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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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142 メイVSレッサーキマイラ2


 「よし!これでいこう!」


 ご機嫌な声を上げたメイは、喜色を込めた瞳でレッサーキマイラを見据える。


 それにしてもいい皮だね。


 レッサーキマイラの身体を覆う闇属性特有の黒い皮。


 「いい防具になりそうだねぇ。」


 艶のある黒い体表を眺め、思わず言葉にしてしまう。


 現在のメイの服や装備は、ダンジョンが近くにあったアルトの町で購入したものだった。


 皮の胸当てや靴、手袋はEランクの安物であり、服にいたっては防御力など皆無のただの服だ。ナインが装備する、水虎のジャケットなんかとは比べ物にならないくらい弱い。


 早めに装備をどうにかしたいと思ってたんだよね。出来ればナインの装備と同じような黒系統で。


 そう思っていたメイの目の前に、良い防具の素材が現れた。


 「ちょうど良かったよ。」


 筋力が無かったからとはいえ、Cランクの風狼の小剣でまともに傷が付けられなかった艶のある黒い皮。


 是非とも、是非とも綺麗な状態で欲しい。


 もはやメイの目には、レッサーキマイラがただの素材にしか見えていなかった。


 「グルアアアッ!!」


 メイの視線を不快に感じたのか、怒ったレッサーキマイラが牙を剥き出して迫ってくる。


 「おおっと。」


 前脚の振り下ろしや噛み付き、闇魔法、炎魔法をメイは軽々と避けていく。そうして回避をしながら、仕掛けるタイミングを見計らう。


 防具の材料にするつもりなので、これ以上余計な傷を付ける訳にはいかない。今できる全力をもって、一撃で決める。


 だが全力の一撃を選んだ理由はそれだけでは無かった。


 そもそもの話で、今のメイの状態では、レッサーキマイラを倒せるだけの威力を持った魔法をそう何度も使えない。


 現在のメイの魔力量は約34000。そして通常のマジックソードの消費魔力は、1本でだいたい1000前後だ。


 30本以上撃てるなら、倒せるんじゃない?と思うかもしれないが、たぶん無理だ。剣よりは傷を付けられるだろうけど、そのかわり素材がボロボロになる。


 だから数を撃つのではなくて、殺し切れる1発で確実に決める。そうすれば魔力が足りる上に素材が綺麗に残る。文句無しの方法と言えるだろう。


 「えーと、狙いは・・・あ、あそこだね。よし、じゃあ終わらせようか。」


 レッサーキマイラから一気に距離をとったメイは剣を左手に持ち帰ると、右手を前にかざして集中する。するとレッサーキマイラの頭上に、マジックソードが5本出現した。


 「落ちろ。」


 命令に答えるように、5本中4本の魔力剣が凄まじい速度で真下へと動き出す。


 ズガッ!!


 「グギァッ!?」


 真下へと落ちた魔力剣はレッサーキマイラの手足の甲へと突き刺さり、そのまま地面まで貫通した。


 最初の4本は拘束用だ。そのために魔力剣の形も変えている。地面から簡単に抜かれないよう刃に返しを付け、上からも抜かれないよう鍔も広くしている。


 メイは最後の1本に、込められるだけの魔力を込める。宙に浮かぶ魔力剣が彼女の魔力とイメージに応え、その形を少しだけ変えていく。


 長剣より少しだけ長く、刃をより鋭利に。そして、より強靭に。

 

 「魔刃剣(まじんけん)磔罰(たくばつ)


 出来上がった魔力剣を確認したメイは、かざした右手を無造作に振り下ろした。


 魔力剣が視認すら困難な速度で真下のレッサーキマイラへと落ちる。


 ギュンッ!!ドスッ!


 始動音と衝突音が聞こえたのは、ほとんど同時だった。


 「グギュアァァ・・・。」


 小さな断末魔を上げるレッサーキマイラ。その背には、撃ち下ろした魔力剣の柄が見えた。そして体内に深々と突き刺さった刀身は、レッサーキマイラの心臓を断ち切っていた。


 次第に獅子の目から光が無くなっていき、数秒後、力尽きたレッサーキマイラは崩れ落ちるように地面へと倒れた。


 「終わり!・・・うん!ばっちりだね。」


 左手に持っていた剣を腰の鞘に戻し、死亡したレッサーキマイラへと走り寄る。そして絶命を確認すると同時に、綺麗に倒せているかも確認した。


 「よーし、それじゃあバッグに・・・、あ。」


 死骸をマジックバッグにしまおうとしたメイ。だがバッグに手を伸ばしたタイミングで、とある重要な事に気付いた。


 「私のじゃ入らない・・・。」


 Dランクのマジックバッグでは、6メートルもあるサイズのものはしまえなかった。


 「・・・全部終わったらルチルかグレンにしまってもらおう。」


 後でみんなを連れて必ず戻ってこようと決めたメイは、名残惜しそうにレッサーキマイラを眺める。


 だが何とか気持ちを切り替え、先に行くナイン達を追うため急いで地下独房を後にした。

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また明日。

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