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レゾンデートル  作者: 星街海音
間章
170/251

169 登録と加入と教会

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 「はい、これでルーチェちゃんの従魔登録は完了です」


 ナインが書いた書類を受け取ったギルドの受付嬢は、ざっと内容を確認すると一つ頷いてから完了を口にした。やたらと口元をニマニマさせながら。いや、口元だけでは無い。頬も目も、溶けて地面に落ちるんじゃないかというくらいにデレデレしている。


 「だってさルーチェ。ほら、この赤いスカーフをつけてやろう」


 「みゃん!」


 受け取った従魔証をスカーフに取り付けると、ナインはルーチェの首に巻いてあげた。ナインとメイの瞳の色と同じだからだろうか、赤いスカーフをいたく気に入ったようだ。カウンターに乗ったルーチェは、巻かれたスカーフが見えるように、胸を張ってドヤ顔をかましている。


 「おっふぉ・・・、可愛い・・・」


 「ん?」


 「みゃ?」


 受付嬢がいる向かい側から、何やら聞こえてきた気がした。まあ仕方ないだろう。ルーチェは可愛い。これは世界共通の事実なのだから。


 聞こえてた。と焦った受付嬢は、「何でもないですよ」と答えて表情をいつもの仕事モードに戻すと、ナインが書いた従魔登録書を棚にしまい、別の書類を取り出した。


 「・・・こほん、それでは、次はパーティー加入申請の手続きをしますね」


 「はい、お願いします」


 新たに取り出された書類は、ナイン達のパーティーへ加入するための申請書類だ。この書類は、加入希望者のルチルと、パーティーリーダーのグレンが書くものである。


 ナインは、カウンターからルーチェを取り上げて胸に抱くと、二人と場所を交代するために後ろに下がった。


 「えーと・・・、はい、出来ました。グレンさん、お願いします」


 「はいよ。・・・これでいいな。確認してくれ」


 二人はささっと書類の必要事項を埋めると、確認のため受付嬢に手渡す。受け取った受付嬢は、「確認しますね」と言ってすぐさま、内容に不備が無いかの確認を始めた。


 「はい、問題無いですね。それではこれで加入申請を受理します」


 「はい!」


 問題無く申請が受理されると、普段のルチルらしからぬ大きな声で、喜びいっぱいに返事をした。ただ、言った後で自身の声の大きさに気付いたのか、その後すぐに「あぅ・・・」と呟くと、顔を赤くして下を向いていた。とはいえ嬉しいものは嬉しいのだろう。顔を上げたルチルは、ナイン達の方へと振り返る。


 「それでは皆さん、今日からまたよろしくお願いします!」


 幸せそうに照れ笑いを浮かべるルチルは、そうして本日二度目の挨拶を口にした。












 従魔登録と加入申請を無事に終えたナイン達は、もう用事は無いとばかりに早々に冒険者ギルドを後にした。


 ギルドを出る際、カウンター側から、「ああっ・・・、ルーチェちゃん」と聞こえてきたが、予定があるので申し訳ないが構っていられない。故に無視した。それに、少しならば良いだろうが構われすぎるのは、人懐っこいルーチェも流石に嫌がると思ったからだ。


 そうしてギルドを出たナイン達は現在、次なる予定の目的地である教会に向けて歩を進めていた。


 「あー、だからか」


 教会への道中、昨日の出来事を思い出したナインは、ルチルへと視線を向けながらそう呟いた。その言葉と視線に、何の事だろう?という疑問符を浮かべたルチルは、小さく首を傾げる。


 「何がですか?」


 「ん?いや、昨日の戦う前の名乗りで、『同じく』って言ってたのは、仲間になりたい気持ちが出ちゃったからかな?って思って」

 

 「うぐっ・・・。そ、そうです」


 唐突な恥ずかしい指摘にルチルは言葉を詰まらせつつ、声を顰めながら肯定した。


 下を向いてしまったルチルの顔が、熟れた果物の如く赤みを帯びていく。だがそんな彼女の様子に気付かないナインは、「やっぱりか!そうじゃないかと思ったんだ!」と、とても嬉しそうな声で彼女に追撃する。


 そんな空気の読めない発言をするナインに、メイとグレンは冷めた目を向ける


 「ナイン・・・、それは無い」


 「俺が言えた義理じゃねぇが、デリカシー皆無だな」


 「みゃん」


 「えっ?」


 メイとグレンが呆れを多量に含ませた声で苦言を漏らす。そんな二人の言葉に、ルーチェまでもが、「私もそう思う」というまるで同意するような鳴き声を上げた。


 自分がした発言を思い出すナイン。確かに、言わなくても良い事を、とても楽しそうに言っていた。どう考えても、空気無視な上にデリカシー無しな内容だった。


 「・・・ごめんなさい」


 言い訳不可能な状況に、ナインは即座の謝罪を口にする。


 「い、いえ、気にしないで下さい・・・」


 謝られたらそれはそれで恥ずかしいルチルは、出来ればもう触れないで、といった様子で謝罪を受け入れた。


 そうこうしている内に、ナイン達の視界に、目的地である教会が見えてきた。


 「あ、見えてきたよ」


 「デカ・・・」


 港町だからか、教会の建物はかなりの大きさをしていた。高さが約20メートル、縦横の幅は約30メートル程もある。とはいえ、それだけの大きさでも領主館の三分の一程である。単に領主館が大き過ぎるだけだ。


 ナイン達は足を止めずにそのまま教会前まで来ると、教会正面にある重厚そうな大きな扉に手をかけた。


 「重そう・・・。あ、軽いわ」


 見た目からは想像出来ないほど軽い扉に、ナインは少しだけ驚きつつもゆっくりと動かしていく。


 軽さの割に緩やかな速度で扉が開いていくと、空いた隙間から色とりどりの光がナイン達に向けて差し込んだ。


 「おお・・・!」


 思わず感嘆の声を漏らすナイン。彩られた光の正体は、教会奥に設置された巨大なステンドグラスからだった。


 奥の壁の三分のニ以上を占めるステンドグラス。そこには、黒髪の男性と女性が優しげな微笑みを浮かべ、大地を見守っている。そんな光景が描かれていた。


 「綺麗ですね・・・」


 「ああ。」


 ナインと同じようにステンドグラスを眺めていたルチルとグレンも、その迫力と綺麗さに目を奪われていた。だがそんな中メイだけは、その顔に何とも言えない呆れなような表情を貼り付けていた。


 「・・・どうした?」


 気になったナインが、小さく声をかける。すると、表情を苦笑に変えたメイが、同じように小さな声で答えた。


 「いやぁ・・・、あのステンドグラスが、ちょっと何とも言えなくて・・・」


 「何とも言えない?」


 彼女の言っている意味がいまいちよくわからない。なので「どういう意味だ?」と更に深く聞いてみた。


 だがメイは首を振り、答える事を拒んだ。


 「まだ言えないかな。うーん、そうだなぁ・・・、もし、神に会う事があったら教えてあげるよ」


 拒みはしたが、条件付きで教える機会を与えてくれた。圧倒的に難易度が高過ぎる気がするが、彼女が隠す内容は、きっとそれほどの事なのだろう。


 メイについての謎ばかり増えて、一向に減る気がしないが、これについてはもう諦めている。よってナインは、特に悩む事はせず、こくりと頷いてその条件を飲んだ。


 「・・・わかった。いつになるかわかんないけど、神に会えたら絶対教えてくれよ」


 「約束するよ」


 ごめんね。とでも言いたげな表情をしながら、メイが約束する。


 (はてさて、いつになる事やら)


 近い将来か、遠い未来か。自身の隣に立つ、運命共同体の秘密を知る機会は、まだまだ先になるようである。

部屋の中なのにアイス溶けるのが早い。

ぐぬぬ・・・、ゆっくり食べさせろ。


また明日。

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