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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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135 上陸と無人


 「ん・・・?あれ?誰もいないぞ?」


 領主専用港から、人の気配が一切しなかった。


 「やっぱりか。」


 舟の最後部に乗るグレンが1人納得していた。


 「やっぱり?」


 「ああ、最初は領主専用なんだから絶対警備する奴がいるだろうって思ってたんだが、よく考えたらいない可能性もあったからな。」


 いない可能性?あったか?


 「理由は?


 「そりゃ町の警備にまわせば爆発に巻き込まれて消せるからさ。奴らが根城にしている領主館、そこが爆発することは間違いなく無え。そんなことすりゃ自分達まで巻き込まれるからな。てことは領主館は安全地帯になる。そんなとこに敵であるこの町の兵を置くか?生き残っちまうだろ?奴らは残り3人しかいねえんだ。自分達の強さ云々はともかく、壊滅後に余計な戦力が残るような真似はしねぇさ。」


 「あー、なるほど。確かにそうか。」


 そう言われればそりゃそうだなと納得した。魔人の強さはともかく、爆破によって町を壊滅させた後に兵が沢山生き残ってましたでは、リスクと面倒が増える。減らせるタイミングがあれば減らすだろう。


 これはもしかして、領主館内の警備もいないのか?あ、いや屋敷で働く非戦闘員はいるか。でも正門と裏門はどうなんだろう?正門は・・・、流石に無くさないか。でも裏門はいない可能性があるな。


 だが理由はどうあれ警備が減ったのはいい事だ。こちらとしてもやりやすくなる。


 「警戒は必要だけど、いないならいないでいいんじゃない?まずは上陸しちゃおうよ。」


 メイの気楽そうな声を受け、ナイン達はより港に近づいていく。そして到着すると全員で気配感知スキルを使用し、港内を入念に調べる。もしかしたら気配を消して隠れている者がいるかもしれないからだ。


 30秒ほど、全員が無言で集中して気配を探り、港内には誰もいない事がわかった。


 「よし、それじゃあ僕から上陸するね。」


 「ああ、確認したばっかだが警戒怠んなよ。」


 「わかってる。」


 そう言ってナインは舟から跳び上がり、港に上陸する。ナインが先に上がる理由は、主に肉壁としてだ。死なない、再生する、というのはこういう時にも凄く便利だ。メイに言うと怒られるから言わないけど。


 改めて目視と気配感知でしっかりと確認し、舟に乗る3人に手で合図を出す。合図を受けると、メイ、ルチル、グレンの順で港に上がってきた。


 「ちょい待てよ。・・・よし、いいぞ。」


 最後に上陸したグレンが杭に舫綱を縛りつけ、小舟を係留する。もし戻らなきゃいけなくなった時に、舟が流されていたりしたら困るからな。僕は泳ぎたくないぞ。というか泳げるのだろうか・・・?


 「では、行きましょうか。」


 思考が脱線しそうになったが、ルチルの声で集中しなおす。泳ぎは全部終わったら確認しよう。

 

 全員が物音を立てないよう、慎重に歩を進める。何度も言うが、気配を消している者がいないとも限らないからだ。


 「お、あれじゃない?。」


 「大きいね。」


 港内を進み、切り立った崖下までやってくると、大きな扉を見つけた。領主館がある丘の地下に入るための扉だろう。サイズが大きいのは、船で運ばれてきたものを通すためだろう。大体が大きめな木箱とかばかりだからな。


 キィ・・・、キキィ・・・。


 ナインが近づき、慎重に、ゆっくりと扉を開けていく。大きいので気を抜くと大きな音が鳴りそうだ。


 「・・・真っ暗だ。それに気配も無いな。」


 扉の先は広い通路になっていた。ただし、明かりが一切無いのでほぼ何も見えない。気配が無いのだけが唯一の救いだ。


 中を確認したナインは、後ろで待機している3人に振り返る。


 「入るのは確定として、灯りはどうする?」


 「使おう。チラッと見えたけど、ここまで暗いと見えないほうが逆に危険だからね。気配はしないんでしょ?」


 「しない。」


 「なら気配感知をしっかりやりながら、いつでも戦闘に入れるようにしておけば大丈夫じゃないかな。」


 「了解。ルチル、灯りの魔道具を頼む。」


 「わかりました。」


 メイの提案を受け、ルチルに灯りの魔道具を用意してもらう。灯りの魔道具は、ランタンの形をした魔道具だ。構造はよくわからないが炎の魔石が使われている。


 ルチルはマジックバッグからランタン型の魔道具を取り出し、下部に付いているつまみをくるっと回した。すると半径2、3メートルほどを照らす光が、魔道具から発せられた。


 「準備出来ました。」


 「ありがとう。中に入るけど、隊列は僕とグレン、メイ、ルチルの順だ。それじゃあ行こう。」


 ナインの宣言に3人それぞれが了承の言葉を返す。そして静かに内部へと侵入を開始した。


 灯りで照らされた通路は、石と木材で補強された通路だった。それと壁には何かを吊るすための金具があった。今は何も吊るされていないが、おそらくランタンか灯りの魔道具のためのものだろう。暗いので、灯されていないだけなら使おうと思っていたが、無いならば仕方ない。少しだけ残念だ。


 そうして隊列を乱さず慎重に歩を進めて行く。すると扉から15メートルほど進んだ先でかなり広い部屋に辿り着いた。


 ぐるっと見回して見ると、部屋には大量の木箱が雑多に置かれていた。それ以外にちらほら武器や防具なんかも見える。


 「これは・・・。」


 「こりゃ搬入物と搬出物だな。たぶんここは一時的な保管庫なんだろう。」


 木箱に近づき、何かを確認したグレンがそう推測する。


 「なるほど。港からすぐの部屋だもんな。」


 「ああ、つっても俺達には関係無えからな。さっさと先に進もうぜ。」


 「そうだな。えっと、道は・・・。あ、あの階段か。」

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明日の更新はお休みとなります。

次回は月曜日です。

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