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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
159/251

158 執務室へ

本日は1話です。


 剣を振り切った体勢を戻すと、ナインは血溜まりに沈むグラベルへと視線を向ける。


 勝った。


 だが戦闘中に相手から受けた攻撃を考えると、普通の人間であれば2、3度死んでいるくらいのダメージを負っていた。


 自身の不死性とメイによる不意打ちを使っての無理矢理の勝利である。感じる悔しさは決して小さくはない。


 「ふっ、ふっふっふ・・・」


 うつ伏せで倒れ伏すグラベルから力の無い笑い声が響く。声が止まるとゴロリと転がり、仰向けに変わる。


 「そうか・・・。貴様達は、4人だったな。」


 不意打ちマジックソードの直前に言ったナインの言葉に、グラベルが答えた。


 「卑怯だと思うか。」


 構える事なく剣をだらりと下げ、あの攻撃をどう思うか問いかける。


 「元から3対4だっただけの話だ。それに、これは決闘ではない。故に、卑怯などとは思わんよ。」


 「そうか。」


 己が負けたからなのか、グラベルは少しだけ角が取れた声色で呟いた。




 「改めて聞こう。ナイン・ウォーカー、貴様は何者だ?」


 膨大な魔力と不死性、それらを用いて自身に打ち勝ったナインに、もう一度だけ誰何する。


 グラベルは・・・、もう長くないな。


 聞かれたナインはグラベルの状態を確認し、その命がもう消えかけであると知る。


 故に、ただ一言だけ答える事にした。


 「2人目だ。」


 ただこれだけ。だがグラベルならばこれで理解するだろう。


 「・・・ふっふっふっ、そうか、それは勝てぬはずだ。」


 答えが返ってくると思っていなかったグラベルは、一瞬だけ目を丸くすると、それからすぐに何故か嬉しそうに笑い出した。


 やはり予想が正しく、ナインが原初の魔人の2人目であることを理解したようだった。


 さて、答えたんだからこっちもだ。


 「こちらも聞こう。お前達、ラグナロクの目的は何だ?」


 何を目的として偽魔人を生み出し、世界中で暗躍する?その行いが一体何に繋がっている?


 おそらく、この先もぶつかる事がある。そう思ったナインは、知っておけば対処しやすくなると考え、グラベルから聞き出そうとした。


 「残念だが、その質問に対する答えを我は知らぬ。」


 だが返ってきた言葉はナインの求めるものではなかった。


 「私とて、所詮は駒の1つでしかない。目的を知るのは、王とその側近である8人の使徒のみだ。」


 「そうか。」


 知っているのは王と8人の使徒のみ。その言葉にナインは、知りたくてもほぼ無理じゃん、と内心で愚痴った。


 結局あまりわからなかった事に憮然とした顔をしていると、グラベルの視線が天井へと向いたのが見えた。


 「・・・ふむ、我はここまでのようだな。」


 そう言って虚になっていく瞳をナインへと向け、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


 「さらばだ、ナイン・ウォーカー。せいぜい、足掻きたまえ・・・。」


 その言葉を最後にグラベルの意識は、永遠に浮かぶことの無い闇の中へと沈んでいった。












 [レベルアップしました]


 グラベルの死亡により、ナインの目の前にレベルアップの表情が現れた。


 高レベルの相手を倒したのだ、レベルが上がるのも頷ける。だが今は確認している場合ではないので、ステータスを見るのは後にする。


 「お疲れ様。」


 グラベルの死体を見つめるナインは、メイの声で振り返る。


 メイとルチル、そしてジャグラを担ぎ、リアンヌを引き摺るグレンが、こちらへとやってくる。


 「みんなもお疲れ様。」


 労いを兼ねてナインも返す。


 「おう。グラベルは死んだのか?」


 「うん。」


 「そうか、まあこいつは生かしとく方が危ねえからな。こっちは生きてるぜ。領主側にはグラベルの死体とこの2人を引き渡せば、問題は無えはずた。」


 殺した事に、グラベルがフォローのようなものをいれてきた。


 別に殺した事に落ち込んだり、気を乱したりはしてないのだが、気を使ってくれているようなので何も言わない事にする。


 「ああ、それと送信機は領主の執務室にあるらしい。ジャグラが喋った。」


 先んじて聞いてくれていたようで、かなり助かった。だが少しだけわがままを言えば、執務室がどこなのかも聞いておいてほしかった、と思ってしまった。


 広いんだよ、この館。


 「わかった。じゃあこの2人を拘束したら行こうか。ルチル、お願いしてもいい?」


 まあ探すしかないか、と諦めたナインはそう言うと、ルチルに2人の拘束をお願いした。


 「わかりました。アースバインド。」


 ルチルの大地魔法によって、ジャグラとリアンヌに岩で出来た拘束具が巻かれる。その際、顔は鼻だけが出るようにした。口が自由になっていると魔法を使って逃げられる可能性があるからだ。


 何重にも岩を巻きつけほぼ岩の塊のようになった2人を見たナイン達は、これで逃げられないなと確信し、執務室を探すためにホールの外へと出て行った。












 ホールを出てからおよそ20分。ナイン達は館内を2階から走り回り、4階北側の扉の前で立ち止まった。


 「強そうな騎士いるし、ここじゃない?」


 少し豪華な扉の左右に、強そうな装備に身を包んだ騎士が2人倒れている。軽く様子を窺うと、この2人も館の者と同じように昏睡していた。


 相変わらず、ここまで来る途中も領主館の中は昏睡するメイドや従僕、小間使いまみれであった。


 現在時刻は18時20分くらい。潜入を開始てからまだ1時間とちょっとだ。爆破が予定されている抽選会の20時まではまだ時間があるが、その後の対処などを考えると急いだ方がいい。


 ナイン達は、周囲と執務室内を気配感知と魔力感知でざっと調べる。


 「・・・3人いるね。動いてない。領主と執事、あと誰かな?」


 「領主の護衛騎士だろ。カルヴァースの領主は確か伯爵だからな。」


 なるほど。


 グレンの説明に、貴族の当主ならそりゃ専属の護衛がいるか。と納得した。


 そんなナインとグレンを尻目に、メイはさっさと扉に近づくと手をかける。

 

 「周囲も問題無し。よし、中入ろっか。」

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また明日。

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