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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
155/251

154 ナインVSグラベル1

本日は2話投稿です。


2話目の投稿は20時です。


 ルチルのウインドバーストによってリアンヌとジャグラが左右に飛ばされ、グラベルだけが中央に残った。


 ナイン達はそれぞれ中央と左右に分かれ、自身の担当する魔人に向かって走り出す。


 そうして、1対1の構図が3つ出来上がる。


 僕の相手は、この中で1番強いだろう第二級魔人グラベルだ。


 ナインはグラベルの3メートルほど手前で立ち止まると、右手の長剣を構える。


 「ふむ、我の相手は貴様1人か?」


 周囲に散らばるグレンやリアンヌ達を見回したグラベルは、落胆の色を込めた声で問いかけてきた。


 「不服か?」


 と返しはしたが、実際の予定ではナインとメイの2人で戦うつもりだったので不服なのは自分だった。


 やるしかないのはわかってるけど、1対1か・・・。


 スキルもレベルも技術も経験も、僕が1番低い。相性の問題で自分が戦わないといけないのはわかっているが、それでも厳しいと言わざるおえなかった。


 「些かな。」


 まるでゴミでも見ているような目をナインに向けると肯定した。


 見下してるな。


 暗い紺色をした少し長めの髪に、青紫色の瞳をした40前後くらいに見える男。質の良さそうな服に革鎧すら着けていない姿を見れば、強者の表れとしてはいっそ清々しいほどである。


 この距離ならば届くだろうと、グラベルに対して鑑定を使用する。




グラベル・フォン・ランデルス

Lv.62

ランク:B

属性:闇

HP:1320/1320

MP:58855/58870

<長剣Ⅱ>




 鑑定スキルのレベルが低い所為でスキルが1つしか表示されなかったが、鑑定は問題無く発動した。


 鑑定結果を見たナインは、最初にグラベルの名前が目に入り少しだけ驚いた。


 こいつ、貴族だったのか?だからやたらと偉そうだったのか?あ、いや、サージェスも似たようなものだったか。


 名前と家名の間に、フォンという名が入るのは貴族のみである。


 とりあえず、これは後でいいや。えーと、レベルは・・・、は?


 視線を名前から下へとずらしレベルに向けたナインは、一瞬思考が停止した。


 62?え?62?


 何度見返しても高い。そしてどう考えても強い。レベルだけ見てもナインの倍以上だ。その上長剣Ⅱのスキルを持っており、魔力も6万近くある。それに属性が闇だ。


 闇属性の特性は吸収であり、生命力や魔力を吸収する力がある。つまり闇属性の魔法や攻撃に触れると、HPだけではなくMPまで削られてしまうのだ。


 まず間違いなく闇魔法、いや暗黒魔法を持ってるな。それに・・・。


 鑑定では表示されなかったが、洗脳に関するスキルも所持しているはずである。


 洗脳するスキル。このスキルがどんなものなのかは、ここ数日の作戦会議でメイが予想を立てている。


 おそらく、戦闘になればグラベルは即座に使用してくるだろう。


 鑑定結果の確認を終えたナインは、少しだけ緊張を強くし、集中力が乱れかける。


 だが長剣の柄をぐっ!と強く握り直し、乱れかけた集中を取り戻す。


 「改めて名乗ろう。冒険者、ナイン・ウォーカーだ。」


 お前を倒す者である。そんな意味を言葉と瞳に込め、ナインは再度名乗りをあげた。


 「いいだろう、ならば我も答えようではないか。」


 どことなく嬉しそうな笑みを浮かべたグラベルは、右手の長剣を持ち上げ、ナインに向ける。


 「ラグナロクが第二級魔人、グラベル・フォン・ランデルス男爵だ。来たまえ、ナイン・ウォーカー。」


 そして、ナイン対グラベルの戦いが始まった。


 まずはこちらからとばかりに、ナインは長剣を左下に構えると体勢を低くして走り出した。


 距離が詰まり、迎撃体勢すらとらずにこちらを見つめるグラベルへと長剣を振り上げようとした。


 それよりも先に、目が合った。


 その瞬間、グラベルの右目が青紫から黒へと色を変えた。


 「っ!?」


 瞳の色が変わったと同時に一瞬、ナインの体の中を不快な何かが駆け巡った感覚がした。


 だが、その感覚も次の瞬間にはいつも通りのものに戻っていた。


 ナインの長剣が右上に向けて動き出す。


 「なにっ!?」


 剣が止まらぬ事に驚愕し、グラベルは困惑を込めた声を上げた。


 ニヤリと笑みを浮かべたナインは、無防備なグラベルの胴体へと左下からの斬り上げを叩き込んだ。


 ズバッ!!


 豪快な音を立て、グラベルの右腰から左肩までが深く斬り裂かれる。周囲に決して少なくない血が撒き散らされ、衝撃で数歩後退していった。


 グラベルは胸元の傷に左手を当て、視線を向ける。そしてバッ!と顔を上げると、信じられぬといった表情で叫んだ。


 「何故だ!?何故我が洗脳の魔眼が効かぬっ!?」


 洗脳の魔眼。これがグラベルの持つ洗脳スキルの正体だ。


 このスキルは、視線を合わせた対象を洗脳する事が出来るエクストラスキルだ。洗脳可能数や上位存在への洗脳などに色々と制限がある。だがエクストラスキルに分類されるだけはあり、溜めも無く、ほぼ一瞬で洗脳出来るため、恐ろしいまでに強力な性能を持つスキルである。


 洗脳を防ぐには、スキルや防具、アクセサリー、または薬で状態異常耐性を上げるくらいしかない。


 ではナインはどれで防いでいるのかと言うと、そのどれでも無かった。


 「残念。僕に洗脳は効かないよ。」

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