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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
135/251

134 潜入開始


 「よし、それじゃあ予定通り行こう。」


 「ああ、舟を下ろすぞ。」


 作戦の開始とともに、ナインとグレンは行動を開始する。ここからは出来る限り迅速に、時間との勝負となる。


 女性2人をその場に残し、ナイン達は近くに置かれている小舟の側に移動する。この小舟はこの場所にずっと置かれていたものだ。誰のものかは不明だが、ちょうどいいので無断で拝借することにした。緊急時という事で許してもらおう。


 「いいか?行くぞ、せーの!」


 「うっ!?重たい・・・。」


 長さ3メートルほどの木製舟の前と後ろに立ち、グレンの抑えた掛け声で持ち上げる。が、かなり重い。


 グレンは力がありそうなのでわかるが、何故相方がナインなのか、その理由は筋力の差によるものだ。


 STRの数値で言えば、グレンの次にメイ、その次にルチルとなる。だが、メイは肉体年齢による制限で実数値の半分しか発揮出来ない。そしてルチルは純魔法使いのため、数値はナインより上であっても実際の筋力は弱い。2に10を掛けるよりも、5に5を掛けたほうが数字が大きくなるのと同じだ。


 この事により、レベルの1番低いナインが仲間内で2番目に力があるという結果になった。


 まあメイとルチルにやらせるのは絵面的に何かダメだと思うから別にいいんだけど、重いもんは重い。


 ひーひーと押し殺した声を出しながら、小舟を海まで運ぶナイン。対してグレンは余裕があるのか息も乱さず、表情すら変えていない。


 「こっちこっち。ゆっくり降りて。」


 真っ暗の中、メイの案内する声を頼りに階段を降り、小型の舟を下ろせるスロープがある場所へと向かう。


 「いいよ。はい、そこで下ろして。あ、音が出ないようにね。」


 メイの指示で、舟をスロープの上にゆっくりと下ろす。下ろし終わると、メイはすぐに船の後部に結ばれている舫綱を手に取る。そして舟が流されないよう、近くの出っ張りに引っ掛けた。


 これで準備が整ったので、舟を海面に向けてぐっ!と押す。すると押された舟は徐々にスロープ上を滑り降りていき、


 ボチャン!


 決して小さくない音を立てて着水した。


 「あ・・・。」


 勢いよく海に滑り落ちた事により、着水音が思った以上に音が出てしまった。やっちまった、と思っていると、グレンがすぐに周囲の様子を確認してくれた。


 「・・・大丈夫だな。」


 グレンの言葉にほっと胸を撫でおろす。


 「よかった・・・。正直、もう終わったって思った。」


 「早えよ。それより予定通り行くぞ。ルチル、頼んだ。」


 「はい、任せてください。」


 頼まれたルチルは杖を取り出すと、ナイン達全員を対象とした魔法を使い始める。


 乗船と移動について、実は事前に予定を立てていた。乗船では、まずルチルが重力魔法を使い、全員の体重を軽くする。そしてグレン、ナイン、ルチル、メイの順番で乗り込む。乗り込む順番は体格差である。理由は、体が大きい人が後に乗ろうとした場合、狭くて乗りにくいからだ。それから体重を軽くする理由だが、これは単純に舟がボロい上に4人は定員オーバーだからだ。流石に沈みかねないからな。


 「グラビティコントロール。」


 ルチルの言葉の後、ほんの一瞬だけ全員の体が黄色に光る。一応陰になっている位置なので大丈夫だとは思うが、それでもドキドキしてしまう。


 「おし、軽くなったな。それじゃあ乗るぞ。」


 「了解。」


 その場で軽く跳ねたグレンは、魔法の効果を確認するとすぐさま小舟に乗り込んだ。遅れる事なくナインも乗り込む。それから女性陣も予定通りの順番で乗り込んだ。


 「布は誰が持ってんだった?」


 「僕だよ。出すよ。」


 マジックバッグから3メートル四方の紺色をした布を取り出す。そして全員が入るように広げると、舟ごと上から被せる。


 この布は舟と僕達を隠すためのものだ。月明かりくらいしか光源が無い海面で紺色の布を被れば、かなり視認しづらくなる。


 「よし、準備完了だね。それじゃあルチル、移動開始だ。」


 「はい、行きます!ウインド。」


 ルチルが風魔法を発動し、風に押された小舟がゆっくりと港に沿って移動を始める。舟を動かすためのオールや魔道具を使用していないので、バシャバシャとした音が出ず、ほぼ無音での移動だ。


 予定では、このまま舟を陸地に沿って動かし、領主専用の港に近づく。港に到着後は船上で隠れつつ、警備や構造の確認。そして、どう行動するのかを決める。


 ゆっくり、ゆっくりと領主専用港に近づいていく。そうして少しずつ距離が縮まって行くと、港がおかしい事に気付いた。


 「ん・・・?あれ?誰もいないぞ?」

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また明日。

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