177 コレクションルーム
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「うわぁ・・・」
目の前に広がる光景に、ナインは声を漏らした。
魔人と戦ったホールくらいの広さの部屋に、武器や防具、アクセサリーに魔道具などが綺麗に整頓されて飾られている。伯爵が五百を下らないと言っていたので、ある程度予想はしていたが、聞くのと見るのでは大きく違った。
「どうぞご自由にご覧下さい。それと、決まりましたら私のところまで持ってきて頂いてもよろしいでしょうか?一応どれをお渡ししたのか確認しなければいけませんので」
お手数おかけします。と言い、パウエルさんはコレクションルームの入り口横に下がっていった。
コレクションルームがあったのは、領主館の地下一階であった。とはいえ、その地下一階には入り口が存在しない。この部屋の入り口は、館の三階奥にある鍵付きの隠し扉だ。その隠し扉を開けると下り階段があり、その先がコレクションルームとなっている。
下がっていったパウエルさんから目線を戻し、改めて部屋の中を見回す。
「えーと、どうする?」
「自由「見ていいって言うんだから、各自好きに見ればいいんじゃない?」
「そうだな。全員固まって見てたら日暮れんぞ」
「魔道具!魔道具はどこですか!?」
我慢の限界からか、一人だけおかしい魔道具マニアがいたが、メイが言ったように各自好きに見る事にした。
「じゃあ、またあとで」
そうしてすぐに解散した四人は、何か良い物はないかとコレクションルーム内をうろつき始めた。
(さて、まずは武器だな。長剣長剣〜)
頭の上にルーチェを乗せ、一人と一匹になったナインは、刀剣類が多く飾られたエリアに足を向ける。
剣を選んだ理由は、割と単純だ。魔剣やレア武器というのは、そう簡単に手に入らないからだ。レア故に、市場にあまり出回らない。
(お金が有っても物が無きゃ手に入らないからな。ここでしっかり手に入れよう)
どんなのがあるかな?と期待に胸を膨らませたナインは、刀剣類が並ぶエリアを眺める。
「おー!凄い!いっぱいある!」
壁や棚だけでなく、手前に置かれた台の上にも刀剣が並べられていた。ざっと見ただけで五十はある。そしてその全てが、何らかのアビリティを持ったレア武器だった。
長剣が目当てではあるのだが、それだけ見るのは勿体無いと思ったナイン。並べられた武器は、一応分類分けされており、右から刀身が短い順に並べられていた。とりあえず短剣から見ようと考え、右側の台の前に移動する。
「ほー、色々あるな。ん?発針の短剣?何々?魔力を込めると刀身から無数の針が飛び出す?ははー、面白いな」
左に移動しながら並べられた短剣を見ていく。鑑定を使用しているが、短剣一つ一つの前に、名称とアビリティが記載された札があるので、簡単に確認出来た。
投げると二秒後に手元に戻ってくるもの。ダメージを与えた相手に、五パーセントの確率でランダム状態異常を付与するもの。手に持っている間だけ装備者の移動速度を上昇させるもの。と様々だ。
(長剣が欲しいと思ってたんだけど、短剣も欲しくなっちゃうな・・・。とりあえず全部見てからだな)
短剣に目移りしながら移動し続け、小剣エリアに移る。短剣に負けじと、小剣もまた中々に面白いものが多く目移りしてしまう。レア武器の誘惑は凄まじい。
そうして短剣、小剣からの誘惑をグッと堪えたナインは、お目当ての長剣エリアにやってきた。
「うはっ、凄・・・」
壁に飾られた十本の長剣。その全てがAランク装備だった。見た目もアビリティも中々に厳つい。
入り口に立つパウエルさんに確認をとると、手に取ってもいいという事だった。なので一本ずつ手に取り、構えたりしてみる。流石に振ったりはしないぞ。危ないから。
長剣一本一本の重さや長さ、アビリティなどを確認していくナイン。どれも中々に強く、そして面白い力を持っている。
手に持つ九本目の魔剣を壁に戻し、これはかなり悩みそうだなぁ、と思っていると、最後の一本のアビリティが目に入った。
「お?これ・・・、色々書いてるけど、結局はシンプルだな。派手さも無い」
飾られた最後の一本である魔剣。その横に貼られた説明札を見たナインは、そのアビリティの内容に興味を惹かれる。
(これって、簡単に言うと凄い切れるって事だよな。ふむ・・・、いいんじゃないか?)
魔人相手ならば攻撃が通るが、魔物相手になるとそうはいかない。レベルが大きく上がったとはいえ、今のナインの力では、Cランク上位の魔物にギリギリ剣が通るくらいである。はっきり言えば攻撃力が足りない。だが、目の前の魔剣であれば、筋力が上がらなくても魔剣自体の力で攻撃力を上げる事が出来る。
そしてそれとは別に・・・。
「いいね。シンプルイズベストって感じがする。こういうのは好きだな」
単純に気に入ったのだ。見た目は魔剣としては些か地味だが、貧相では無い。刀身は薄紫色であり、装飾は最低限。何処となく武骨な雰囲気がある。グレンの炎剣に近い感じだ。
「よし、これにしよう」
ナインは即座に決定し、魔剣を手に持つとパウエルさんの元へと向かう。何を貰うのかの確認と、邪魔になるので預かっといてもらうためだ。流石にバッグにしまうのはまだ早いからな。
そうして入り口まで戻っている途中、ナインは、台に置かれたとある物に目が止まった。少しだけ気になり、体の向きを台へと変えて近づく。
「何だこれ?えーとなになに・・・」
気になった物をじっくりと確認する。銀色に黒いラインが入った、L字型の魔導機械だ。サイズはそこまで大きくはなく、片手で持てるくらいだ。だが妙にゴテゴテというかゴツゴツしている。手前に置かれた説明札に視線を移したナインは、用途不明の魔道機械の名称と正体を確かめる。
「・・・マジか。これ、僕のための武器じゃん」
説明を読んだナインは、その内容から自身との相性が凄まじく良い事を知る。このL字型の魔道機械は、武器だった。それも相当に人を選ぶ武器だ。
これは、ヤバい。使える人間は僕くらいしかいないんじゃないかと思えるくらいにヤバい。
実際は、高レベルのヒトやラグナロクの魔人ならば使用可能だ。威力も高いので、高レベル冒険者の武器と比較しても負けないレベルである。だが、常用する事はかなり難しいだろう。これは、そういう類の武器だった。
ナインは、台に置かれた魔道機械に手を伸ばし、笑顔を浮かべる。
「決めた。二つ目はこれだ。」
長剣と魔道機械。どちらも武器だ。だが両手に持てば同時に使う事が出来る。手札と手数も増える。この武器のデメリットも僕ならば無視できる。完璧だ。
魔剣と魔道機械を手に持ち、ウキウキとしながら入り口へ向かう。
これで二つ。選べるのはあと一つのみ。いや、この場合もう一つ選べるが正しいだろう。普通は、領主のコレクションから一つ貰えるだけでもとんでもない事だからな。
とはいえ、あと一つに関しては、何にするかもう決めている。
「パウエルさんに預けたら、アクセサリーを見に行こうっと」
ふんふんと鼻歌を歌いながら、ナインは独り言を呟いた。言った通り、最後の一つはアクセサリーだ。ダンジョンに潜っても入手出来るかわからない貴重なAランクが、今なら無条件で手に入るのだ。是非ともここで手に入れるべきだろう。本当は、魔道具と迷ったけど。
(まぁ、魔道具はルチルが選ぶだろうしいいか)
自分が欲しい物を人任せにしたナインは、選んだ武器をパウエルさんに預けると、アクセサリーを選びに向かった。
ちなみに、選んだ武器を確認したパウエルさんは、魔剣には納得という表情を浮かべた。だが魔道機械に関しては、「本当にこれでよろしいのですか?」と不安そうな声と表情で何度も聞いてきた。まぁ普通の人じゃまず使えないからな。
昨日の夜、雨が降る中傘をさして歩いていたら
車に水をかけられてしまいました。
傘の防御範囲は、上です。横は無理じゃ。
また明日。