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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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129 裏組織


 「・・・領主館への潜入、どうしよう。」


 誰も喋っていなかったお陰か、小さく呟いたナインの声が妙に響いた。頭の中で考えていただけだったのだが、どうやら声に出ていたようだ。何だかちょっとだけ恥ずかしい。


 全員がナインの方を向く中、グレンが口を開く。


 「潜入か・・・。そういったのは裏の組織の十八番なんだがなぁ・・・、協力してもらいてぇが伝手が無いから無理か。」


 「裏の組織?」


 「ああ、規模の小せぇ村とかには無えが、町以上になると大概存在するからな。まず間違いなくこの町にもいるだろうさ。ただ今言ったが、伝手が無いから会う事すら不可能だけどな。」


 裏って事は犯罪組織という事か?うーん、グレンは伝手が無いから無理だと言っていたが、僕はそれ以前に遠慮したいな。犯罪組織というのがちょっと・・・。


 「お前の事だ、いくら今の切羽詰まった状況でも犯罪組織は嫌だ、って思ってんだろ?」


 バレていたようだ。だがその通りなので素直に頷く。


 「まぁ確かに犯罪組織っちゃ犯罪組織なんだがよ、必要悪でもあんのさ。こういう組織が無えと、裏の界隈がもっと無法地帯になりかねねぇし、外から余計な組織がやってくる可能性もある。だからほとんどの町や都市には存在してるし、国や王、領主は黙認してる。」


 「・・・なるほど。本当は無い方がいいけど、無きゃ無いで荒れるからって事か。もしかして、必要悪ってことで王や領主も組織を使う場合があるのか?」


 「あるな、つか普通に使う。ある種の協力関係みてぇなもんだ。ただ力関係で言ったら、もちろん王や領主の方が強い。だからこそ、裏組織はやり過ぎねぇようにしてる。やり過ぎれば討伐対象とかにされっからな。」


 「顔色を伺いながらって事か。まぁ必要悪だって事は何となくわかったよ。それで?さっき言ってたけど、その裏組織は伝手が無いと絶対無理なのか?」

 

 組織の人間を探して、お願いするじゃだめなのか?組織の人間がわからないからって事か?


 裏の組織についてざっくりとした説明を聞いたナインは、協力を取り付けれない理由が何なのかグレンに質問した。


 「無理だ。裏の組織ってのは盗みや誘拐、場合によっちゃ殺しも行う。だからこそ、よくわかんねぇ奴の依頼は受けねえ。何らかの伝手があるか、組織にある程度信頼されねえと協力どころか、会う事すら出来ねえんだよ。」


 どうやら裏組織というのは、僕が思った以上に厳しい組織のようだ。騎士団なんかよりある意味では厳格と言えるかもしれない。だが同時に納得もした。犯罪行為を行なっているからこそ、伝手や信用というものがかなり重視される。


 よく知りもしない奴の依頼を受けた結果、組織の情報が漏れて壊滅。何てのは、彼らにとってみれば普通にあり得る事なのだろう。


 「そうか・・・。でもさ、その裏組織だって町が無くなったらマズいわけじゃん?なら阻止するために協力してくれるんじゃない?」


 「それは無理だよナイン。魔人が暗躍してるのは事実だけど、私達はその証明が出来ない。何せ証拠が出せないからね。」


 ナインの提案は、グレンではなくメイによってばっさりと否定された。証明と証拠が無い。いや、証拠ならあるじゃん。


 「入場券は?あれじゃダメなのか?」


 中身が無茶苦茶な魔道爆弾。あれならば証拠になるだろ。


 「なるにはなるけど、多分無理だね。証明するにはこれだけじゃ足りない。裏組織っていうのはそれだけ疑り深いって事なんだよ。」


 「そういう事だ。せめてサージェスっつう魔人を捕まえられていればまだ違ったんだがな。」


 「「うっ・・・。」」


 グレンの言葉に、ナインとメイは変な呻き声のようなものが漏れる。まんまと自爆を許してしまったのは、どう足掻いても2人の失態だった。爆弾と起爆装置を持つような奴は、自爆も手段として持っていると気付かなかったのだから。


 「ん?ああ悪い。責めるつもりで言ったんじゃねえよ。」


 ショボンとするナインとメイの姿を見たグレンが、申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。


 「わかってる。けどサージェスに関しては完全に油断してたからさ。反省はするさ。」


 「そうだね。特に私なんか、みんなよりかなり年上で色々経験してるのに自爆の可能性を見落としたからね・・・。自分でもガックリきたよ・・・。」


 僕以上にメイが落ち込む。まあ確かに、僕がメイの立場だったらかなり落ち込むだろう。彼女としても、出来るお姉さんでいたかったはずだ。少女姿のせいで背伸びしてるようにしか見えないけどな。


 「メイさん、大丈夫です。何とかなりますよ。グレンさん!メイさんを落ち込ませないで下さい!」


 落ち込む少女姿に母性でもくすぐられたのか、突然ルチルがキレ出した。もちろん標的は余計な事を口走ったグレンだ。


 「えっ!?いや、すいません・・・。」


 「んぐふぅ!あ、やべ。」


 ルチルのあまりの剣幕に、即座に謝罪するグレンの姿が面白く、ナインが吹き出してしまう。なにせ側からは、妹に悪口を言った男に姉がキレ散らかしてるようにしか見えない。


 笑いを我慢出来なかった声に反応して、グレンが音が聞こえてきそうな勢いで顔をグルンと向けてきた。


 「何笑ってんだよ。」


 「ごめん。さて!話を戻そう。」


 無理矢理話を区切り、潜入についての話し合いに戻す。怒られて謝罪するグレンはちょっと面白かってけど、ふざけてる場合ではなかったな。

 

 「裏の組織が無理なのはわかったけどさ、組織って別に1つでは無いんだろ?ほかの組織じゃダメなのか?」

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


また明日。

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