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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
156/251

155 ナインVSグラベル2

本日の2話目です。


 「残念。僕に洗脳は効かないよ。」


 そう言ってグラベルの問いかけを切り捨てた。


 効かないよ。とは言ったが、実際は効いていない訳で無い。


 ナインの肉体は、魔力を使用して自動で行われる再生によって常に正常な状態にされている。


 なので正確に言えば、洗脳された瞬間に治しているだけなのだ。


 「そもそも洗脳しているっていうのがわかってるのに、僕達が何の対応策も用意しない訳ないだろ。」


 そう言って長剣を振り、血を払い落とす。


 ナインの言葉を受け、グラベルは困惑した表情を消す。そして胴体の傷を再生させ始めた。


 治癒魔法、では無いな。やはり魔力による再生か。治癒魔法じゃなくて再生で治したのは、スキルが無いか深傷過ぎてすぐには治せないかのどっちかかな?

 

 グラベルの様子を見て、ナインはそう予想する。


 傷の再生が終わったグラベルの表情が、油断など存在しない真剣なものへと変わる。


 「・・・道理であるな。では、力押しでいこう。」


 ガンッ!!


 グラベルは長剣を逆手に持つと、床へ突き刺した。


 「ダークアーム!!」


 刺した長剣を中心とした周囲の床に闇が現れ、そこから真っ黒な腕が8本現れた。そしてブワッ!と周囲に散会すると、ほぼ全方位からナインに向かって殺到しはじめた。


 「うおっ!?」


 掴みや殴りかからんとする大量の闇の腕を、剣や魔法、長剣のアビリティ、それから体捌きなどを駆使して凌ぐ。だが8本もあるため時折り闇の腕が体を掠めていく。


 ダメージは大した事ない。だが闇属性の特性が厄介だった。


 くそ!吸収がキツい!当たるたびに疲れが溜まる!


 吸収される際、生命力と魔力を無理矢理に引き剥がされる感覚がする。この時に若干ではあるが疲労感を感じていた。


 だが若干とはいえ、何度も食らえば若干では済まなくなる。


 どうにかしないと!と思いながら、迫り来る大量の闇の腕を斬り落としていく。けれども斬っても斬っても、闇の腕はすぐに再生してしまう。


 これどうすればいいんだっ!?


 対応策を模索するがそんなにすぐ良い考えなど思い浮かぶ訳もなく、ただただ闇の腕の対処に追われるナイン。


 「経験が浅いな。」


 その時、ナインの真後ろから声がした。

 

 まずい。


 そう感じたナインは咄嗟に前へと踏み出し、回避を試みる。


 しかし、どうやっても間に合う事は無い。


 左下からグラベルの長剣が闇の腕の隙間を縫って迫る。


 ズバァッ!!!


 先ほどのナインの斬り上げと全く同じ軌道で威力が全く違う斬撃が、左腰から背中を通って右肩へと抜ける。


 「うぐあああっ!!!?」


 高ステータスによる斬撃をモロに受け、ナインは前方へと大きく吹き飛ばされた。


 ダン!ダン!ズザザァー。


 数度バウンドし、床を擦り上げて止まったナインは、そのまま倒れ伏してしまった。


 「やられた分だ。多めにして返してやろう。とは言え、これで終わりであろうがな。」


 血溜まりにうつ伏せで倒れるナインの姿に、グラベルは自身の勝利を確信する。


 長剣にべったりとこびり付いた血を左右に振って払い落とす。そうして戦闘は終わったとばかりに鞘へと戻そうとした。その時。


 倒れるナインの周囲に半透明の剣が出現し、即座にグラベルへ向けて撃ち出された。


 ヒュンッ!


 「むっ!?」


 ガキン!ガキン!


 グラベルは鞘に収めようとした長剣を振り、撃ち込まれる魔力剣を叩き落とす。


 迎撃に成功したグラベルは剣が出現した場所へと視線を向ける。そして目の前の光景に言葉を詰まらせた。


 「・・・何故、生きている?」


 血溜まりに手をつき、ゆっくりと体を持ち上げるナイン。体中が血塗れになり、今も至るところからぼたぼたと垂れている。


 ざっくりと斬り裂かれた背中は、再生済みだ。正直、めちゃくちゃ痛かった。


 そうしてグラベルを放置して、ナインはゆっくりと立ち上がる。途中、体中から鈍い痛みがした。


 背中は再生したのだが、床を何度かバウンドした所為でどうやら体中に打撲を負っていたようだった。


 すぐに痛みを感じる箇所を再生で治し、汚れた顔を袖で軽く拭う。そして今日何度目かの驚愕と困惑の表情を顔に貼り付けたグラベルへ向けて、ナインはにっこりと笑って見せた。


 「秘密。」

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また明日。

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