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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
152/251

151 グレンVSジャグラ1

本日の2話目です。


 ルチルの旋風魔法で魔人3人を分断する事に成功した。グレンは相棒の炎剣を担ぐと、右側に飛ばされたジャグラの元へと走る。


 ナインと旅をすれば色々な事が起きるだろう。もちろんそれだけが理由では無いが、そう思ってパーティーを組み、アルメガの街から一緒に旅を始めたが。


 「こりゃぁ、まったくもって想像以上で予想外だぜ。」


 まだイース大陸すら出ていないというのに町一つの運命を決めるような大きな事件に遭遇し、あまつさえラグナロクの魔人と戦う事になるとは誰が想像出来ようか。


 いつかはあると思ってたが、早えよ。


 走るグレンの口元に苦笑が浮かぶ。


 彼には目的があった。


 それは強くなる事。守られる側では無く、守る側になる事。


 身分の高い家に生まれたグレンは、とある理由で嫌われていた。父からは見放され、兄弟からは蔑まれ、家臣達からは馬鹿にされる。唯一の味方は母だけだった。


 だがそんな母も、当時5才だった彼を守って亡くなってしまった。


 その後、守る者がいなくなったグレンを父は容赦無く追い出した。


 家を追い出されたグレンを引き取ったのは、遠方に住む母方の祖父であった。


 母の兄が当主を務める子爵家の、その先代当主だった祖父は、厳しさと優しさを併せ持った人だった。移り住んだ領地で、俺は勉学や戦い方など色々な事を教わり、幸せに暮らしていた。この炎剣も祖父から貰ったものだ。


 そうして13年。俺が18歳になった頃、祖父が亡くなった。俺と祖父の家族は深い悲しみに暮れ、祖父の死を悼んだ。だが愛してくれた祖父に恥じぬよう、俺達は幸せになろう。厳しく、そして優しく生きよう。そう皆で誓い合い、祖父に別れを告げた。


 父が俺を呼び戻そうとしたのは、そんな時だった。


 何かに利用できるからだろう。追い出しておいて、勝手過ぎる。俺を含めた子爵家の人はそう憤り、拒否を示した。だが、父はどこまでも最低な人間だった。


 子爵家とその領地に、圧力をかけ始めたのだ。税の引き上げ、隣領からの軍事介入、しまいには、領内に盗賊を放ち出した。


 幸い、子爵家は下位貴族らしからぬ力と財力があったので、これらの自体に対処する事は出来た。気にするな。家族を守るのは当たり前だ。と叔父は笑みを浮かべて俺に言った。


 だがそんな状況に俺は耐えられなかった。


 母に守られ、祖父に守られ、次は叔父に守られる。俺を守る事で、優しい者が傷付いていく。幸せに暮らす者を不幸にしてしまう。俺が弱い所為で。


 俺は、ここにいてはいけない。


 強くならなければいけない。守る側にならなければいけない。魂に誓ったグレンは部屋に書き置きを残すと己の名を改める。そして祖父から貰った炎剣とコツコツ貯めたお金、マジックバッグだけを持ち、13年間世話になった子爵家を飛び出した。


 そこからの1年間は、冒険者として活動しながら1人で旅をしていた。村や町を渡り歩き、依頼を受け、ランクを上げ、海を渡った。


 そしてアルメガでナインと出会い、アクアタイガーと死闘を繰り広げ、今、ラグナロクの魔人と対峙している。


 まったく、人生とは予想不能だ。







 ジャグラの前に辿り着いたグレンは、苦笑を楽しげな笑みに変えると炎剣を構える。


 「私の相手は貴方ですか?」


 緑色の短髪をした30代くらいに見えるジャグラは丁寧な口調で問いかけてきた。


 後ろに下げた右手には曲刀に分類されるシャムシールを、前に出す左手にはスモールシールドを持ち、隙無く構えている。


 「不足か?」


 「とんでもない。グラベル殿やリアンヌは少々油断しているようですが、そんな愚かな行為、私はしませんよ。」


 油断無く構えるグレンが言葉を返すと、ジャグラは仲間の魔人を皮肉るような発言をした。


 「そうかい。」


 その言葉と言いように少しだけ違和感を感じつつ、ただそれだけを返すグレン。


 仲が悪い、とかそれだけな感じじゃ無さそうだな。まあそれは後だ、まずは鑑定だ。


 距離が近くなったので、ジャグラに対して鑑定を試みる。




ジャグラ・アンロート

Lv.46

ランク:C

属性:地

HP:1000/1000

MP:13808/13911

<曲刀><小盾><大地魔法>




 地属性なのに髪は黄色じゃねえのか!


 内心でツッコミを入れながら、鑑定結果を確認する。


 曲刀と小盾は見たまんまなのでスルーする。重要なのは大地魔法だ。


 ルチルも持っている属性魔法スキルだが、まだ使っているところを見た事は無い。このリアンヌとの戦いで使用しているだろうがそれを確認している余裕は無いので、記憶から掘り起こす。


 実際に見たのはまだ小さい時だ。それなりに面倒な魔法だったと記憶している。


 何せかなり硬い石や岩をぽんぽん生み出し、飛ばしたり、落としたり、下から生やしたり、壁を作って剣を防いだりしてくる。


 そして生み出された石や岩は一定時間その場に残る。


 ぶっちゃけこのその場に残る、というのが面倒な部分だ。残った石で足元が悪くなり、足を取られたり踏み外したりしてしまう。


 軽い武器を使う戦士ならまだいいが、重い大剣を振り回すグレンにとって足元を悪くする大地魔法は相性が良くない。


 「まあ言っても仕方ねえけどな。」


 声に出し、事実は事実とすぐに割り切る。


 常に相性の良い相手と戦える訳ではない。相性の悪い相手とだって戦う事は当然ある。選り好みをし、自分の戦いやすい相手とだけ戦って強くなる事は無いのだ。


 「ふぅー・・・。」


 深く息を吐き、グレンは集中を高める。そして炎剣を上段に構えると、全力で距離を詰めて斬りかかった。


 「うるぁあ!」


 気合いを込めた声を上げ、ジャグラに対して全力の袈裟斬りを敢行する。


 この一撃にはスキルも魔法も魔剣のアビリティも使用していない。時間が限られているのでなるべく早く終わらせたいのだが、相手の力量もわからない状態での全開戦闘はリスクが大きい。よってまずはステータスと力、そして技術による小手調べだ。


 「ふんっ!はっ!」


 ジャグラは振り下ろされる炎剣を落ち着いて見定めると、曲刀と小盾を用いて右へと冷静に受け流す。そしてすかさずカウンターで横薙ぎによる斬撃を繰り出してきた。


 「喰らうかよ!」


 受け流された勢いに逆らわず、そのまま上体を右に逸らして横薙ぎの範囲から逃れる。


 回避に成功したグレンは横へと2歩ずれ、2メートルほど距離を取ると剣を構え直した。


 「意外と早えな。捌きも上手え。」


 互いに1発ずつではあったが、それでも何となく相手の力量が垣間見えた。だがまだ何となくだ。


 もう少し試してみるか。


 1発だけでは完璧では無い。そう考えたグレンは、もう少しだけスキル無しで試そうと決める。


 炎剣を右側に持ち、横薙ぎの構えを取ると一歩踏み込む。


 そして右からの横薙ぎと見せかけて剣を右下に下ろし、振り出す直前で斬り上げへと変える。


 「おらぁあ!」


 「甘い!」


 声を出す事は重要だとばかりに、気合の入った声を上げるグレン。だがジャグラにはあっさりと受け流され、しまいには甘いとまで言われてしまった。


 そこから数分、グレンとジャグラが切り結ぶ剣戟の音がホールに響き渡った。


 グレンが斬りつけ、ジャグラが受け流すか回避し、お返しのカウンターをグレンは避ける。逆にジャグラが斬りかかり、グレンが防ぐか受け流す。そんな攻防を幾度となく繰り返した2人は同時に距離を取ると、ゆっくりと構えを解いた。


 「強えなあんた。」

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また明日。

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