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レゾンデートル  作者: 星街海音
間章
164/251

163 精霊獣

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 (何だこの子猫?)


 何処となく嬉しそうな鳴き声で答えた白い猫に、ナインは目を丸くする。前脚で顔をくしくしと毛繕いする姿は、どう見ても猫だ。だが絶対に猫じゃない。


 (僕から魔力奪ったぞ・・・)


 そう、魔力を奪い、尚且つ吸収したのだ。動物は魔力を持たない。魔力を持つのはヒト、魔物、そして精霊だ。だからこそ、魔力を吸収したこの子猫は、絶対に動物じゃない。まぁ姿を隠してた上に、光を発したのだからどう考えても動物では無いのだが、それはそれだ。

 

 さて、どうしたものか。とナインが子猫への対処に頭を悩ませる。とりあえず、刺激しなければ問題無いらしいので、思い切って抱き上げてみる事にする。


 「よいしょ・・・、おお、もふもふだ」


 「みゃー」


 暴れる事も無く、素直に抱き抱えられる子猫。若干汚れているのでごわごわするところもあるが、それでも元が良いのか、ふわふわのもふもふの毛並みが、腕を幸せにしていた。


 そんな子猫は、可愛く一声鳴くとナインの胸に顔をすり寄せる。


 「何で懐かれてるんだろう・・・、あ、ちょっと顔舐めないで」


 「みゃ?」


 勝手に魔力奪って、勝手に懐く。その勝手具合に、猫らしいと感じたが、こいつは猫ではない。


 本当に何なんだ・・・、と顔をペロペロ舐められながら頭を混乱させるナイン。そんなナインの様子が気になったメイ達は、視界が戻ると心配そうに声をかけてきた。


 「ナイン、どうだった?あ、やっぱり・・・」

 

 ナインの手元を覗き見たメイが、少しだけ困ったような顔をしてそう口にした。


 「やっぱり?」


 「みゃ?」


 言葉の意味がわからず、どういうことだ?と思いつつ振り返る。するとナインが持つ子猫を見たグレンはその顔に困惑を、ルチルは喜色を浮かべた。


 「あ?何だそいつ?」


 「うわー!可愛いですね!」


 「みゃうん」


 グレンの言葉は無視し、ルチルの言葉だけに反応したかのような声を出す子猫。人語を理解してるのか、頷きまでしていた。


 そうしてルチルに撫でられている子猫から、やっぱりと口にしたメイへ視線を向ける。先ほど意味は何なのか、とナインは目だけで問いかけた。


 「あー、その子はね。精霊獣だよ」


 白い子猫の正体は精霊獣という存在だった。だが精霊はわかるのだが、精霊獣というものは知識に無いナインは首を傾げる。しかし、グレンとルチルは知っていたのか、表情と声に驚愕が浮かんだ。


 「精霊獣!?マジかよ!」


 「初めて見ました・・・」


 その反応に釣られて、え?それほど凄い存在なのか?とナインも驚愕する。そして、頭が混乱し過ぎて、簡単に正体が判明するスキルを使用していなかった事を思い出した。


 (鑑定すれば早かったじゃん。えーと、鑑定っと)


 腕の中でこちらを見つめる子猫に視線を向け、鑑定を発動する。




名称無し:エレメンタルキャット

Lv.7

ランク:F

属性:光

HP:220/220

MP:826/826




 相変わらずスキルレベルが低いため、子猫の所持スキルは表示されなかった。それから鑑定画面には、精霊獣の文字は無く、エレメンタルキャットという種族名があった。おそらくこのエレメンタル何々、というのが精霊獣であるということなのだろう。犬であればエレメンタルドッグとかなのかもしれない。


 とはいえ鑑定を見ても、そもそも精霊獣という存在自体がわからない。そして、初めて見る名称無しという謎の表記。


 (エレメンタルキャットっていうのが、精霊獣って事なのかな?まぁそれは確認出来たけど、名称無しって何だ?普通は名前があるのか?)


 謎だけが増えたと感じたナインは、鑑定画面から顔を上げるとメイに聞いてみる事にした。


 「鑑定にエレメンタルキャットって書いてあった。で?エレメンタルキャットっていうのが精霊獣なのか?て言うか精霊獣って何だ?」


 「エレメンタルキャットは精霊獣の一種だよ。それから精霊獣はね、簡単に言うと、精霊と同じ肉体、性質を持った獣の事だよ。」


 なるほど、精霊と同じなのか。と納得したナインは、腕から這い上がり何度も顔を舐めようとしてくる子猫の精霊獣に顔を向ける。


 精霊とは、自然と共に生き、自然を保護し、自然を愛する者の事だ。そしてその存在は、ヒトや魔物とは違う。どう違うのかと言うと、肉体という部分で違う。


 ヒトや魔物の肉体は、物質体、精神体と別々になって構成されている。他に星辰体と心もあるが、これは生命体共通なので、除外する。


 対して精霊は、ヒトや魔物のように物質、精神で分かれている訳ではなく、物質体半分、精神体半分が合わさった半物質半精神体で肉体が構成されている。簡単に言うと、精霊の肉体の半分は魔力で出来ているのだ。


 ちなみに、精霊がいるのは自然豊かな場所だ。森の奥とか、山奥とか、深海とかになる。ただし、全く出てこないという訳でもなく、それなりに人里近くに現れたりもする。めちゃくちゃ強いので、手を出す奴はあまりいない。手を出した奴の大体は、怒った精霊にしばき殺されている。


 「なるほど。じゃあ何でみんなはそんなに驚いてるんだ?」


 「そりゃ凄く珍しいからだよ」


 納得したナインは、メイ達が驚いた理由を問うと、その理由を教えてくれた。


 なんでも、精霊獣というのは、精霊の住処から出てくる事がまず無い存在らしい。自然溢れる精霊の棲家で、精霊と共に穏やかに暮らす。そして時には、悪意を持った侵入者に対し、その爪や牙で容赦無く襲いかかる。精霊にとっての騎士みたいな存在だという事だった。


 「まず出てこないのか。はー、だから驚いたのか。納得」


 話の大きさに頭がついて行かず、頭の悪そうな返事をするナイン。そうしてふと、先ほどの鑑定結果を思い出したナインは、もう1つ気になる点があったなと思い、それについても聞いてみる事にした。


 「名称無しってなってるけど、精霊獣って名前があるものなのか?」


 大した事では無いと感じで、何気なく口にした質問。だがそれに対する反応は、ナインの予想を大きく超えるものだった。


 「「「ええーっ!?」」」


 「うわっ!」


 「みっ!?」


 驚愕する3人の口から発せられた爆音に、ナインと子猫も声に出して驚きをあらわにする。


 (え?なに?そんなに驚くことなの?普通じゃないの?)


 口と目をぽっかりと開けて固まる3人の姿に、ナインはよくわからない不安を覚える。


 それからたっぷり30秒ほど、意識が飛んだかのように固まる3人。


 「契約状態になってる・・・」


 そんな中、1番最初に元に戻ったメイが、呆然とした表情のままゆっくりと口を開いた。


 「・・・契約?」


 「みゃ?」


 契約とは何ぞや?とでも言いたげな表情をしたナインと子猫は、メイの言葉に揃って首を傾げた。


 「契約って言うのはね、精霊契約の事だよ」


 「精霊契約・・・。テイムとは違うのか?」


 ナインの質問に「違う」と答えたメイは、精霊契約について話し始めた。


 「テイムは、魔物に対して<テイム>スキルを使用して従属関係を結ぶものなんだよ。つまり上下関係がつくものだね。それに対して精霊契約はスキルじゃない上に、関係性は対等なんだよ」


 あー、関係性が違うのか。とメイの説明を聞いてざっくりだが理解した。


 テイムは魔物が服従するが、精霊契約の場合は対等。だがぶっちゃけ対等と言われてもよくわからない。友達くらいかな?とナインは簡単に考えた。


 「それから契約自体は、精霊か精霊獣と契約者の相性が良くないと出来ない。そして契約方法は、契約者の魔力を精霊か精霊獣が吸収すること。・・・魔力吸収されなかった?」


 「された」


 「みゃうん」


 しました。とでも言っていそうな声で、子猫も答えた。


 「それが契約だよ。この子の気配をナインだけが感じとれたのは、相性が良かったからだね」


 相性が良いから気配が読み取れ、契約が成立した。とはいえ、そう言われても契約しようと思っていた訳では無いので、どうしたらよいのかは全く変わらない。


 (まあ、連れていくしかない・・・よね)


 契約していないのであれば領主預けて行ってもよかったが、今となってはそれも出来ない。


 「とりあえず、名前を付けてあげなよ。」

ハンバーガーが食べたいです。

2個は食べたいです。

チーズは必須です。


また明日。

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