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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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146 魔人の所業


 「来たか。」


 重く低い声が何も無いホールに響き渡る。


 こいつが第二級魔人のグラベルだな。経験の浅い僕でも、左右の2人よりこの男の方が強い事がわかる。


 男から漂う魔力と威圧感に、肌がビリビリひりつくの感じる。


 「揃っての出迎えとはありがたいね。暇なのか?」


 魔力と威圧感を気合いで耐え、負けじと煽りで答えるナイン。


 「ふっ、暇では無いさ。だが我らの計画に気付き、ここまでやってきたのだ。顔くらい見せてやろうと思ってな。」


 ナインの煽りを受け流し、強者の態度で答えるグラベル。その態度の差に、側から見るとナインが小物に見えた。


 くっそ、なんか戦う前から負けた感じがするぞ。

 

 「せっかくここまで来たのだ、貴様らの名を聞いておこう。答えよ。」


 「むっ!」


 負けた悔しさから、次はどう煽ってやろうかと考えていたナイン。出鼻を挫かれ、変な声が口から漏れる。


 どこまでも上から目線の態度に顔を顰めるが、答えなきゃ答えないで何だか負けた気がする。


 「冒険者パーティー、自由なる庭園(フリーダムガーデン)のナイン・ウォーカーだ。」


 「同じく、自由なる庭園のグレンだ。」


 「お、同じく、ルチルミナ・ファーライドです。」


 3人が順番にパーティー名と名前を口にする。が、ルチル、君はパーティーメンバーじゃないぞ?


 さて、聞かれたからだけどこちらは名乗った。向こうさんにも名乗ってもらおう。


 「リアンヌはさっき聞いたな。他も名乗れよ。」


 グラベルは真ん中の奴だとわかるが、右の男はわからん。


 「構わんよ。ジャグラ。」


 「はい。私はラグナロクが第三級魔人ジャグラです。お見知り置きを。」


 右側の男は一歩前に出ると、いやに丁寧に名乗る。そして綺麗に腰を折ってナイン達にお辞儀までしてきた。


 何だこいつ、サージェスやリアンヌと比べるとかなり知性的だな。皆んなあんな感じなんだと思ってた。


 名乗ったジャグラが下がり、中央のグラベルが前に出る。


 「我はラグナロクが第二級魔人グラベルだ。此度の計画の指揮を担当している。」


 やっぱりこいつがグラベルか。ということは僕以外があんまり近づいたらダメだな。それと・・・。


 「計画か。」


 「うむ。ここまで来たのだ、粗方予想はついてるのだろう?」


 「まあな。」


 答え合わせを兼ねて、グラベル達にこの爆破事件に関しての推測を語る。


 「お前達は、領主や一部の人を洗脳し、豊漁祭に入場券が必要なようにした。そしてその入場券の内部に、遠隔起爆が可能な爆弾を仕込んだ。あとは住民や観光客に安価な値段で出回らせ、この豊漁祭抽選会が開始されるタイミングで一斉起爆。こんな感じか?」


 「ほう、よく調べたな。概ね正解だ。」


 「概ね・・・?」


 「入場券を導入したのは我々では無い。領主が計画していたものだ。我らはそれを利用させてもらっただけさ。」


 「なるほど・・・。」


 どうやら入場券の始まりは領主だったようだ。それを体よく利用され、あまつさえ洗脳までされたと。散々だな領主。


 「1ヶ月前くらいから起こってた爆破事件は、起爆実験か何かか?」


 「そうだ。爆弾は問題無く完成しているがいかんせん数が多いからな。遠隔からの識別や起動が正しく行われるかは不明だったのだよ。故にサージェスに命じ、町中で住民を使った実験を行った。」


 何でもないかのように答えるグラベルに、ナイン達は怒りを覚える。


 こいつ・・・、人を駒かなんかとでも思ってんのか?


 ルチルにいたっては目が鋭くなり、殺気すら漏れている。


 当然だろう。彼女はこいつらによって爆破事件の犯人に仕立てられたのだから。亡くなった方を除けば、この事件に一番巻き込まれた人と言える。


 「・・・目的は何だ?何故この町を壊滅させようとする?」


 怒りを抑え、計画の目的を問いただすナイン。


 何をしようとしているのかはわかった。だが未だ、何故グラベル達がこんな事をするのか、それが不明だ。


 閉じた口の中で歯を食いしばり、グラベルの答えを待つ。


 「・・・何故、か。まあいいだろう。」


 少しだけ考え込んだグラベルはそう呟くと、目的を語り出した。


 「全てはラグナロクによるイース大陸侵攻、その橋頭堡を作るためだ。」

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また明日。

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