表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
142/251

141 メイVSレッサーキマイラ1

祝!!10000PV!!

見に来てくださっている方々、本当にありがとうございます!


これからもよろしくお願いします!!


 「・・・行ったね。」


 ナイン達が出て行った出口を見つめながら、少しだけ寂しげな色を含ませた声で呟く。


 だがすぐににへらとした表情に崩れた。


 まさかナインから抱きしめてくれるなんて。緊張感のある状況なのに危うく感情が爆発するところだったよ。


 先ほどの別れの場面を思い出し、にやにやが止まらないメイ。すぐ近くにレッサーキマイラがいるのだが、そんなのはお構いなしだった。


 メイ・ウォーカーという人物は、そもそもが普通のヒト種とはかけ離れた存在だ。


 ヒト種ような生まれ方ではないという事。この世で最初に生まれた魔人であるという事。圧倒的な魔力を保有する魔石を持つ事。そして、この世界の観測者であるという事。


 他にも色々と存在するが、そんな彼女がナインに好意を寄せる理由は、人とは違う価値観が故だった。


 彼女が何故ナインを好きになったのか、それは一目惚れだった。


 だがその一目惚れは、一般的な人間がするような一目惚れとは違う。


 彼女は、直視したナインの心に、その意思の輝きに心を奪われたのだ。


 一般人には意味のわからぬ理由だが、これが全てだった。


 まぁ、今はそれだけじゃないんだけどね。


 「うへへ・・・、今日は一緒に寝てもらおうかなぁ。そうだ!新しいパジャマを「グルゥォォオアアアア!!!」・・・うるさいな。」


 怒り狂うレッサーキマイラの咆哮に、せっかくの幸せ気分を邪魔されたメイ。瞳に剣呑な色が浮かべ、ジロリと睨み付ける。


 「はぁ・・・、先にどうにかしよ。」


 というか、何であんなのが地下にいるのさ。


 そもそもレッサーキマイラを含むキマイラ種は、魔界を生息地とする魔物だ。五大陸に存在する魔物ではない。いない事もないのだが、それはダンジョンの中だ。


 洗脳で連れてきたのかな?でもどうやって魔界から・・・。地獄門はそう簡単に開けられないのに。


 「・・・まぁその辺は後でいいか。それはそれとして、レッサーでよかった。」


 構えをとりながら、メイがホッとしたように呟く。


 キマイラ種というのは、進化することで強さと見た目が大きく変化する魔物だ。


 進化し、Bランクのキマイラになると、獅子の頭の横に山羊の頭が増え、風属性が追加される。


 Aランクのハイキマイラになると、さらにコウモリのような羽が生え、空を飛ぶようになる。


 そしてSランクのキングキマイラまで進化すると、ハイキマイラとは比較にならないほどステータスが上昇し、体表に銀色の模様が増える。


 流石に今の自分1人でBランク以上を倒すのは無理だ。だがCランクならばなんとかなる。・・・たぶん。


 「ナインに補充してもらったから魔力はあるけど・・・、最初は剣でいってみよう。」


 でも、剣通るかな・・・?


 筋力が見た目相応な上にSTRが半分な今のメイは、ちょっと力の強い10歳児レベルだ。いくら剣の技術があると言っても、限度がある。


 まぁ試してみればわかるか。


 ダンジョンで手に入れた風狼の小剣を握り直したメイは、決めたら直ぐにとばかりに走り出す。


 「うーん、ここまでかぁ。」


 レッサーキマイラに向かって全力で走っているのだが、足が短くて歩幅が狭いせいか全くと言っていいほどスピードが出ない。ぶっちゃけ遅い。


 元の体くらいとは言わないが、早く大きな体が欲しいところだ。


 考え事をしながら走っていると、レッサーキマイラの前脚が上から迫ってきた。


 「よっ、と。お返し!」


 前脚の振り下ろしを横に跳んで回避し、同時に全力で斬りつける。が


 ゴスッ。


 「むっ!?」


 斬りつけた前脚からは、ズバッ!という斬撃音とは違い、何とも言えないような鈍い音が鳴った。そして同時に、硬いものを殴った時のような衝撃が剣を握る手にやってくる。


 「あちゃぁ〜。ダメだね。」


 剣を持ち替え、衝撃でビリビリする手を振りながら残念そうに溢す。


 刃はしっかりと立てた。立てたのだが、メイの筋力があまりにも低すぎた上に、レッサーキマイラの防御力が思った以上に高かった。結果、前脚には薄っすらとした傷しか付けられなかった。


 「・・・もう何度か試してみよう。」


 レッサーキマイラの傷痕を確認したメイはそう呟くと、剣での近接戦闘を続行した。


 ダメだったのは確認したが、一応だ。それに、全部が全部ダメでは無いはずだ。どこかに攻撃が通る部位があるかもしれない。


 たぶん、無いだろうなぁ・・・。


 それから数分、本心では無理だろうなと思いつつ剣での攻撃を繰り返すメイ。レッサーキマイラを斬りつける度、地下独房にゴスッ、ゴスッという鈍い音が鳴り続ける。


 10数回ほど剣での攻撃を試したメイは、レッサーキマイラから距離を取ると剣と肩を下げ、がっくりと落ち込みだした。


 「やっぱり剣じゃ無理か。はぁ・・・、それにしても、ここまで弱くなってるのかぁ・・・。」


 泣きたくなるほどの力の無さに、溜息と悲しみが口から漏れ出す。


 まさか全く剣が通らないとは・・・。


 剣だけで倒すのは無理だろうと思いつつも、同時にもう少しどうにかなると思っていた。それだけに、メイにとってこの結果はかなりの衝撃だった。

 

 「グオオォォオオ!!」


 「うるさい!今落ち込んでるの!!」


 咆哮に対して文句を叫ぶ。だがそんなメイの気持ちをレッサーキマイラ理解する訳が無く、殺意増し増しの噛み付きをお見舞いしてくる。


 迫り来る噛み付きを後ろに跳んで回避し、気持ちを切り替えて倒す方法を考え始めた。


 剣が通らないから近接は不可。であれば魔法しかないね。


 前脚の振り下ろし、噛み付き、闇魔法、蛇の尾が使う炎魔法、それら全てを回避しながら、思考を続ける。


 魔力はマックスだけど、中途半端な魔法じゃ殺しきれないね。数撃ってもダメそうかな。


 回避と思考を同時にこなすメイの視線が、レッサーキマイラの体に向く。


 「・・・いい色してるね。」


 舐め回すように全身を眺めたメイは、ニヤリと笑いながら嬉しそうに呟いた。


 ふむふむ、綺麗に倒したいね。となれば今できる全力で・・・。


 何かを見つけたメイは、ニヤニヤしながら一気に作戦を練り始める。そしてたった数秒で決定した。


 「よし!これでいこう!」

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


また明日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ