016 門番と詰所
走っては休憩して、また走っては休憩してを繰り返し、三十分ちょっとで門の前に到着した。
威圧感のあるとても大きな街門がこちら見下ろしている。
「でっか・・・。」
街に入場する列に向かう人々がナインを不思議そうに見ながら追い越している。
だがそれに気づかずに口をポカンと開けながら顔上げて門見つめる
傍目から見ると田舎者か脱獄者のように見えるが、門に集中する本人はそれに気づいていなかった。
『ほら、変な目で見られてるし、早く行くよ。』
おっと、そうだった。
メイに言われて自分の格好を思い出す。
変なマントの着方をした裸足で抜き身の長剣も持った男はどう見ても変だった。
ついで今はフードも被っている。
門に向かっている最中、メイに被って髪を隠しておけと言われた。
なんでもこの髪色はかなり目立つからだとか。
(ああ、ごめん。で?あれに並べばいいのか?)
気持ちを切り替え、入場待ちの列に目を向ける。
七人しか並んでおらず、街の大きさに対して以外と少なかった。
『うん。順番が来たらさっき話した言い訳ね。』
あながち嘘じゃないから言い訳でも無いんだが、つっこんでも仕方ないのでスルーする。
ちなみに周りに人がいるのでここからは思考会話に変える。
メイの声は僕にしか聞こえないので、口に出して話していたら、一人で会話する変な奴になるからだ。
(了解。ドキドキしてきた。)
返事をして列の最後尾に進む。
向かっている最中に一番前の入場審査が終わったので僕は七番目だ。
結構スムーズなのですぐに順番が来そうである。
(それにしても、結構大きい街なのに意外と並んでる人が少ないな。あまり来る人いないのか?)
少しだけ気になったのでメイに聞いてみる。
『ああ、それはね。アルメガって門が北と南にあるんだけど。この大陸の北側は栄えているから北門は結構人が来るんだよ。それに対して南は、行けば行くほど地形が激しくなるからあまり発展してなくて、結果人の往来も少ないんだよね。』
打てば響くメイの説明に納得する。
(なるほどなぁ。まぁ僕としては人が少なくて助かったけどさ。)
これが北門だったら人の視線で針の筵だろう。
街に入る前から心が折れてしまう。
そうこうしているうちに僕の順番がやってきた。
「・・・お前、なんだその変な格好は。」
二人いる門番の一人。顔の厳ついおじさんに上から下までゆっくり三往復見られたあとにはっきりと言われた。
おっしゃる通りです。
「実は・・・。」
用意していた話を門番のおじさん伝える。
ほとんど嘘じゃないからこそ問題無く伝えられたと思う。
「・・・ていうわけです。」
「うーん、そう、か。あー、とりあえずこっちに来てくれ。詳しく話を聞こう。」
そう言って門番は門の横にある扉に向かった。
まぁすぐに信じられるわけではないので仕方ないだろう。
大人しくついて行くことにする。
扉の前まで来ると門番はこちらを振り返る。
「すまんな、悪いが荷物は預からせてもらうぞ。」
「わかりました。」
断る理由は無いので右手に持った剣と皮袋を渡す。
門番は受け取ると扉を開けて中に入っていったので、僕も追って中に入る。
扉の先は部屋になっていた。
僕は色々と気になってしまい、周りをキョロキョロとしてしまう。
「記憶が無いんだったな。ここは門番の詰所だ。」
物珍しそうに周囲見回していた僕に、門番は説明してくれた。
中には門番と同じ格好をした人が他に三人いた。
門番の待機場所みたいなものかと納得する。
「それじゃあこっちの部屋に来てくれ。おい、あれ使うぞ。」
すぐ近くにいた門番にそう言って、顔の恐い門番は奥の扉を開けて入っていってしまった。
(な、なあ。あれってなんだ?)
普通に怖いんだけど。
あの部屋で何されるんだ。
『あー、たぶんアレだよ。来る時に話してた嘘発見の魔道具。』
そう言われて内心ビクビクしていたが落ち着いた。
言ってたアレか。
ならたぶん大丈夫だろう。
急いで門番の入った奥の部屋に向かう。
中に入ると机と椅子が置いてあった。
それとなにか四角い物も机の上にあった。
あれが嘘発見の魔道具かな。
「そこに座ってくれ。」
促されて椅子に座ると、向かいに門番も座った。
「さて、悪いがここに来た経緯をもう一度説明してもらえるか?。」
門番は四角い物に手を置き、再度説明を求めてきた。
「わかりました。えっと、まず目が覚めたら森にいて・・・。」
さっきも話したので、すらすらと説明が終わる。
「・・・というわけです。」
僕の説明を聞くと門番は手を置いていた四角い物に目を向ける。
「本当のことだったのか・・・。お前さん、大変だったな。だからそんな格好だったのか。」
心配したような顔でもの凄く同情された。
魔道具に反応が無かったのか信じてくれたようだ。
「まぁ、結構大変でしたね。」
「だよなぁ。名前とかはわかるのか?」
初めて名前を聞かれる。
ちょっとだけドキッとした。
「ナイン。ナイン・ウォーカーです。」
また明日。