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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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137 地下独房


 「ごめん、すぐ入るよ。」


 扉からするっと中に入り、手に持つ灯りを上に掲げて部屋の中を照らす。警戒のため剣も抜いておく。


 ナインが警戒している間に全員が扉を潜り、最後に入ったグレンが扉が完全に閉まらぬようどこで拾ったのか石を挟んでいた。


 「おし、いいぞって臭えな・・・。中入ると余計強烈だ。」


 「マスク着けるか?タオルでいいかな?」


 「無いよりマシだろうしそうすっか。」


 マジックバッグから洗濯済みのタオルを出し、鼻と口を覆うようにしてから頭の後ろで縛る。ナイン以外の3人はさっさと顔に巻いていたが、彼だけは妙に時間がかかっていた。


 ちゃんとタオルだよな?くそ、暗いからよく見えない。パンツは嫌だぞ。・・・よし、間違い無くタオルだ。


 以前焦って洗濯前の下着を取り出し、サージェスの口に突っ込んでしまった事があったので、変な警戒心が生まれてしまった。


 間違い無くタオルだと確認したナインも、皆に遅れて顔に巻く。目の荒いタオルでも多少は違うようで、感じる臭いが少しだけ薄くなった。


 「鉄格子が開いてる。・・・全部か?」


 「みてえだな。手前から行くか。」


 「そうだな。」


 手前にある右側の独房に近寄り、凄惨な光景を覚悟しながら中を覗く。


 「うわぁ・・・。」


 思わず声が出てしまった。独房の中には、人間らしきものの死体があった。腐敗と損傷が酷い。性別すらわからないレベルだ。


 何があったんだ?何でこんなにグチャグチャに。


 「ねぇ、奥見て。」


 死体の状態から何故と頭を捻っていると、メイが独房の隅を指差した。何かあったのか?と思ったナイン達は、素直に示された先に視線を動かす。


 独房の隅にはもう一つ、腐乱した死体のようなものがあった。


 後ろにいたルチルがずいっと前に出てくると、鉄格子越しに奥の死体を食い入るように凝視する。


 「あれは・・・、オオカミ?いえ、違いますね。オオカミ型の、魔物?」


 「は?魔物?」


 ルチルの言葉に、グレンが驚愕しながら聞き返した。声は出さなかったが僕とメイも驚く。


 なぜ町中の、しかも領主の館に魔物が?しかも、人の死体と一緒に。


 と疑問が浮かぶ。運び込んだのは魔人でほぼ間違い無い。だか理由は何だ?


 「・・・これ、どっちも食い殺された痕だね。それに、かなり腐ってる。死後数日じゃなさそう。」


 両方の死体に近づき、さっと確認したメイが呟く。


 「食い殺された痕って、両方なのか?」


 「両方だね。」


 「そうか・・・。」


 それはちょっと変だ。人間の死体に食われた痕があるのはわかる。だが何故魔物にもある?ここには魔物どころか何の気配がしないのに。他に移動されたのか?


 「とりあえず、手分けして開いている独房も調べてみよう。」

 

 「そうすっか。」


 それぞれ四方に散らばり、独房内を一つ一つ確認していく。大量にあったが4人で手分けしたので、5分もかからず終わる。


 「どうだった?」


 「最初の牢と同じだな。人と魔物の死体だ。」


 「私も。」


 「私の方もでした。」


 部屋の中央に集まり、見てきたものを報告しあう。だが結果は、最初の独房と同じものだった。


 「人間の方は重犯罪者だろう。服装が簡素な囚人服だったのもあるが、なにより手首に重犯罪者を示す刺青があった。」


 「犯罪者か。餌にされたのかな?」


 「たぶんそうじゃねえか?人間の死体の方が腐敗が進んでたからな。」


 やはりそうかとどこか納得する。ナインが見た独房内も、グレンが言うように人の腐敗の方が激しかった。


 おそらく先に人間が魔物に食われ、その後に魔物が別の何かに食われたのだろう。まあ魔物をそのまま食うようなやつは魔物しかいないだろうが。


 「そっか。なあ、運び込んだのは魔人だと思うけど、なんで魔物がいるんだと思う?」


 「・・・爆発で生き残った人間用、じゃないでしょうか?」


 ナインが口にした疑問に、ルチルが眉間に皺を寄せながら答えた。


 「あー、ぽいね。あり得そう。」


 彼女の推測にメイも同意する。確かにあり得そうだ。でも、それならそれで変ではないか?


 「僕もあり得ると思うけど、じゃあ死んでたらダメじゃない?何で全部死んでるんだ?」


 爆発後に必要になるのなら、死んでいてはいけないはずだ。そう思ったナインは、皆の意見を聞こうと疑問を口にする。


 だが疑問の答えは、聞き覚えの無い女性の声でもたらされた。


 「そりゃ必要なくなったからさね。」

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また明日。

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