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レゾンデートル  作者: 星街海音
間章
181/251

180 ナインが選んだ物

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


 「それじゃあ最後は僕だな」


 (どうしよっかな。僕も一個ずつ出すかな)


 一度に全部出すか、小出しにするかでほんの少しだけ迷い、小出しにする事にしたナインは、最後に選んだアクセサリーから取り出した。アクセサリーからにした理由としては、速攻で紹介が終わるからだ。なんせ見た事あるやつだからな。


 「はいこれ」


 トンッと言う音を立てながら、小さな物がテーブルに置かれた。


 「あ?」


 「あら?」


 アクセサリーを見たグレンとルチルが、あれ?といった反応を見せる。


 「あ!このイヤリング!・・・やっぱり同じだ!」


 最後に見たメイが、大きな声で喜びを表す。ナインが選んだのは、イヤリングだった。しかも見覚えのあるやつだ。


 「うふふふふ。お揃いだね!」


 「まさかのな。最初にメイが出してきた時、ちょっとびっくりしたぞ」


 メイが選んだイヤリングと見た目も性能も全く同じな、剛迅のイヤリングだ。まさかのお揃いである。なんか凄い恥ずかしい。


 選んだ理由は、欲しいステータスの底上げのためだ。僕の戦闘スタイルの場合、VIT、DEX、MGIのステータスは、そこまで重要ではない。体力は今で十分だし、武技もあまり使用しないのでDEXも問題無い。MGIにいたっては死にステである。僕に必要なのは、筋力と敏捷力。これである。


 「ほら、次行くぞ」


 「照れてるんだね。あ、ごめんってそんな目で見ないで」


 イジるメイをギロリと睨むと、即座に謝罪が返ってきた。向かいに座るグレンとルチルは、イジる事なく無言だったが、顔がニヤニヤとしていて腹が立つ。はぁ・・・、もういいや。次次。


 気持ちを切り替え、イヤリングをしまったナインは、代わりに長剣を取り出した。ドンッと置かれた剣に、皆の視線が向く。


 「次は、長剣だ。名前は振切剣。アビリティは、超振動だ。簡単に言えば、めちゃくちゃ切れ味の良い魔剣だな」


 各々で鑑定を使って詳細を見ているだろうが、一応説明だけしといた。ちなみに振切剣のステータスはこんな感じだ。




振切剣

等級:A

種別:長剣

属性:雷

アビリティ:<超振動>

耐久値:1120/1120




 これが僕の選んだ剣、振切剣だ。先程も説明したが、超振動のアビリティによって、切れ味が大幅に上昇するという効果を持つ。


 この超振動だが、磁力魔法によって刀身に微細な振動を発生させているらしい。詳しい事はわからん。そしてこの振動が切れ味を上昇させているとの事だ。ちなみに磁力魔法は、雷魔法からの派生進化だ。それ故に、この剣は雷属性を持っている。


 アビリティの効果で攻撃力を上昇させているが、それを抜きにした剣単体で見ても、かなり強かった。まず硬い。とにかく硬い。これ折れる事あるのか?と思えるくらいだ。そして切れ味だ。これがまた凄い切れる。パウエルさんが「お試しに」と薪を取り出してくれたのだが、何の抵抗も無くスパッと切れた。アビリティ無しでこれである。おそらく、超振動使用時ならば岩すら切れるだろう。物凄く攻撃寄りの剣だった。


 振切剣の鑑定結果を見ているのであろう三人に、ナインは剣の詳細を語った。


 「ふわぁー、強いですね」


 「良い剣だな。これならAランクの魔物だろうと斬れるだろうぜ」


 ルチルは素直に驚きを表し、グレンは何処まで通用するのかを口にした。


 グレンが言ったように、この剣であれば高ランク魔物であろうと斬れる。僕の弱弱筋力であろうとだ。それが理由で選んだようなものだ。


 そうしてグレンの言葉に同意したナインは、ルチルも交えて剣の性能について話し始めた。すると、今までずっと無言のままじーっと剣を見続けていたメイが口を開いた。


 「ねぇナイン。たぶんだけど、これも進化武具だわ」


 「「「は?」」」


 三人の声が見事にハモった。


 「・・・マジ?」


 「うん」


 こくりと頷き肯定するメイ。進化武具でほぼ間違い無いらしい。自身が貰った魔吸剣よりも、そんな感じがすると言う。


 「マジかよ、進化武具二本か・・・。とんでもねぇな伯爵」


 二本も進化武具を持っていた伯爵に対して、グレンが素直に驚きを口にする。これには他の三人も同意だ。ただでさえ数の少ない進化武具を、個人で複数所持していた。しかも長剣だけでだ。伯爵のコレクションは、多種多様である。まず間違い無く、他の武器種でもあるだろう。いったいいくらかかっているのだろうか。


 (というか、お金だけの問題じゃないよな。凄い運良いな)


 武具が進化するかは、鑑定を使ってもわからない。メイのように、経験と直感で判断するしかないのだ。果たして伯爵は、どうやって選んでるのだろうか。コレクションルームとか作るくらいだから、目利きが良いのかな?


 「グレンの炎剣も、進化武具でしょ?」


 テーブル上の振切剣を眺めていたメイは、顔を上げるとグレンへ視線を向け、そう口にした。


 「ん?ああ、やっぱりそうなのか?」


 いきなり言われたグレンは、少しだけ驚いた表情をした後、すぐにやっぱりかと納得したような表情を浮かべた。どうやらグレンの炎剣も進化武具らしい。てことは、今この場には進化武具が三本もあるのか。凄いな。


 「知らなかったの?」


 「まあ、普通はわかんねぇからな。確証は無かったが、たぶんそうじゃねぇかな?とは思ってた」


 そう言ってグレンは、壁に立てかけてあった炎剣へと顔を向ける。隠しているが、その表情はとても嬉しそうに見えた。


 確かお祖父さんがくれたんだったか。もしかしたらそのお祖父さんは、炎剣が進化武具だって気付いてたのかもしれないな。


 (と、もう一つあるのにまったりして場合じゃないな)


 「最後の出していいかな?」


 まだ終わってない。僕の選んだ物は、もう一つある。


 「ああ、すまん。いいぞ」


 悪い悪い、とグレンが軽く謝り、皆の視線がナインへと集まる。


 「最後はこれだ」


 カチャッ。


 ナインは、マジックバッグから銀色に黒いラインが入ったL字型の魔導機械を取り出した。


 テーブルに置かれたその物体に、皆の視線が移る。そしてすぐに、メイ以外の二人が首を傾げた。メイは、これが何かすぐに気付いたようだ。


 「これは・・・、何ですか?」


 鑑定を使用する前に、ルチルが魔導機械について聞いてきた。


 「魔導銃っていう、魔力弾を撃ち出す魔導機械だよ。魔導銃アストラ<type.Ⅲ>って名前だね。ああ、鑑定していいよ」


 軽く説明し、皆に鑑定を促す。三人は鑑定を使用し、表示された画面を食い入るように確認し始めた。ナインも一応使用する。




魔導銃アストラ<type.Ⅲ>

等級:A

種別:魔導機械・射出型

属性:無

内臓魔石:無属性Cランク×3

使用魔力:3000〜10000

耐久値:1200/1200




 改めて鑑定結果を確認するナイン。剣なんかの武器とは、少し違う表示が少しだけ面白い。


 「確認した?っていうか、メイはこれ知ってるのか?」


 「ああうん、知ってる。同型を見た事もあるからね」


 「じゃあ性能も良くわかるのか」


 「うん。まぁ私が見たことあるのは、ここまでピーキーな性能じゃないけど」


 やはりこの魔導銃は、かなり尖った性能なようだ。まぁ鑑定結果を見ればわかるか。


 「それじゃあグレンとルチルに、これがどういう武器なのか説明していくね」


 「頼む」


 「お願いします」


 二人の返事を聞き、ナインは魔導銃アストラ<type.Ⅲ>の説明を始めた。


 魔導銃アストラ<type.Ⅲ>

 この魔導機械は、魔力弾を撃ち出す射出武器だ。内蔵された無属性魔石に魔力を込める。すると内部の術式によって魔力が制御され、発射可能状態になる。あとはトリガーを引くだけだ。込めた魔力を小分けにして連射、とかは出来ない。単発式である。


 次に、弾丸となる魔力の必要量だが、これは鑑定に表示されているように、最低3000とかなり多い。レベル40であるルチルの魔力が、大体2500だ。彼女では一発撃つ事すら不可能な量であるため、常人には使えない、欠陥品のような武器と言える。上限は10000まで。これ以上の魔力は込められず、込めようとしても術式によって過剰魔力か霧散するようになっているらしい。


 威力に関しては、試し撃ちが出来なかったがかなり高いらしい。込められた高魔力を術式によって圧縮、制御しているためだとか。『岩くらいなら弾け飛びます』とパウエルさんが言っていた。


 最後に耐久値が高いのは、内部フレームと外装がミスリル製だからだ。魔導機械は、魔道具よりも精密である。そんな精密機器を武器にしているため、壊れないよう本体を硬くしている。それ故の高耐久値だ。


 「・・・とまぁ、こんな感じだね。どう?僕やメイのための武器な感じじゃない?」


 テーブルに置かれた魔導銃を手に取り、笑みを浮かべるナイン。この武器も、振切剣並みに気に入っている。


 「はぁー、かなり尖った性能ですね。魔力特化の私でも使えないんですか。面白いです」


 純魔法使いである自分ですら使えない魔導機械。そんな存在に、ルチルの目がキラキラと輝く。魔道具好きな彼女だが、魔導機械も範疇なようだ。


 ちなみに今更だが、魔道具と魔導機械の違いは何なのかを説明しよう。と言っても、そんなに複雑では無い。魔道具は、外装、術式、魔石、この三つで出来ている。対して魔導機械はと言うと、外装、フレーム、内部機構、術式、魔石、といった感じだ。フレームと内部機構が増えただけじゃないか?と思うが、魔道具よりも内部がかなり細かく、複雑なのだ。


 例えば、水を出す魔道具の場合、魔石の魔力が術式によって変化、制御され、水が出る。ところが魔導機械の場合、魔石の魔力が術式によって変化、制御され、内部にある歯車やなんやらの機構が動く。この動いた機構が別の機構や術式を起動し、より複雑な効果を生み出す。という訳だ。


 それと、爆弾兼入場券の魔道具も、内部は色々と複雑だったが、あれも結局のところは、術式と魔石のみで効果を発揮する物なので、魔導機械では無く、魔道具の分類になる。


 「なるほどな。魔力量がバカみてえなお前にはぴったりじゃねえか」


 「バカみてえって・・・。まあ否定はしないけど」


 「ちょっと!?そこは否定してよ!元は私の魔力なんだけど!?」


 バカと言われたメイが、ぷんすか怒りだす。ナインは「まぁまぁ」と言いながら彼女を宥め、先程彼女が見た事があると言った同型機について聞いてみた。


 「ああ、これの同型ね。私が見たのは、type.Ⅱだけど。一応type.Ⅰも知ってるよ」


 「へぇー、どんな感じなんだ?」


 「確かtype.Ⅰは、低魔力での発射を想定したのだったはずだよ。主に牽制とか目眩しだね。威力も低かったし。ただ色んな人が使えたから、そこそこ需要はあったよ」


 低魔力運用型なのか。それなら威力が低くても欲しいと思う人がいても不思議じゃないな。サイズとしても、多少ゴツいが片手で持てる大きさだ。これならばサブウェポンとして持ち運べるだろう。


 「type.Ⅱは、属性弾型だね。属性魔石の入れ替えで各種属性弾が撃てたタイプだったよ。こっちも魔力をそこまで必要としない型だったから、結構需要あったね」


 属性魔石をカートリッジにして、その場で属性変更が可能だったらしい。無属性魔法しか使えない僕には、垂涎のタイプだ。ぜひ欲しい。今度探してみよう。


 「ナインが選んだtype.Ⅲは、威力特化型だね。高魔力を圧縮、制御して、無属性でも威力を落とさず運用するってコンセプトだったよ。まぁ結果として、大半の人が使えない物になったけどね。欠陥品って言われてたおかげで、需要はほぼ無かったよ」


 最低魔力3000とか、普通の50レベル魔法使いでも一発撃ったら魔力切れになるからな。誰が使うんだよって感じだ。そりゃ需要も無いだろう。僕にはあるけど。


 「なるほどねぇ。それにしてもやたらと詳しいな。昔の武器なのか?」


 「昔も昔、はるか昔だね。二千年前に作られた武器だよ」


 「え?そんなに?武神とか賢者が活躍した時代の武器って事か?」


 五百年とかそのくらいだと思ってたら、その四倍だった。昔過ぎるだろ。


 「そうそう。これは、当時の鍛治師と魔道具師の合作だね。ほら、ここに刻印があるでしょ?これがあるって事は、その後の時代に作られたんじゃなくて、二千年前に作られた物だって証明だよ」


 メイは、魔導銃のグリップ底に付いている鷹の横顔の刻印を指差し、そう説明した。なんでもこの刻印というのは、製作者のみが付けられる固有のマークらしい。そしてこの鷹の横顔のマークは、この魔導銃を生み出した鍛治師のマークなんだとか。とんでもない年代物という事だ。


 ちなみに、それだけ年代物であるなら高いのでは?と思ったが、このtype.Ⅲに限ってはおそらくだが高くないらしい。理由は先程も言った通り、普通の人には使えないからだ。それ故に、もし値段を付けるとなればそのほとんどが、ミスリルである外装とフレーム、そして内部の魔石の値段になるらしい。かわいそうな武器だ。大切にしよう。


 そうしてナインの貰った物の紹介も終わり、これで全員の選んだ物を把握できた。


 仲間達全員が、これらの装備によってかなり強化出来たため、大幅な戦力アップになった。とても満足のいく、嬉しいお礼だったと言えるだろう。


 (ありがとう、伯爵。遠慮無く選んでごめんなさい、伯爵)


 だいぶ遠慮無く選んでしまったので、ナインは伯爵に対して、心の中で感謝と謝罪を口にした。とはいえ、感謝八割、謝罪二割くらいだが。


 こうして伯爵からのお礼の確認を終えたナイン達は、ソファーから立ち上がり部屋を出ると、解体してもらったレッサーキマイラの素材を受け取るため、訓練所に向かった。

暑さにやられてちょっと怠いです。

頭も少しだけ痛い・・・。

軽い熱中症っぽいです。

すみません。来週の投稿は少しだけ減らします。


また明日。

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