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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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144 無音無動


 「・・・見える範囲に怪しい物は無えな。警戒して行くぞ。静かにな。」


 「わかった。」


 「はい。」


 足音を消し、グレンが階段から出ていく。


 続いてナイン、ルチルと順に音を立てぬよう1階へと進む。


 3人が出た場所は、1階の廊下だった。絵画や壺、果てはやたらと豪華な燭台などが暗い廊下を彩っている。


 「どこだここ?」


 1階の廊下だろうというのはなんとなくわかったが、位置が不明だ。


 場所を把握しようとキョロキョロ見回すナイン。その様子を見たグレンが近くにあった窓に近づく。


 「ちょっと待て。・・・この位置で海が見えるっつう事は北側か。」


 「1階北側・・・。じゃあ南に行くか。エントランスまで出ればあの女がどこに行ったかわかるかもしれないし。」


 「そうですね。」


 位置の把握とどこに向かうかを決めたナイン達は、すぐに下り階段の前から移動を開始した。


 移動中も常に気配感知を使用し、警戒をしている。だが相変わらず、感じられる気配が動いている様子は無かった。


 途中途中にある部屋の中から感じられる気配も、同じだ。


 これは、何かの魔法かスキルか?


 凄く気になるが、扉を開けて中を見るのはリスクが大きい。中にいる者に対して何がきっかけになって動き出し、大声を上げないとも限らない。


 確認した方がいいんだろうけど、時間がある訳でも無い。スルーしよう。


 そうして気配がする部屋を何度も無視して通路を南に進んでいく。すると、進行方向から大量の人の気配を感知した。


 「多くない?」


 「多いな。20・・・、いや24か。」


 「今までと同じで全員動いてないですね。」


 ルチルが言うように、動きは無い。あまりの人数の多さに警戒が強まるが、おそらくこの先がエントランスなので、結局は先に進むしかなかった。


 「着いたな。・・・開けるぞ。」


 「うん。」


 エントランスへの扉にグレンが手をかけた。後ろではナインとルチルが武器を構えて待機した。


 キィー・・・という小さな音を立て、扉が開いていく。


 「・・・うわ。」


 エントランス内の様子が見えたのか、ギリギリ聞こえるくらいの音量でグレンが声を上げた。


 その様子が気になり、ナインも後ろから中を覗く。


 「・・・おお。」


 30メートル四方はありそうなエントランスに、沢山の人が倒れているのが見えた。


 気配感知で人数はわかっていたが、実際に見るとより多く感じる。


 ナイン達は静かに扉をくぐり、エントランスに入る。


 「兵士や騎士はいませんね。」


 倒れている人間は、メイドや従僕などの領主館で働く人だけだった。鎧姿どころか武器を持った者は誰一人いない。


 「血も流してねえな。やっぱり気絶か?それとも眠ってんのか?」


 「ちょっと確認しますね。」


 グレンの言葉を聞いたルチルが、1番近くに倒れているメイド服姿の女性に近づいていった。そしてしゃがみ込むと、女性の手首や首筋、顔などに手を触れる


 10秒ほどで確認が終わったのか、女性から手を離す。


 「意識を失ってますね。気絶というより深く眠っている感じでしょうか。」


 眠っている?


 「全員?」


 「おそらく。」


 周囲を見回しながら聞いてみると頷きが返ってきた。


 エントランス1階には16人倒れている。だが事前の気配感知では24人。残り8人はどこかと言うと、階段上と2階だ。


 このエントランスの左右には2階へ上がるための階段がある。この階段上に3人、残りの5人が2階で倒れている。


 「何で全員眠らされてるんだ?」


 「そりゃ俺らが侵入したからだろう。」


 ん?どういうこと?説明が足りないよグレン君。


 意味がよく理解できず、ナインが首を傾げる。


 「ここで働く奴らが俺らの姿を見たら絶対騒がしくなるだろ?魔人達にしてみればそんな状況は避けたいはずだ。」


 「なるほど?」


 何となくはわかった。だがそれなら殺さず、眠らせているのは何でだ?


 「何で殺さなかったんだ?」


 「知らん。何か理由があんじゃねえか?魔人に聞け。」


 それもそうだな。


 答えてくれるかはわからないが、やった本人達に直接聞いた方が早い。となれば・・・。


 「リアンヌはどこ行ったかな?」


 1階に戻ってきたであろう変な喋り方の女魔人がどこに行ったのか、エントランスを見回して行方を探す。


 だがここに来るまで痕跡などは無かったので、どこに向かったのかは全くわからない。


 それでも何か無いかと探していると、ルチルが口を開く。


 「上が怪しいですね。」


 「上?」


 怪しいと言うからには何かあったのか?そう思ったナインが聞き返す。


 「はい。気配に音だけで無く魔力すら、上の階から感知出来ません。ここまで何も感じられないのは逆に不自然です。」


 そりゃ怪しい。隠したいものがありますと言っているようなものだ。


 「確かに怪しいね。じゃあそこの階段から2階に上がってみようか。」

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また明日。

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