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レゾンデートル  作者: 星街海音
聖人と聖女と聖剣
186/251

185 豪華な昼食と水竜

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


 「美味しいな・・・、ヌルヌルのくせに」


 ハンマーヘッドイールの白焼きを食べたナインは、その美味しさに舌を巻いた。


 釣りを終えたナイン達は現在、昼食としてバーベキューを楽しんでいた。


 デッキ上には大量のバーベキューコンロや魔道コンロ、それからテーブルと椅子が並べられており、それらの周りには、ナイン達だけでなく船員の姿もあった。


 食材もハンマーヘッドイールだけでなく、グレンが釣った魚や、船員が持ってきた肉や野菜と様々な種類がテーブルに置かれていた。


 ハフハフと熱そうにしながら、焼きたてのハンマーヘッドイールを食べるメイが、ナインの言葉に同意する。


 「本当だねぇ」


 「高級品なんですよね?」


 「らしいね。強くもないCランク魔物だけど、遭遇率がかなり低いからだってさ。買ったらグラム1万トリアとかするらしいよ」


 「1、万・・・ですか?」


 あまりの値段にルチルは、食べようとしていた白焼きを皿の上にポロリと落とす。そして解体され、調理待ちとなっているハンマーヘッドイールの切り身へと視線を向ける。


 百キロちょっとはありそうだ。となれば値段にして1000万トリアを超えるという事だ。伯爵から貰った褒賞金が霞む勢いだ。


 「余ったら持ってこうぜ。俺らの飯にもなるし、金に困ったら売れるしよ」


 パクパクと美味しそうに白焼きを食べていたグレンが、大量の切り身の利用法を提案してきた。


 「そうするか。焼くのは難しいけど、元が美味しいからちょっと失敗しても大丈夫そうだしね」


 そしてグレンが言うように、困った時の換金用と考える事も出来る。何とも無駄のない魔物だ。ただの変なヌルヌルでは無かったらしい。







 その後もナイン達と船員は、ワイワイと騒ぎながら豪華な昼食を楽しみ続け、そろそろお開きかとなった頃。


 船からかなり離れた海面で、凄まじい水飛沫が上がった。距離があるため音はこちらまで聞こえなかったが、近ければドバァッ!!という爆発じみた音がしていただろう。それほどの大きさだった。


 「うおっ!?何だあれ!?」


 「んみゃっ!?」


 偶々そちら側を見ていたナインとルーチェが、揃って驚きの声を上げる。


 上がった水飛沫の中心から、青色をした細長い大きな何かが姿を現した。水飛沫まではおおよそで2キロ程の距離があるはずだが、かなりの大きさなのだろう、その姿形がしっかりとわかる。


 鼻先が鋭く尖った頭部に、うっすらと見える鱗。手足は無く、蛇のような感じだった。


 青色の蛇のような生き物が、うねるように体を動かしながら船と同じ方向へと海上を泳ぐ。ナインとルーチェが呆けたようにその姿を目で追っていると、その様子に気づいたメイがお肉をゴクンと飲み込み口を開いた。


 「ああ、あれ水竜だよ。しかもめずらしい、エルダーだね」


 「エルダー?ていうか異様にデカくない?」


 青色の巨大蛇のような存在の正体を、さも普通の事のように喋り出した。


 (水竜!?え?あれが水属性のドラゴンなの?)


 初めての竜の姿に興奮するナインは、聞き慣れない言葉と大きさに首を傾げる。


 「エルダードラゴンは、SSランクだからね。そりゃ大きいよ。まぁ水竜はとくに大きいんだけどね」


 そう言って持っていた皿を置いたメイは、ドラゴンの名称について解説してくれた。


 ドラゴン、または竜は、○○ドラゴンと言ったようにその進化具合に応じて名称が変わるらしい。ランクと○○の部分は以下の通りだ。


Cランク、インファント(幼竜)

Bランク、ヤング(若竜)

Aランク、無し(成竜)

Sランク、グレイト(上竜)

SSランク、エルダー(老竜)

SSSランク、エンシェント(古竜)


 といった感じだ。Aランクの成竜のみ、○○ドラゴンとはならずに、ドラゴンだけとなる。


 「SSって・・・、どのくらいのレベルなんだ?」


 メイの解説を聞いたナインは、今も元気に海上を進む水竜に視線を向ける。


 「SSランクは、101から150レベルだよ」


 「ひゃ、・・・マジ?」


 「マジ」


 とんでもないレベルだ。絶対ヤバいじゃん。今の僕じゃ戦いにすらならないレベルだ。


 「そうか・・・。ていうか、レベル幅広くない?」


 メイの言う通りなら、SSランクの対象となるレベルは101から150である。50レベルも幅がある。いくら何でも広くないか?とナインは疑問に思った。


 「その辺クラスになると、レベル差はあんまり関係無いんだよ。ステータス差があっても、個人の技術とかセンスで簡単に覆すしね。110レベルが140レベルにあっさり勝ったりするくらいだよ」


 これまたとんでもないレベルだ。SSランクとかまでになると、レベルだけじゃなく技術やセンスも凄いらしい。勝てるんだろうか・・・。ていうか。


 「あのエルダーの水竜は大丈夫なのか?こっちに来て、襲いかかってきたりしないか?」


 現在のナイン達は、海を進む船の上だ。もしあの水竜が襲いかかってきたとしたら、船はあっさりと壊され乗員は、海へと投げ出されるだろう。水上は戦闘に適していないのだ。どう頑張っても負ける未来しかない。


 不安な表情をしながらメイと水竜を交互に見るナイン。そんなナインに、メイは大丈夫だと答えた。


 「竜は神の眷属だから、基本的には自分から人を襲ったりしないよ」


 安心させるように、「だからあれは大丈夫」と教えてくれた。ナインは、ホッと胸を撫で下ろす。


 「襲うのは、ダンジョンから出てきた奴だよ」


 「いやいるんじゃん」


 安心したのも束の間、メイによってまた不安にさせられた。


 遠くで泳ぐ水竜は、間違い無く神の眷属であるため、襲いかかってくる事はない。だが眷属ではない、ダンジョン産の竜は違う。知性も低く、凶暴な性質をしているため、人を見つけると一も二もなく襲いかかってくるらしい。怖っ・・・。


 次に、神の眷属とは何か。これについてもメイが解説してくれた。


 まず神だが、神は全部で八柱いる。各属性に一柱といった具合だ。炎なら炎神。水なら水神である。


 この神のうち、竜が神となっている属性が存在する。炎、水、風、地の四属性だ。他四属性は竜ではない。氷は狼の姿を、雷は鳥の姿をしている。天界にいる光神は、天使の姿をしており、魔界にいる闇神は、悪魔の姿なのだとか。


 次に眷属だが、神自身と同じ種族、または同じ部類の魔物や動物が、神の眷属となっている。竜なら竜、狼なら狼といった具合だ。雷神は、鳥という広い範囲ではなく、鳥の中の一部が神の眷属になっている。


 神、または神の眷属は、先程説明した通り、基本的に自分から人を襲ったりはしない。寧ろ守ってくれたりもする良い存在だ。


 ちなみに、これから向かうノースト大陸南は、神の眷属である水竜がいる事からもわかるが、水神の領域である。といっても、支配しているという訳ではない。どちらかと言えば、見守っていると言うのが正しい。メイが言うには、神は皆お人好しなんだとか。


 「水神の領域は、年中通して暖かい地域なんだよ。ちょっと湿度は高いけどね」


 「冬越えには、もってこいの地域って事か」


 「そういう事。だからこの時期は、昔から人が多くなるね」


 一応僕達は、次の旅の目的地としてノースト大陸を選んだが、冬越えも目的としている。おそらくは四月くらいまで大陸南側にいる事だろう。


 ノースト大陸は、北と南で気候が真逆である。南は水神の領域であるため温暖な気候だが、北側は氷神の領域となっているため、一年を通して寒い地域だ。特に冬は、雪も多く、気温もより下がるため、冬越えには向いていない。


 「春になるまでは、南側に籠るとするか」


 「そうだね」


 神とその眷属の解説から地域の話に移ったナインとメイは、止まっていた食事を再開すると、向こうに着いたら何をしようかと話し始めた。


 遠くを泳ぐ水竜は、いつの間にかその姿を海の中へと沈めていた。












 「見えてきたぞ!」


 マストの上にある見張り台から、船員の大声が聞こえてきた。ナイン達はデッキの上を走り、船の先頭に向かう。


 船の手摺りから体を乗り出し、進行方向へと目を凝らすと、遠くに陸地が確認できた。


 釣りと水竜を見た日から早三日。今日は到着予定日である11月23日だ。


 「おおー!!あれがノースト大陸か!!」


 「んみゃー!!」


 ナインと、その頭の上のルーチェが声を上げる。


 「やっとか。まぁ普通より早えんだけどよ」


 横に立つグレンが、少しだけ疲れたような声を漏らす。気持ちはわかる。豪華で快適な船とはいえ、確かにちょっと疲れた。


 「二ヶ月くらいだったのに、もっと離れてたような気がします」


 グレンを挟んだ反対側に立つルチルが、遠くに見えるノースト大陸を見て、感慨深げに呟いた。そりゃ、君はとんでもない事件に巻き込まれたからね。二ヶ月ではきかないくらい濃い時間に感じるだろうさ。


 「あと一時間ちょっとかな?さて、下船の準備をしよっか!」


 僕の横でノースト大陸を確認していたメイは、僕達の方へと振り返ると元気いっぱいにそう言った。


 「そうだな。よし!みんな、部屋に戻ろう」


 僕は、仲間達にそう呼びかけると船内へと向かった。


 ここからまた、僕達の新たな旅が始まる。

昨日の夜、帰宅すると玄関扉に大きな黄緑色のバッタが付いてました。

小指くらいのサイズのやつです。

ウマオイみたいなのです。

腹立つことにそいつは鍵穴の真横にいました。


結果、家に入るまでバッタと5分ほど格闘していました。

殺すことなく追い払えましたが、虫がダメな私は疲れ切りました。

あいつ許さん。


次回は月曜日です。

それでは。

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