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レゾンデートル  作者: 星街海音
間章
162/251

161 忘れ物と気配

お待たせしました。

本日より、間章スタートです。


それと同時に、本日7月11日で、初執筆、初投稿から半年となりました。

この先も一生懸命頑張り、最後まで書き切りたいと思いますので

是非とも応援のほど、よろしくお願いします。


 「あのタイミングで言うことじゃ無いと思うんだよなぁ・・・」


 地下へと向かう階段を降りながら、ナインは愚痴るように呟いた。ラグナロクによる悪の計画を打ち砕き、超えた証の花火を見ている最中での、メイによる物欲丸出しな発言。はっきり言うがぶち壊しである。


 「俺もそう思う」


 「私もちょっと・・・」


 「ごご、ごめんて・・・。でも流石にこれ以上放置すると劣化しちゃうからさ、仕方なかったんだよ」


 2人にまで言われ、吃りながらも言い訳を吐くメイ。言っている事はわかる。貴重な素材だ、劣化させてしまってはもったいない。だがそれはそれ、これはこれだ。もっと言い方やタイミングがあったはずだった。まぁそれをわかっているからこそ、一応は謝罪の言葉を口にしていたが。


 現在ナイン達は、メイが倒したレッサーキマイラを回収するために、地下独房へと向かっている。


 客室を出る際、ちゃんと扉の前にいたメイドさんに事情は説明したので、館内を動き回っても問題無い。無いのだが、事件の対応で右往左往している兵士や使用人がいる中、自由にしているのはなんだか申し訳なくなってくる。


 とはいえ、そこは流石領主である。屋敷内に詰めている兵士と使用人の数が多い。なので手は粗方足りているらしい。故に僕達は気にせず、けれど邪魔にならぬようさっさとレッサーキマイラを回収して、さっさと客室に戻ることを優先する。


 数分で階段を降りきり、つい数時間前に通った地下独房にやってきた。やってきてすぐに大きな黒い塊が目に入る。


 「改めて見てもでけぇな」


 「だなぁ。アクアタイガーと同じくらいかな?」


 「たぶんそんくらいあんな」


 伏せをするかのような体勢で絶命するレッサーキマイラを見ながら、ナインとグレンはそのサイズ感に1ヶ月半くらい前を思い出す。


 ユニーク個体のアクアタイガー。ラグナロクの計画の一部として、アルメガ周辺の東の森に放たれた魔物だ。冒険者パーティーを追いかけていたところにナインが割って入り、途中から参戦したグレンと共に倒した相手である。そんなアクアタイガーを思い浮かべ、目の前にいるレッサーキマイラと比べる。


 (うん。やっぱり同じくらい大きいな。それにしても・・・、傷があんまり無いな。)


 レッサーキマイラの死体を眺めていたナインは、その体に刻まれた傷の少なさに気づいた。


 「ん?傷が少ねぇな」


 隣で眺めるグレンも同じことに気づく。


 「やっぱり少ないよね」


 「ああ。皮の表面に擦ったような後はあるが、切れてはいねえな。ん?手には刺し傷があんな」


 グレンはレッサーキマイラに近づき、体表や四肢を確認していく。素材の状態と、どうやって倒したのかを調べているようだった。だがわざわざ調べなくても、倒した本人から聞けばいいと考えたナインは、ルチルとお喋り中のメイに声をかける。


 「なぁメイ。これ、傷少ないけどどうやって倒したんだ?」


 「んー?あーそれはねえ。両手両足に拘束用に調整した魔力剣を打ち込んで、動けなくしたところに上からとどめ用の魔力剣を心臓にズドン。だよ」


 そう言って簡潔に説明したメイは、すぐにルチルとのお喋りに戻っていった。


 「だってさ」


 「なるほど。この四肢の刺し傷は、その拘束用の魔力剣による傷か。とどめは上からってことは、背中に心臓を突いた時の傷があんのか。・・・どこだ?」


 背伸びまでしてレッサーキマイラの背中を覗き込もうとするグレン。だが、レッサーキマイラが大きすぎて、全く見えないようだった。


 仕方ないと考えたナインが、助け舟を出す。


 「一回マジックバッグに入れて、横向きになるように取り出せば?」


 「それだ!!」


 いい笑顔で振り返ったグレンが、指をビシッ!とナインに向ける。その姿を見て、そんなに喜ぶことか?変なところが子供だ。と感じる。


 そうしてグレンはいそいそと自身のマジックバッグを開き、レッサーキマイラを収納しようとする。だが黒い巨体はそこに居座ったまま、一向にバッグの中へと入っていかない。


 何か問題でもあったか?もしかしてまだ死んでないのか?と一瞬警戒を強めるナイン。


 「・・・でかくて入んねえ」


 グレンの情けない呟きに、ナインの緊張は、一気に霧散していった。


 「大きい?でもアクアタイガーは入ったよな?」


 サイズ感は大して変わらない。何故入らない?とナインは首を傾げる。するとその様子に気づいたメイとルチルが、お喋りをやめてナインの側までやってきた。


 「なになに?どうしたの?」


 「何かありましたか?」


 いつまでも放置されたレッサーキマイラとグレンを交互に見ながら、2人が聞いてきた。余程お喋りに夢中だったのだろう、状況が全くわからないようだ。


 「なんか、大き過ぎてバッグに入んないんだってさ。アクアタイガーとあんまり変わんないよね?」


 ナインがささっと説明しながら、大きさに着いて聞いてみる。状況を知ったメイは「ああ、なるほど」と合点が言ったとばかりに呟くと、そのまま理由を口にする。


 「たぶん、頭がついてるからじゃないかな?」


 「あたま?」


 言われてレッサーキマイラの頭部に視線を向ける。今にもグワァ!と叫び声を上げそうな形相が、死後硬直によって固定されている。


 少しだけ怖いと思いながらも、ナインはその頭部を上下左右から眺める。1メートルまでは無いが、80センチくらいはありそうだ。そしてそれと同時に気づいた。


 「あれ?アクアタイガーより大きい?」

 

 1ヶ月半程前の記憶なので若干ぼんやりしているが、記憶にあるアクアタイガーの頭より1.2倍くらい大きい気がする。


 「あー、あれよりは大きいね」


 メイも大きいと感じていた。


 (まぁ、誤差と言えば誤差だけど)


 頭部が付いている上に、ちょっと大きい。これらの理由の所為で、マジックバッグの収納可能サイズをオーバーしたのだろう。もしかしたら尻尾の蛇も理由かもしれない。あれもそこそこ長いし大きい。


 「とりあえず、入らないなら頭落とす?それでもいいけど」


 メイがアクアタイガーを収納した時と同じように、頭を落として小さくするか提案してきた。だがそこで、メイの隣で成り行きを見守っていたルチルが手を上げた。


 「あの、私のマジックバッグなら入ると思いますよ」


 そう言って背負っていたリュック型のマジックバッグを下ろした。


 「そっか、リュック型だと入るのか」


 ナインとメイとグレンが持つマジックバッグはウエストポーチ型だ。それに対して、ルチルの持つマジックバッグはリュック型である。このリュック型の容量と収納可能サイズは、ウエストポーチ型の3倍である。


 ちなみに、カバン型が2倍で、大リュック型が4倍となる。


 ナインとメイのマジックバッグのランクはDであり、容量は20枠。グレンのバッグはCランクで、容量は40。そしてルチルの持つリュック型マジックバッグのランクはC。容量はグレンのバッグの3倍で120となる。だが、収納可能サイズは3倍では無いらしい。


 とはいえ、グレンのバッグより大きいものを入れられるので、レッサーキマイラも問題無く収納出来るはずだ。


 「じゃあルチル、悪いけど入れといてもらっていいかな?」


 「はい。」


 頼まれたルチルはグレンと場所を入れ替わる。そしてレッサーキマイラの頭を掴むと「よいしょ・・・」と呟いてリュックの中へと収納した。


 アクアタイガーの時も見たが、巨体が一瞬でバッグ内へと吸い込まれる光景に、ナインは疑問を持つ。


 「これ、今まで普通につかってたけどさ、どんな仕組みなんだ?」


 「どんな?」


 「これ、このマジックバッグ」


 隣に来ていたグレンが、不思議そうな顔をしながら聞き返してきたので、ナインは自身の腰にあるマジックバッグを指差す。


 「さあ?知らん。それが普通だからな」


 「私も、とくに不思議に思った事無いですね。そういう物でしたので」


 グレンだけでなく、収納を終えたルチルも、とくに疑問を持った事は無いと答えた。ならばここは、とナインは、色々な知識を持つメイへと視線を向ける。長い年月を生きる彼女ならば、知っていてもおかしくはない。


 すると、視線に気付いたメイが、苦笑しながら口を開いた。


 「期待してるとこ悪いけど、ルチルが言っていたのが正解だよ。そういう物なんだよ」


 その後、詳しく聞いてみたのだが、マジックバッグとは、そういう物である。何がどうなってこうなった、とかなど無い。という事だった。


 不思議だが、その不思議は普通だ。と言われた気がした。


 そうしてマジックバッグの仕様で話題が逸れたが、レッサーキマイラの回収が終了したのでナイン達は部屋に戻ろうとなった。だがそこで、ナインは妙な気配を感じた。


 「・・・ん?なんだ?何かいる?」

数日前、アマプラでプレデターを見ながら執筆していました。

凄く集中できましたよ。


プレデターに。




宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


また明日。

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