを見回す。
(そりゃ人間だけじゃないよな。)
街を歩く人は人間だけじゃなかった。
見える範囲だけでも獣人、ドワーフ、エルフがいた。
『街だからね。色々な種族の人がいるよ。』
知識にはあったが実際に見たり聞いたりしなければ頭に出てこない。
(えーと、他には竜人族だったか。)
『そうだよ。それがヒト種。一般的に"人"と呼ばれる種族だよ。』
他にいる人っぽいのは精霊族とかになるらしい。
まぁこの辺は今必要な知識ではないだろう。
そんなことより。
(話題振っといてあれだけど、冒険者ギルドはどこだろう?)
話を変えて申し訳ないが、できれば見てみたい。
『ん?ギルド?数百年経ってるけど、場所は変わってないと思うから宿より先に着くよ。』
なんで場所が変わらないのかはわからないがすぐ着くらしい。
(そうか。先に着くなら行って登録しておこう。)
登録したらどんな事をしようか考えながら大通りを真っ直ぐ進む。
途中に面白そうな店や物があって目移りするが、後でゆっくり見に行こうと言い聞かせる。
そうして二本目の路地を過ぎたところで、他より大きな建物が左手側に現れた。
入り口の上には大きく冒険者ギルドと書かれている。
その下には少し小さくアルメガ南支部と書かれていた。
(これか。よしさっそく入ってみよう。)
大通りを進んでいた足を止めず、そのまま扉を開けて中に入る。
(おー。見たことないけどそれっぽい。)
『なにそれ?どういうこと?』
そんなよくわからない感想を漏らし、メイに呆れられながらギルド内を見回す。
お昼過ぎだからか人は全然いなかった。
入り口から見て右側に受付嬢のいるカウンターが有り、左側には酒場か食堂のようになっていた。
たぶん登録はカウンターだろう。
まぁ行って聞けばわかるか。
気づけば入り口前で止まっていた足を動かし、カウンターに向かう。
カウンターは五箇所に分かれており、その全てに受付嬢がいた。
とりあえずどうすればいいかわからなかったので、一番手前のカウンターで聞くことにした。
「すいません。冒険者登録はここで出来ますか?」
丁寧に聞いてみる。
第一印象は大事だと知識が言っていたからだ。
何度か思ったけどメイのくれた最低限の知識って変な偏りかたしてないかな?
今度聞いてみよう。
「はい、大丈夫ですよ。では、こちらの用紙に記入をお願いします。」
書き忘れが多くて困ります。
また明日。