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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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140 彼女を残して


 「それじゃあまずは、アレを移動させないとね。」


 そう言うとメイはマジックソードを2本出現させた。


 「撃ち続けてあいつ退かすから、私を抱えて出口まで走ってね。出口に着いたら降ろしてね。追えないように足止めしなきゃいけないから。」


 「わかった。」


 ナインの返事を聞くや否や、メイはすぐさまマジックソードを撃ち出した。


 ビュンッ!という音ともに放たれた魔力剣を、レッサーキマイラは軽々と横に跳んで回避する。


 陣取っていたレッサーキマイラが避けた事で出口前が空いた。


 「今!」


 「行くぞ!!」


 急いでメイを抱っこし、全員で出口に向かって走り出す。


 レッサーキマイラを近づかせないよう連続でマジックソードを撃っていたメイが、走るナインの腕の中で不満そうな顔をしていた。


 「こういう時はお姫様抱っこじゃない?」


 「成長したらやってあげるから我慢しろ。」


 「・・・約束だよ。あ、魔力供給してもらっていい?このままじゃ魔力切れちゃう。」


 「おい!そういうのは先に言え!」


 文句を垂れるついでのようにさらっと大事な事を言ってきたメイに、ナインは少しだけイラッとした。


 抱えて走りながら、メイへと魔力を供給する。残り3割ぐらいになっていた彼女の魔力が一気に全快する。

 

 ナインとメイは当たり前のようにやっているが、普通は出来ない。


 魔力には質というものが存在する。これは、それぞれ個人個人によって微妙に違っており、別の質に変化する事がない。そして、違う質の魔力と合わさる事は出来ない。AとAならば合体するか、AとBは合体しないのだ。この事から、他者への魔力供給というのは、基本不可能だ。


 一応特殊な魔道具やアクセサリーを使用すれば可能ではあるが、かなりのロスが発生するので効率は良くない。1000の魔力を送っても、相手には100しか届かないくらいなんだとか。


 では、何故この2人は可能なのかと言えば、その存在の在り方が理由だった


 まず、ナインとメイの心は、1つの魔石内に存在し繋がっている。この繋がっているという状態と、ナインの魂がほぼ全損していたという状態により、ナインの魔力が変質し、メイと同質のものに変化していた。


 同質の魔力であれば共有が可能となる。故に、この2人の間では無条件での魔力供給が可能であった。


 「よし!一気に行くよ!」


 魔力切れの心配がなくなったメイが、レッサーキマイラに向けて魔力剣をこれでもかと撃ちまくる。


 おかげで邪魔が入る事なく、ナイン達は出口に到着した。たがメイを下ろそうとした瞬間、覚えのある魔力の高まりを感知した。


 「っ!メイ!」


 振り返るとレッサーキマイラがブレスを吐こうとしていた。


 避ければ出口か遠退いてしまうと考えたナインは、ブレスの発動を阻止するため即座にメイへ呼びかける。


 「同時に行くよ!」


 打てば響くように答えたメイとともに、マジックショットを発動する。1人につき5発。計10発の魔力弾が2人の周囲に出現する。


 「「マジックショット!!」」


 ブレスの発動直前で回避不可能になっているレッサーキマイラの顔面に向けて、魔力弾を叩き込む。


 「グギャァアアア!!!」


 ブレスが不発に終わった上にそこそこのダメージになったのか、レッサーキマイラが悲痛な叫び声を上げる。


 怯むレッサーキマイラの姿を確認したナインは、ここに残るメイを心配してギュッと抱きしめる。


 「・・・頼むな。気をつけて。」


 「そっちもね。」


 ナインの言葉に嬉しそうにしながら、メイも抱きしめ返す。ほんの数秒だけ抱きしめ合うと、名残惜しそうな顔をするメイを地面に下ろす。


 そして彼女を残し、地下独房を後にした。

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


次回は月曜日です。

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