187 肉体更新
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「よし、それじゃあ始めようか」
「あ、待って」
そうして肉体更新を始めようとした時、メイが待ったをかけてきた。ん?どうした?まだ何かあったか?
どうしたんだろう?とナインが首を傾げていると、メイがくるりと後ろを向き、グレンを見る。
「今回は服着てるけど、一応グレンは後ろ向いててね。脱げるかもしれないから」
前回の肉体作製時と同じように、グレンが見ることは禁止された。
これには、ナインも確かにと納得する。
肉体更新は、核である魔石を入れ替え、更にナインの魔力を使用して肉体を大きくする。一度肉体を消して作り直す訳では無いため、服が脱げるという事は無い。と思う。ただし、それは予想では、だ。脱げないという保証は無いし、もしかしたら大きくなった肉体の影響で服が破れるかもしれない。正直、どうなるかわからないのだ。まぁまだやった事が無いから仕方ないのだが。
とはいえ、どうなるかわからないからこそ、異性であるグレンが見るのはダメなのだ。
「またかよ・・・」
不満そうな表情で愚痴をこぼすグレン。だがすぐに、言っても仕方ないと素直に反対側へと向き、こちらへ背を見せた。そして手持ち無沙汰だからか人が近づいてきてもすぐわかるよう、周囲の警戒を始める。
そんなグレンをチラチラと見ていたルチルが、そっと手を上げる。
「あの、私は見てていいんですか?」
「ルチルは女の子だからいいよ」
「ありがとうございます!」
許可が出たルチルは、嬉しそうにお礼を言うと、一歩だけ後ろに下がる。そして「いつでもどうぞ」と促してきた。
ナインは、メイの目の前で近づくと両手を持ち上げ、彼女の胸元へと翳す。右手に魔石を持ち、左手は何も持たず、ただ開いた状態だ。
「じゃあ、始めるぞ」
「いつでもいいよ!」
着ていたマントをバッ!と脱ぎ捨て、胸元をはだけさせたメイは、さぁ来い!とばかりに笑みを浮かべた。
大きく開かれたメイの胸元に、ナインの空の左手と魔石を持つ右手が押し当てられる。するとすぐに、触れられたメイの胸元が仄かに光り始めた。
これから行う肉体更新の手順は、行きの船の中で確認していた。ざっくり言えば、核となっている魔石の交換だ。
手順としては、メイの胸元にBランク魔石とナインの左手を触れさせる。触れる場所が胸元なのは、現在彼女の核になっているCランク魔石がある場所が、胸部の中だからだ。
次に、メイが魔力操作を用いてBランク魔石は体の中に、Cランク魔石は体の外にと同時に動かし、交換する。その際、外に出たCランク魔石は、ナインの空いている左手で受け取る。左手も胸元に当てているのはこのためだ。
最後に、メイが現在の肉体を、Bランク魔石を核としてナインの魔力を使用し、魔石の魔力量や魔力回復量に合わせた肉体年齢に変化させる。
といった感じだ。基本僕がやる事はあまり無い。僕の魔力を使用する事に関しても、メイが主導だ。あれ?魔石の保持くらいしかやる事が無いな。まぁいいか。
(お?動き出した)
頭の中で手順の確認をしていると、メイの胸元の光が少しだけ強まり、それに合わせてナインの右手にあるBランク魔石がゆっくりと体内に入っていく。そしてそれと同時に、今まで核となっていたCランク魔石が胸元から現れ、ナインの左手に触れる。
三秒に一センチくらいの速度で、魔石の入れ替えが行われていく。
かなりゆっくりとした速度だが、これ以上は早く出来ないらしい。なんでも、入れ替えを早くすると魔石から肉体への魔力供給が滞り、肉体自体が消えかねないのだとか。もし消えてしまった場合、一からの作成となるため余計に魔力と時間がかかる事になるらしい。急がば回れというやつだな。
それから三十秒程でナインの右手が空になり、代わりに左手にはCランク魔石が収まる。
これで魔石の交換は終了だ。ここからはメイが僕の魔力を使用して、肉体年齢を更新する。
メイが行う魔力吸収のため、右手は触れたままにしつつ、左手の魔石をマジックバッグにしまう。
「ッ!うぐっ!!」
腰に着けたバッグの中へと魔石を入れた瞬間、ギュン!!という音が聞こえてきそうな勢いで、ナインの魔力が右手を通して吸収された。
最初の肉体作製時よりも吸収された魔力量は少なかったが、それでも無理矢理引き剥がされるような感覚には慣れず、ナインは思わず声を漏らした。
(あ、光るな)
そしてそれと同時に、光が強まると確信した。
魔力吸収が終わったので、最後の年齢更新に移る。その際、かなりの光量と勢いで光りだす、はずだ。あくまで予想だが。もしかしたらあまり光らないかもしれないが、たぶんそうはならないだろう。メイも手順確認の時に「たぶん光る」と言ってたしな。
「ルチル、光が強くなるから気をつけてな」
「わ、わかりました!」
更新作業をじっ、と集中して見つめていたルチルに、注意を促す。あのままなら目が眩みかねないからな。
言われたルチルは額に両手をかざし、更に両目をググッと細めた。
その様子に、たぶん大丈夫だろう。と考えていると、不意にメイの胸元の光が強まりだした。
一気に光量を増していき、光は胸元だけでなく全身へと広がる。
やっぱり光った!と思ったナインは、目を細めるとメイの胸元に触れていた右手を下ろす。そして数歩後ろに下がり、そのまま様子を伺っていると光が更に強くなった。
パアァー!!!!
「まだ光るのか!」
メイの全身から放たれる光が更に大きくなり、目を開けていられなくなったナインは、ギュッと瞼を閉じる。
とはいえ、すぐに光は弱まり始めたようで、数秒後には完全に収まっていた。
「・・・メイ?」
終わったのか?そう思ったナインは、ゆっくりと瞼を上げながら彼女の名前を呼ぶ。
開けた視界に、残光がキラキラと瞬いていた。そのせいで視界の半分以上が見えない。だがそんな中でも、ナインの目には彼女の姿がはっきりと見えた。
光が収まった場所には、目を閉じて佇む、12、3歳くらいの少女がいた。
現在時刻、午前2時半。
予約投稿をし忘れたことに気付き、飛び起きました。
また明日。