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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
129/251

128 範囲に比例して


 「ルチルは起爆信号を送る魔道具について、何かわかったりしないか?」


 魔道具に詳しいルチルなら何かわかるかも、とメイに話していたのを思い出し、ナインは聞いてみる事にした。


 「あ、そういえば聞いてみようって話してたね。参考になるかもしれないし、これも出しとくね。」


 着替え時に話していた事を思い出したメイは、参考という言葉と共に分解した入場券を取り出し、無造作にテーブルに置いた。確かに、入場券の回路は参考になるだろう。


 「おいそれ、大丈夫なのか・・・?」


 「魔石全部抜いてあるから大丈夫だよ。」


 「ならいいが、驚かせんな。」


 これにはグレンに同意する。せめて何か言ってから出しなさい。魔石を抜いたとはいえ、爆弾なんだから。


 言葉は発さず、メイにジトっとした目を向けていると、ルチルが魔石抜きの入場券を手にした。


 「見てみますので、ちょっとだけ待っててくださいね。」


 ルチルはそう言うと、穴が空くのではないかと思うほど食い入るように回路を確認しだした。真剣なんだろうが正直、物凄く目が怖い。丁寧な喋り方をするいつものルチルからは、想像もできないほどギラギラとした目をしている。


 ルチル以外の3人は口には出さないが「あんな目できるんだなぁ・・・。」と内心思ってしまった。


 そうして静かに待つ事10分。しっかりと確認を終えたルチルは、入場券をテーブルに置くと、真剣な表情で話し始めた。


 「お待たせしました。入場券の方は、メイさんが確認された通りの構造と効果で間違いありませんでした。」


 「そうでしょ!」


 ルチルの言葉に、メイがドヤ顔をしながら胸を張る。まあそこら辺はサージェスの反応からも間違いは無いと思っていたので、別段驚きは無い。それと、メイのドヤ顔については構ってる暇が無いので無視だ。


 「次に、この入場券を確認した上でにはなりますが、信号を送る起爆装置についてある程度の予想は立てれました。」


 「え、本当に?」


 「はい。おおよそにはなりますが。」


 「おおー!凄いね!」


 ルチルの言葉に、メイが驚きながらも嬉しそうな表情と声で喜びをあらわにする。逆にナインとグレンは、驚きのみで固まってしまった。


 出来たらいいなとは思っていたが、まさかある程度の予想を立てれるほどだとは思わなかった。


 流石、魔道具購入費のためにソロ冒険者になった人だ。知識量が違うな。


 「それでそれで?ルチルの予想ではどんな感じなの?」


 ナインが心の中で感心していると、メイが待てぬとばかりにルチルの推測を聞きたがった。


 「まず、おそらくではありますが、信号を送る魔道具の送信範囲というのはそこまで広くないものだと思います。」


 真剣な表情を崩さぬまま、ルチルが予想した魔道具の性能を語り始めた。


 「広くない?ってことは近くまで行かないと、信号が送れないってこと?」


 「そうです。ただしこの送信可能範囲は、魔道具のサイズに比例して広くなります。」


 なるほど、範囲は本体のサイズに比例するのか。だがサイズに対してどのくらいの範囲になるのか、その基準がわからないので、いまいちピンときていない。


 「人が持てるくらいのサイズだと、どのくらいの範囲に信号が送れるんだ?手足が無い状態のサージェスが使えたって事は、懐とかに隠せるサイズだと思うんだけど。」


 あいつ自爆しちゃったからさ。


 「そのくらいのサイズですと、入場券くらいかちょっと大きいくらいになるので、大体10メートルあるかないかだと思います。」


 「意外と狭い、いや広いのか?うーん、わからん。」


 「狭えんじゃねえか?そのくらいなら使用者も巻き込まれかねねえくらいの範囲だ。まあ起動してすぐ離れりゃ問題無えんだが。」


 グレンの発言に、ナインはサージェスの自爆を思い出す。確かに、あの時は至近距離だったが、かなりの範囲に爆炎がきた。そう考えれば、10メートルは狭いと言える。


 「例外はありますが、何かの信号を送ったりする魔道具の場合、このくらいが普通なんですよ。」


 「なるほど。」


 付け足すようにルチルが教えてくれた。どうやらこの範囲というのは、魔道具では一般的なようだ。


 「今説明した通り、この送信範囲はサイズに比例して広くなります。そしてラグナロクは、このカルヴァースにある全ての入場券を爆破しようとしています。となれば必要な有効範囲は町全体です。」


 ゆっくりと説明と推測を続けるルチル。


 「この事から、ラグナロクが使用する起爆装置は、最低でも人間以上のサイズとなります。そしてそれ程の大きさになると、誰かが一定以上の時間その場で起動し続けなければなりません。」


 推測と予想とは言うが、その内容はかなり詳細だった。そうして説明を続けるルチルは、一呼吸置くと締めに入った。


 「それと今言った通り、一定時間誰かが起動し続ける必要があるため、別の魔道具による遠隔起動や、時限式での起動の可能性はほぼありません。なのでこの起爆装置さえ破壊すれば、爆発は止められると思います。」


 最後まで言い切ったルチルは、ふぅ・・・と一息吐くと喉が乾いたのか、ティーカップを手に取ってお茶飲む。


 説明を聞いたナイン達は、そんなルチルを他所目にひたすら思考を巡らせていた。


 ラグナロクが使用する起爆装置のサイズは最低でも人間以上。かなり大きいし目立つな。となれば設置場所は奴らにとって安全な領主館だろう。なにせ領主を傀儡にしている。そして何より重要なのが、遠隔起動も時限起動もないという事。この事により僕達は、魔人か起爆装置のどちらか一方を潰せば爆破を止められる。どちらも止めなきゃいけない状況じゃなくなったのは、かなり嬉しい。


 ルチルの説明を頭の中で整理したナインは、解決の糸口が見えた状況に思わず口角が上がる。やるべき事がはっきりと決まった。

 

 抽選会開始までに領主館へ潜入し、魔人か起爆装置を叩き潰す。


 ・・・かなり大変だけどな。


 操られてるのが領主だけとは限らない。魔人にプラスして騎士団の団長クラスとか出てきたら普通に負けてしまう。よって絶対に見つかってはいけない。


 「・・・領主館への潜入、どうしよう。」

宜しければ、評価、ブックマーク、いいねをして頂けると嬉しいです。


また明日。

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