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レゾンデートル  作者: 星街海音
間章
176/251

175 魔石と船と解体

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


 町へ出た日から3日が経過した。


 現在時刻は午前九時三十分。領主館の執務室にナイン達の姿があった。執務室にあるソファーに領主であるカルヴァース伯爵が座り、その後ろに護衛騎士のジェームスさん。そして執事長のパウエルさんが立っている。ナイン達は、伯爵とテーブルを挟んだ向かいにあるソファーに座っていた。


 「待たせてすまなかったな」


 「いえ、お忙しいのはわかってましたので大丈夫です。状況の把握や対処は終わったのですか?」


 「いやまだだ。奴ら、色々なところに手を出していたようでな。次から次へと埃が出てくる始末だ。ああ、今は大丈夫だ。事前に時間を空けておいたのでな」


 「なら良かったです」


 伯爵の言葉に、グレンが返す。貴族担当はグレンと決まっているので、話しかけられない限り、彼以外が対応する事は無い。下手に喋れば不敬になりかねないからな。


 何故執務室で伯爵と対面しているのか。その理由は、朝食前に遡る。と言っても、褒賞の用意が出来たと言われ、呼ばれただけだ。食後に執務室まで来て欲しいと言われたナイン達は、本日も提供された領主館特製の豪華な朝食をこれでもかといただき、執事長であるパウエルさん直々の案内でやってきた。


 「さて、それではまずは、頼まれていた魔石からだな」


 伯爵は、腰に着けたマジックバッグから魔石を取り出し、トン、と小さな音をたててテーブルの上に置いた。置かれた魔石は、爆破信号の送信機に取り付けられていた、Bランクの無属性魔石だ。


 置いたという事は、くれるという事なのだろう。そうだよね?ナインは、魔石と伯爵を何度も見返す。


 「君達が欲していたのは聞いていたが、送信機に付けられていた物だったからな。一応調べさせてもらったが、特に細工された痕跡も無かった。よってこれは、君達に差し上げよう」


 「ありがとうございます」


 グレンが代表してお礼を言い、全員で頭を下げる。そして顔を上げると、ナインとメイとルチルがキャッキャとはしゃぎだす。


 「やったなメイ!」


 「そうだね!」


 「私も嬉しいです!」


 「みゃー!」


 頭の上にいるルーチェまで、釣られて喜びだした。痛い痛い、爪を立てるな!


 そんな仲間達の様子を見たグレンが、小さく溜息を吐く。


 「はぁ・・・、申し訳ありません閣下」


 「構わんよ。喜んでもらえたなら良かった」


 そう言う伯爵は、まるで孫でも見るような優しい目をしていた。後ろにいるパウエルさんと護衛騎士のジェームスさんまで、同じような目をしている。


 グレンは、そんな生暖かい空気に若干居心地が悪くなった。曰く、(俺には似合わねぇ雰囲気だ・・・)という事らしい。よくわからん。


 「それでは、次だ。次は頼まれていた船だな。ノースト大陸行きの船に関しては、私の船を出そう」


 「「「「え?」」」」


 伯爵の言葉に対応していたグレンだけでなく、はしゃいでいたナイン達も停止する。聞き間違いだろうか?船は船でも今・・・


 「・・・閣下、閣下の船、ですか?」


 グレンが間違いないではないのか、確認するように聞き返す。


 「ああ、私専用の高速船だ。サイズは一般的な商船や旅客船と変わらないが、速度は中々に早いぞ。それに客室は広く浴室もある。普通の船旅より楽しんでもらえるだろう」


 「そ、そうですか。ありがとうございます・・・」


 楽しそうに話す伯爵に対し、グレンは固い笑みを浮かべて礼をする。ナイン達にいたっては、口を開けて固まっていた。


 領主専用の高速船なんて、普通は乗れない。いや、普通じゃなくてもまず乗れない。馬車ならまだわかるが、船は格が違う。おいくら万トリアですかね?それともおいくら億トリアかな?


 「乗船中の食事もこちらで用意しよう。出航日もそちらで決めてくれて構わん。決まったらパウエルに伝えてくれ」


 「感謝します。」


 なんと出航日までこちらで決めていいらしい。大盤振る舞いだ。まぁ伯爵がそれだけ感謝しているという事なのだろう。なので、ここは遠慮せず黙って受け取ることにしよう。


 開いた口を閉じたナイン達は、再度礼をするグレンをよそに「すごいね」、「たぶん客室もすごいと思うよ」、「食事って、いつも出してもらってるくらいのですかね?」とコソコソしながら盛り上がる。


 「次は・・・、ああそうだ。預かっていたレッサーキマイラの解体は終わっている。訓練所にあるのか?」


 「はい。倉庫でお預かりしております」


 「だそうだ。すまないが、後で取りに行ってもらえるか?持ってこようにも量が量なのでな」


 解体したレッサーキマイラを持ってこれないのは仕方ないだろう。なんせあの大きさだ。マジックバッグに入れて運んできても、受け渡す時に結局出さなければいけない。肉と爪と牙と魔石。これくらいならば部屋に出せるだろうが、皮は無理だ。


 魔物や動物を解体する際、皮については、後の加工を考えて出来るだけ小分けにはしない。防具などに加工する際、大きい方が繋ぎ目が出来にくくなるからだ。小さい皮が欲しいなら大きい皮から切り取ればいいだけである。大は小を兼ねるのだ。


 視線を向けてきたグレンに、ナイン達はこくりと頷く。それを了承と捉えたグレンは、伯爵に向き直ると、「わかりました。後ほど受け取りに参ります」と、答えた。


 これで、魔石、船、解体と、事前に頼んでいた全てのお願いを叶えてくれた。


 褒賞は、これで全部かな?いやー、解体もありがたかったけど、魔石と船が嬉しいな。と呑気に喜ぶナイン達。だが伯爵からの褒賞は、これで終わりではなかった。


 「さて、君達からお願いされていたものはこれで全部だな。それでは、ここからは私からの礼を渡すとしよう」


 そう言って伯爵は、後ろで控えるパウエルさんへと何やら指示を出した。


 ここまでは、ナイン達からのお願いに答えただけであり、伯爵自らが用意した褒賞ではない。ここからが、事前に用意された褒賞だった。


 パウエルさんが装飾の綺麗なトレーを持ってテーブル横にやってきた。トレーの上には、何かがギッシリと詰まった袋が、四つ乗っている。


 (ま、まさか・・・)


 袋の中身について、ナインが予想を立てていると、パウエルさんが恭しい手つきで袋を移動させ、ナイン達の前に一つずつ置いた。置かれた際に、袋からジャラッという音がした。


 「まずはこれだ。一人につき、100万トリアだ。受け取ってくれ」

最近クランキーチョコにハマっています。

このザクザクした食感がたまりません。

うまー


また明日。

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