170 ジョブ取得
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「これがジョブストーンか。四角いな」
ゆっくりとステンドグラスを堪能したナイン達は、その後、少ししてから近くのシスターにジョブ取得に来た事を伝えた。シスターは「こちらです」と言い、教会内にある一室へと案内してくれた。
部屋の構造は、普通な感じだ。窓があり、そこまで広くも無い。教会内に数あるうちの一室といった様子だ。ど真ん中にある黒にキラキラが混ざった、まるで星空のような色合いをした四角い物体を除けばだが。
この四角い物体が、ジョブストーンだという。本当に石だ。パッと見は本当に綺麗な石だ。
「これに触れれば良いんだっけ?」
「そうだよ。触れると今取得出来るジョブが表示されるから、そこから選べば良いよ。わからない事があったら聞いてね」
「わかった」
ナインはジョブストーンの前に立つ。そして、ゆっくりと右手を上げ、石の表面に触れた。
[対象者の確認・・・]
[ようこそ、ナイン・ウォーカー]
[現在の貴方が取得可能なジョブは、以下の通りです]
[<戦士>、<剣士>、<斥候>]
触れた直後、こちらの反応などお構い無しといったペースで何やら色々と表示されだした。ナインは表示された内容を、急いで確認する。特に難しい事は書かれていないようであった。
(戦士、剣士、斥候か。三つしか無いな)
これが多いのか少ないのか不明だ。振り返ったナインは、言い忘れと隠し事の多い知恵袋に聞いてみる事にした。
「<戦士>と<剣士>と<斥候>が表示されたんだけど、最初はこんなに少ないの?」
「所持スキルによって変わるけど、最初は多くないよ。とくに私達には、魔法使い系のジョブは出てこないから、そのくらいが普通だね」
「あ、属性魔法スキルを取得出来ない影響ってここでも出るのか」
「まあね。その辺はもう諦めてね」
「わかってるよ。もう慣れた」
もう気にしていない。そんな想いを込めて、メイへと笑いかける。無属性魔法は使えるのだから、別に問題は無い。水虎の長剣で水も出せるしな。
それにしても所持スキルによって変わるのか。と思ったナインは、追加でジョブについて聞いてみた。
以前に軽く聞いたがジョブは、レベルが30以上になるとジョブストーンにて取得出来るようになる、能力上昇のみのスキルのようなものだ。
取得出来るジョブは、所持スキルによって変わるため、スキルが増えたり進化したりすると、取得可能ジョブも増えたりする。
<戦士>のジョブの場合は、物理攻撃系スキルの所持が条件だ。僕の場合は、長剣、武道、双剣のスキルを持っていたため、取得可能ジョブとして表示された。
次に<剣士>だ。これは、その名からもわかる通り、剣系統のスキル所持が条件である。僕の長剣スキルが対象になっている。
最後の<斥候>は、僕の持つ三つのスキルが対象になったため、表示されたとの事。そのスキルとは、隠蔽、罠感知、疾走だ。斥候という役割にあったスキルと言えるだろう。
この三つのジョブの上昇能力は、<戦士>が、近接攻撃時の威力上昇。<剣士>が、剣で攻撃時の威力上昇。<斥候>は、手先の器用さと移動速度の上昇。となる。
「さて、三つしか表示されないなら選ぶのは決まりだよなぁ」
表示される三つのジョブに視線を向けるナインは、ボソリと呟くと右手を上げ、ジョブを選択した。
[選択ジョブは<剣士>でよろしいですか?]
[YES/NO]
選んだのは<剣士>のジョブだ。無難どころだが、これがこの三つでは一番良いと思った。まず、<斥候>は無しだ。前衛として戦う事が多い僕と、<斥候>の上昇効果は合わないからな。
次に<戦士>。能力上昇効果の範囲が近接系と広く、剣以外にも対応している。だがその分、上昇効果は低くなっている。剣以外も上昇するのは良いが、大半を長剣で戦うナインには、効果を持て余す事になる。
となれば、残った<剣士>になる。剣使用時のみの威力上昇効果は、戦士よりも高く、進化すれば<長剣士>という、さらに効果範囲が狭いが、威力上昇率が高いジョブになる。相性で見ても一番良いだろう。
ナインは、YESの文字を指でタッチする。
[ジョブ<剣士>を取得しました]
文言が変わり、無事にジョブが取得出来た事が表示された。案外、あっさり終わるんだなと、ナインは少しだけ拍子抜けした。
「終わったよ。<剣士>にした」
「まぁそれが無難だな」
ナインのジョブ選択を待っていた三人プラス一匹へと振り返る。そして、ついでとばかりに三人のジョブを聞いてみた。
「俺は、<剣士>から進化した<大剣士>だ」
「私は、<魔法使い>から進化した<魔法師>です」
グレンとルチルが、現在のジョブを口にする。進化したジョブを二人が持っていた事に、ナインはちょっとだけ羨ましいと感じた。
ジョブのランクは、初級、下級、中級、上級とあるらしい。ナインの<剣士>は初級。グレンとルチルは下級だ。
「今の私はジョブ持ってないよ。これも、肉体年齢による制限の影響だね。Bランクの魔石になれば、たぶん解放されると思うよ」
「今教えてくれないのか?」
「あとでのお楽しみだよ」
「・・・それは、お楽しみになるのか?」
ならないと思うだが・・・、とナインは考えていた。とはいえ、彼女は話さないと言えば話さないので、どうしようもない。伯爵がBランクの魔石を譲ってくれるまで、大人しく待つとしよう。どうせそこまで時間がかかることでも無いからな。
そうしてジョブ取得を終え、ジョブストーン利用による寄進を済ませたナイン達は、教会を後にすると意気揚々と町へと躍り出た。
ここから先は何の予定も無い。つまりは、出来なかった観光をゆっくりと楽しめるという事だ。
到着した次の日からは、連続日帰り弾丸討伐ツアー。次の日の午前中だけは、少しだけ町を観光出来たが、その後から今日まで、町を巡るごたごたに巻き込まれていたので、正直大して回れていない。だからこそ、今日から存分に観光を楽しむのだ。
「どこに行く?海?浜辺は無いんだっけか?なぁルーチェ、お前も砂浜で遊びたいよな?」
「みゃん!」
色々なものから解放され、テンションの上がりまくったナインは、ルーチェを頭に乗せて町中をうろうろする。そんな一人と一匹の姿に町の人は、小さな子でも見るような微笑ましげな目を向けていたが、夢中になって観光を楽しむナインが気付く事は無かった。
それから数時間。ナイン達は、あっちへふらふらこっちへふらふらと町巡りを楽しみ、港付近までやってきた。
屋台や、出店が多くなり、それに釣られて人の数も多い。だからだろうか、ふと気になる会話がナインの耳に入った。
「聞いたか?ノースト南のアクエリアスに、聖剣の勇者様がやってきたらしいぞ」
「聖剣の勇者?それ、度々現れたって噂になるけど、大概が嘘ばっかりのやつだろ?今回の奴だってどうせ、有名になりたいとか考えた偽物じゃねぇのか?」
「いやいや、今回のは本当らしいぞ!なんでも、風の国の・・・」
会話をする男達が離れて行ってしまったため、途中までしか聞こえなかった。だが途中までとはいえ、その内容はかなり気になるものであった。
(聖剣の勇者?なんだそれ?)
ナインの持つ最低限の知識には無い言葉に、人知れず首を捻る。わからん。となれば、早々に聞いてしまうのが一番である。ナインは、視線を隣にいる少女に向ける。
出店に並ぶ髪飾りを楽しそうに選ぶメイ。彼女ならば、聖剣の勇者についても詳しく知っていることだろう。答えてくれるかは別だが。
「なぁメイ、聖剣の勇者?ってなんだ?」
最近のペットボトル。キャップが薄くないですか?
中身がカバンの中にちょっとだけ漏れてました。
また明日。