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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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136 血と腐敗



 「そうだな。えっと、道は・・・。あ、あの階段か。」


 魔道ランタン1つだけが照らす中、先へと進む道を目を凝らして探すと、ナイン達が通ってきた通路の反対側に、上へと向かう階段を見つけた。


 そうして保管庫を通り過ぎ、音を立てぬよう慎重に階段を登る。すると登り始めてものの数秒で二股の分かれ道が現れた。道は左右に分かれている。


 「ん?気配は左だけだな。」


 気配を探ると左の道の先、上方辺りから人の気配が多数確認された。


 「ああ、だがこりゃ・・・。」


 「この感じは・・・。」


 「そうですね・・・。」

 

 人の気配があるなぁ。という程度だったが、3人は違うようだった。

 

 みんなの反応の意味がわからず、ナインは首を傾げながら振り返った。


 「何?どういう事?」


 「たぶんだが、左の道の先にいるのは非戦闘員だ。メイドとか小間使いとか従僕とか、そういう奴らだな。」


 グレンが答えてくれたが、聞きたい事の半分しかわからなかった。


 「誰がいるのかはわかったよ。何でわかったんだ?」


 「気配から感じられる雰囲気とか、あとは強さとか大きさとかだな。」


 「・・・全然わからない。」


 言われてすぐ、感じる気配から何か察せるかと試したが、何もわからなかった。


 ナインはがっくりと肩を落とし、わかりやすいほどに落ち込む。


 「こういった感覚は経験がものを言うからな。今わかんねえのも仕方ねえさ。要は慣れだ。」


 「そっか・・・。」


 経験か・・・。目覚めて2ヶ月にも満たない僕には、圧倒的に足りない部分だな。いつになることやら。


 仕方ないと割り切り、落とした肩を元に戻すナイン。


 「下手に見つかって騒がれたら面倒だから、右に行こっか。」

 

 「そうですね。一般人だと、尚更加減が難しいですし・・・。」


 確かにルチルの言う通りだ。非戦闘員というくらいなのだからレベルも低いだろう。防具だって着けていないはずだ。そんな相手を気絶させようとして、誤って殺してしまいました。はどう考えてもマズイ。メイならばその辺の加減は出来るだろうが、僕は無理だ。自分で言うからに、ルチルも難しいのだろう。グレンは・・・、どうだろう。出来そうな気がする。


 まあ今回は道が分かれてるし、あえてわかりきっているリスクを取る必要は無い。メイの提案通り、右の道を行くとしよう。右は右で何があるのかわかんないけどな。


 右を選んだナイン達は、相変わらず真っ暗な道をそろりそろりと進んでいく。そうして時間をかけ慎重に歩を進めて行くと、道の先で頑丈そうな扉に突き当たった。


 「ずいぶんしっかりとした造りだな。総金属製かな?重そう。」


 この先は何か重要な場所なのだろうか?


 扉をぺたぺたと触りながら、ナインが呟く。


 「とりあえず中の確認すんぞ。無理そうならさっきの分かれ道の左に行かなきゃなんねぇからな。」


 「そうだな。・・・僕開けられるかな?」


 「俺が開ける。ナインは中を見ろ。行くぞ。」


 「了解。」


 グレンが扉を顔一個分開けると同時に、ナインが気配感知を使用しながら中の様子を確認する。が、反射的に顔を戻してしまった。


 「うっ!?」


 扉を開けた瞬間、血と腐ったような臭いが一気に漂ってきた。予想していなかったが故にモロに嗅いでしまったナインは、咄嗟に鼻と口を押さえる。


 「うわ・・・、中どうなってた?」


 後ろにいたメイの方まで臭いが来たのか嫌そうな声を出すと、中の様子を聞いてきた。


 「ごめん、びっくりして見てない・・・。ちょっと待って。」


 臭いの衝撃が凄すぎて中を見ていなかった。今度はちゃんと確認しようと隙間から中の様子を伺う。臭いは一度嗅いだ事で耐えられる。さっきはいきなりだったからな。


 扉の先からは何の気配も感じない。目を凝らすと、仄かな灯りと大量の鉄格子が左右に並んでいるのが見えた。どうやらここは独房のようだ。え?誰か死んでるの?


 「・・・独房だった。一応気配はしない。」


 「酷いことになってそうだね。」


 「この臭いですからね・・・。」


 女性人がわかりやすくゲンナリする。気持ちはわかる。が、この臭いのせいで行かないという理由は無くなった。


 人の気配が無い道であるという事。そして、急いではいるが異常な状況である理由を確認しないわけにはいかないからだ。


 独房なので多少臭いがしたとしてもおかしくはない。だがこの部屋から漂ってくる臭いはどう考えても強すぎる。


 たぶん、死体があるな。それも大量に。


 「・・・とりあえず、入るなら早く入ってくれ。重てえ・・・。」


 扉を開けたままずっと抑えていてくれたグレンが、疲れた声で催促してきた。


 「ごめん、すぐ入るよ。」

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また明日。

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