188 メイ13歳(仮)
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光が収まり目を開けると、12、3歳くらいに成長したメイが目を閉じた状態で佇んでいた。
肩までだった髪は背中まで伸び、身長も15センチくらいは高くなっている。だがそのせいか服の丈が若干だが短くなり、手首や脛が出ていた。
佇むメイが、ゆっくりと目を開ける。
「ふむ・・・、ふむふむ・・・」
目を開けた彼女は、視線を自身の体へと向ける。そして視線は腕や足へと移り、次に手足を動かし始めた。
どうやら成長した体の具合を確かめているようだ。
船の中で言っていたのだが、なんでも体の大きさが変わると、最初の方は少しだけ動かし難いらしい。実は、初めての肉体作製の時も若干動きづらく、慣れるのに大変だったのだとか。手足が短いからじゃないか?と言ったら拳が飛んできた。
「うん・・・、うんうん・・・」
その場で足踏みをし、手をぐっぱぐっぱと動かすメイ。確認が終わったのかこくりと一つ頷くと、笑顔で浮かべて顔を上げた。
「うん、問題無いね。おまたせ」
体は問題無かったようだ。大丈夫だとは思っていたが、ちょっとだけ不安に感じていたナインは、内心でホッと胸を撫で下ろす。
「お疲れ様。少し大きくなったな」
メイへと近づきながら、ナインは声をかける。目の前までくると、その成長具合がよくわかった。
前までは身長が120センチくらいだったので、彼女の頭は僕の胸よりも下だった。だが今の彼女の頭は僕の胸辺りにある。やはり15センチくらいは伸びていそうだ。
「そうだね。お!目線が近くなった!背伸びすればキスできそうだね!」
「もう少し大人にならないとダメだな」
ニコニコと嬉しそうな顔でほざいたメイを、バッサリと切り捨てる。ダメに決まってるだろ。まだまだ子供の姿なんだから、僕が変態に見られるわ。
とはいえ、大人にならないとダメと言うあたり、口には出していないがナイン自身は彼女とキスするのが別に嫌という訳ではなかったりする。しない理由は世間的なものだ。ただ、発言自体はほとんど無意識だったため、言った本人は漏れでた本心に気づいていない。
ちなみに、言われた方はしっかりと気づいていた。
「仕方ないねぇ。次の肉体更新まで我慢するよ」
そう言ってメイは、ふへへとニヤけそうになる顔を必死で隠す。
「お疲れ様です!凄かったです!」
離れて見ていたルチルが、興奮気味にやってきた。
「そうでしょそうでしょ!」
ちょっとだけ成長した胸を張り、ドヤ顔を浮かべて答えるメイ。その姿をナインは呆れたような表情で見る。ルチルは興奮した勢いのまま肉体更新の感想を喋り続ける。
「物凄い量の魔力が凝縮していってました!その後の光も凄かったです!まだ若干チカチカしてます!」
「100万くらいは使って肉体にしてるからね。光は、魔力を生体に変化させた時にどうしても出ちゃうんだよ。ごめんね」
あれ100万も魔力持っていってたのか、とナインは内心で驚いた。三十分の一程とはいえ、そりゃ引き剥がされるような感覚がするはずである。あれ気持ち悪いんだよなぁ・・・。
「おい、終わったんなら移動するぞ。誰かこっちに来た」
メイとルチルが肉体更新について話していると、グレンが背を向けたまま声をかけてきた。あ、許可してないからこっち向けないのか。終わったのわかってるはずなのに律儀だなぁ。
「光に気づいた感じか?」
「いや、気配からしてそんな感じじゃねえな。ただこっちに歩いてきてるだけっぽいぞ」
「そうか、なら移動しよう。あ、もうこっち向いていいぞ」
どうやら偶々こっちに向かってきてるだけらしく、怪しまれた訳では無いようだった。
ナインの許可を受け、グレンが振り返る。チラッとだけメイへと視線を向けたが、特に何かを言うことはなかった。まぁ大きくなっただけだからな。あ、ステータスも上がったか。
視線をナインへと向けたグレンが、倉庫街奥である西側を指差す。
「こっちから来てっから、反対側から出んぞ」
「わかった。メイ、ルチル、行くぞ」
「はーい」
「わかりました」
移動するため、ナインは話を続ける女性二人に声をかけた。返事をしたメイは、急いで足元に落ちていたマントを拾い上げると、すぐに羽織ってフードを被った。倉庫街の入り口は港に直結しているので、魔導高速船の船員と遭遇する可能性があるからだ。
全員が移動可能な状態になると、反対側にある倉庫街入り口へと向けて、静かに移動を開始した。その際、一応隠蔽スキルを使用しておく。念の為だ。
三十分後、ナイン達は倉庫街の入り口に戻ってきた。こそこそと移動してきたため、来た時より倍の時間がかかってしまった。
みんなへと振り返ったナインは、少しだけ疲れた表情を浮かべながら、これからどうするのかを口にした。
「よし、それじゃあとりあえず宿を取ろう」
早く町を見て回りたいところだが、それも拠点を確保してからの方がいいだろう。
まず、メイに着替えをさせなければいけない。今のパツパツで丈の合ってない状態では、流石におかしいからな。ステータスの確認もしたいところだが、それだって歩きながらするもんじゃない。となれば、やはり気が抜けてゆっくりとできる場所は必要だ。
ナインの提案を受け、ルチルが口を開く。
「そうですね。それじゃあ宿が多い地区まで案内しますね」
「頼んだ」
この町の出身では無いが、町の地理をよく知っているルチルが案内を買ってでてくれた。クリアマリンには、カルヴァース行きの船に乗るために来た時だけで無く、依頼なんかで何度か来ているらしい。
「こっちです」と言って先導するルチルに、ナイン達は大人しく付いて行く。
そうして歩き始めてから少しして、グレンが宿のランクはどうするのかと、聞いてきた。
(高い宿か安い宿か・・・。ふむ、それは考えてなかったな)
とりあえず宿に。としか考えていなかった上に、どんな宿があるかも知らない。それ故に、その辺まで考えが及んではいなかった。
とはいえ、だ。
「安いのは嫌かな」
安宿は却下する。
「私も。あ、四人で泊まったカルヴァースの宿くらいならいいんじゃない?」
メイも安宿は嫌だったらしく、以前泊まった宿くらいのランクを提案してきた。確か、食事無しで一泊4万トリアだっけか。割り勘すれば問題無いな。
「あー、あのくらいか。そうだね。僕もあのランクの宿が良いかな。グレンは?」
「俺も安宿は嫌だからな。あのランクならいいぜ」
グレンにも確認すると、彼もカルヴァースの宿くらいのランクならと納得していた。
先導するルチルに、ナインは同ランクくらいの宿に心当たりはあるかと確認を取る。
「三軒ほどありますよ」
振り返ったルチルが、考える素振りすらなくスラスラと答えた。もしかして、全部の宿を覚えているのか?まさかな。
まずは宿自体を見てからにしようと考えたナインは、ルチルに一軒ずつの案内を頼んだ。
「わかりました。それじゃあ近いところから案内しますね」
前へと向き直ったルチルは、頼られるのが嬉しいのか少しだけ軽い足取りになった。
あ、ちょっとスキップしてる。
堅あげポテトのブラックペッパーが昔から好きです。
ポテチといったらコレというくらい食べてます。
あ、でも普通のポテチののりしお味も好きです。
堅あげポテトには負けますが。
噛むほど美味いは良いキャッチコピーだと思います。
また明日。